表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/240

114 劇薬のそれから(3)

「そっか」


 それから、あまり会話はなかったけれど、特別帰れという空気にもならなかった。


 ……いてもいいんだ。


 レイノルドを見る。


 もし。


 もし、この姿で「おいしいね」って言ったら、笑ってくれる?


 この姿で飛び込んでいったら、受け止めてくれる?


「レイ」


「ん?」


「はい、あーん」


 フォークに刺さっているケーキのかけらを、レイノルドの前に差し出した。


「!?」

 レイノルドが驚いた顔をする。

「……アリアナ?」


 ……やっぱりダメね。


 引っ込めようとしたその時、その手を掴まれる。


 アリアナの手を引き寄せると、レイノルドはそのままケーキを口に入れた。


「…………っ!」


 アリアナはその瞬間、目が離せなかった。

 ケーキを口に入れた口元に。

 手を掴んだ、その指先に。


 おおおおおおおおおおおぅ……。


 び、びっくり……するじゃないの……!


 アリアナは、がばっと立ち上がった。


「あ、あの……っ」


 手……が…………。


「ん?」

 レイノルドは、アリアナの方を見もせずに、簡単な返事をする。


「わ、私、そろそろ帰るわね」


「そう」


 レイノルドの返事は、実にあっさりとしていた。


 また、視線合わなくなってるし。

 どういう事なの!?


「……アルノーにも、挨拶して行きたいんだけど」


「アルノーに?」

 レイノルドは、今度はあからさまに眉をひそめた。

「アルノーなら、まだ寝てるかもしれないよ」


 アルノーは、まだ天井からぶら下がっているのだろう。


「顔、見るだけでも見て行くわ」


 ハーレム候補だし、なんであんな状態なのかも気になった。


「じゃあ、僕の部屋に居るから、一緒に行くよ」


 そう言って、二人連れ立って、レイノルドの部屋に行く事になった。


 そばに来たレイノルドと、目が合う。


「あ……」


 …………え?


 レイノルドは、なんだか照れているように見えた。

 ……まだ、起きた時の事を引きずっているんだろうか。

 あんなの気にしなくていいのに。


「そのワンピース」

 レイノルドの声は、どことなく緊張しているようだった。


「……似合ってる」


「え?」


 ワンピースが、似合ってるって……?

 確かに新しい服だけど、どうして突然そんな事……。


 もしか……して……。


「このワンピース……レイが選んだの?」


 レイノルドは、少し言いにくそうにした。

 けど、否定するつもりはないみたいだった。


 心臓が高鳴る。


「ああ」


「…………っ」


 こ、こんな事で、喜ぶなんて、お門違いかもしれない。

 だって、きっと必要だったから選んだだけなんだから。

 だって、大きくなってしまってから着る服がないと困るから。


 あからさまに、喜ぶなんて恥ずかしすぎる。


 けれど、顔が火照るのも、目が潤むのも、もう止める事はできなかった。


「あ……ありがとう」


 こんなに喜んじゃダメなのに。


「うん」


 けど。


 今着ているワンピースと同じ色の瞳が、目の前に見えた。


 こんなの……、うっかり勘違いしちゃってもしょうがないんだから。


 あからさまに照れてしまい、ふいっと目を逸らす。

 レイノルドが、なんだか嬉しそうに笑った。

さて、レイノルドはいつドレスを用意したでしょうか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ