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120 新学期が始まる

「ごきげんよう」


「ごきげんよう」


 アリアナは、級友に挨拶をする。


 秋。

 長い夏休みが終わって、学校が始まった。


 夏休みは充実していたわね。

 ……旅行にも行ったし、あの画集を見つける事もできたし、変な薬を飲んでしまうような事件もあったし……。


 失敗も多かったけれど。


 教室に入ると、シシリーとアイリがにこやかな笑顔を向けてくれた。


 夏休み前にも、この二人と一緒に居たけれど、夏休み前はこの二人はこれほど仲良くはなかった気がする。

 変わらないものもあるし、変わったものもある……。


「やぁ、アリアナ」


 声をかけてきたのは、アルノーだった。

「こんにちは、アルノー」


「この間のお菓子さ、赤いのはなんだったんだ?レイノルドが結局くれなくて」


 以前よりも気軽に話しかけてくる。


「ラズベリーよ。レイったらラズベリーが気に入ったのかしら。また今度、改めて作るわね」


 チラリと見ると、レイノルドは相変わらず、少し離れたところで、顔の見えない位置に座っていた。


 そう。

 変わったものもあるし、変わらないものもあるのだ。


「ねぇ、アリアナ」

 シシリーが、アリアナにウィンクをしてみせる。

「知ってる?この秋から新しい先生が来るのよ」

「へぇ……」


 アカデミーの先生は、この国の権威ある人が務めている。

 そうそう変わるものではない。


「多分非常勤の先生よね」

「そうね。辞める先生の話なんて聞いてないもの」



 そんな噂の先生とやらは、それからすぐ、高等科1年の教室で会う事になった。


「ジル・ディールと言います。皆さん、よろしく」


 アカデミーの教師になるには、少し若く見える。

 一見、アウトローな感じの、赤毛のお兄さんだ。

 強い赤毛は、どちらかといえばこの国ではなく少し離れた国、ヴァドル王国の特徴で、この人もきっとこのエンファウスト王国出身ではないだろうと見当が付いた。


 秋からの音楽の授業でお世話になるらしい、その男性。

 見た感じ、20代半ばといったところだろうか。


「悪くはないわね」

 というのがシシリーの評価だった。


「自己紹介がてらに、1曲」


 そう言うと、ジルは、腰に差していた横笛を取り出した。


 奏でられる、音。

 歌うような音色。

 教室の中に響くその音楽は、シンプルだけれど深みがあり、聴いていて嫌な感じがしない。


「いいわね」


 アリアナは一人呟く。

 アカデミーの教師を任されるくらいだから、かなり優秀な人材である事の予想はついたけれど、ここまでとは。


 一瞬、将来、ハーレムを作った時、こんな風に笛を吹いてもらえる音楽家がいるのもいいのでは、なんて思ったくらいだ。

 みんなでゆったりお茶でも飲みながら、こんな笛の音を聴くのだ。


 そんなこんなで、新学期が始まった。


 新しい事が起こりそうな新学期。

 けれどもしかしたら、穏やかに過ぎるのかもしれない新学期だ。


 また、ハーレム作りの活動にも力を入れなくちゃ。


 少しワクワクする日常が、笛の音と共にやってきたようだった。

夏休みも終わって、また学校が始まります!

このアカデミーは日本と同じく、春に学年が切り替わります。

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