124 誘拐事件!(2)
翌日。
アリアナは、アイリの部屋に泊まらせてもらった。
犯人が、またアカデミーに来るかもしれない。
もちろん、守衛はかなり増えていて、あちこちに灯りが見える。
サウスフィールドの騎士団からも派遣された騎士がいるはずだ。
今日、アリアナがここに居る事も伝えてある。
きっと何もない。
けど、もし、またここへ来るのなら、剣を使える私が居た方が安心だ。
……勝手に女子寮に男性を入れるわけにはいかないし。
これが一番いい方法のはずよ。
剣を携え、アイリには扱いやすい短剣を渡した。
窓の外を眺める。
少し離れたところに、見知った顔を見つけた。
あれは……新しく入った先生……。
ジル・ディールといったかしら。
新人の先生でも、見回りに参加しないといけないのね。
ジル・ディール先生は、周りを見渡し、木の影に入って行く。
何事もない。
何事もなく、夜は更けていく。
そう思いかけた、その時だった。
ガシャン!!
ガラスの割れるような音がして、アリアナとアイリが飛び起きる。
「隣の部屋……?」
一部屋ずつ、誘拐できる女生徒を物色しているのかもしれない。
急いで隣の部屋へと向かう。
ベッドの上で小さくなっていた生徒の向こうに、割られた窓と、侵入者の陰が見えた。
「……!」
アリアナが剣を振り上げると、侵入者は割れた窓から飛び出して行く。
「待ちなさい!」
追いかけようとしたその時、アリアナの背後から、扉の陰に隠れていたもう一人の侵入者が飛び出した。
「アリアナ様!!」
ベッドにうずくまっていた女生徒が、それに気がつき悲鳴のような声を上げた。
しまった……!
ガン!
頭を殴られたようで、ぐらつく。
押しのけられ、誰かが窓の方へ行ったのか、窓の辺りでガシャン!と大きな音がした。
それを確認する気力もないまま、床に倒れ込んだ。
気を失いそうになり、目を開けていられなくなった。
バタバタと、廊下を走って来る護衛達の幾人もの足音が聞こえる。
アイリが、護衛を中に招き入れたようだった。
「アリアナ……!」
誰かの声が聞こえる。
目を閉じたままでもわかる、ほっとする声。
「アリアナ……?」
頭を動かさないよう気をつけながら、そっと誰かがアリアナを覗き込んだ。
アリアナの頬が優しい手に包まれる。
「大丈夫?」
来てくれたんだ。
そうでしょう?レイ……。
「だい……じょ……」
大丈夫と言いたかった声は、思ったよりも小さくなった。
「アリアナ……」
心配そうな声。
私なら、大丈夫なのに。
薄く目を開け、顔を見ようとした。
…………!?
ライト……?
レイノルドかと思ったその声の主は、ライトだった。
自室以外で会った事はなかった。
だから、まさかアカデミーでその顔を見るとは思わなかった。
やだ……、どうして私、レイとライトを間違えたのかしら。
ライト……。
どうしてここに……?
けれど、何か話す間もなく、アリアナはそこで、意識を手放した。
黒い方が目立たないのと、身バレ防止の為に、レイノルドくんは変装して仕事をしています。