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103 デート日和!(1)

 アリアナは、久しぶりにジェイリーと街に出ていた。

 新学期の準備に、新しいペンを買うためだ。


 貴族街のヴェセルタウンの中でも、文房具店や本屋が集まる西側の通りは、いつでもアカデミーの学生達で賑わっている。


 あと2週間ほどで、新学期も始まるという夏のある日の事だ。


「アリアナ!ジェイリー!」

 声をかけられて振り向くと、そこに居たのはアルノーだった。


「ごきげんよう、アリアナ。ジェイリーも」

「ごきげんよう」

 ご機嫌な挨拶をする。

 アルノーは両手一杯に買ったものらしき紙袋を抱えていたけれど、いつものようにニコニコと愛想がよかった。


「どこに……おおっと」

 アルノーが紙袋を一つ落としそうになる。

 支えようと手を伸ばすと、アルノーは自分で紙袋を抱えあげた。

 それに笑い合いながら、アルノーは雑談を続けた。

「アリアナは何処に行くところ?」

「ペンを買いに」

「ああ、魔術用のペンなら、オススメがあるよ」

「あら、ほんと?」


 アリアナは、明るい顔になった。

 アルノーほどの魔術師が薦めるペンというものは気になる。

 ちょうど、魔術の実技に使うペンはどんなものがいいのか悩んでいたところだ。

 それに、ハーレム候補のアルノーと一緒に歩く機会など、見逃すわけにはいかない。


「荷物は、どこまで?」

「そこの馬車なんだけど」

 見ると、アルノーの家の馬車が停まっているのが見えた。

「ジェイリー、届けてもらっていいかしら」

「俺、お嬢様の護衛なんですが?」

 ジェイリーは少し不満そうな顔をしたけれど、そのお嬢様のキラキラした目と、どさどさと渡される紙袋類、それに相手が、信頼できるアルノーであることで、仕方なく請け負うことにした。


「よろしく、ジェイリー。店は、『ランツラウンド用品店』っていう魔道具屋だ」

 ニコニコと大きく笑顔を見せるアルノーに、ジェイリーはあからさまに不快な顔をしてみせる。

「すぐに追い付くからな」


 そんなわけで、短時間ながらもまるでデートのような時間になった。

「ちょうど魔術の実技のペンに悩んでいたところなの」

「今から行く魔道具屋は魔道具も多いし、普通の文房具も豊富なんだ」

「へー、楽しみね」


 にっこりとアルノーに笑っておく。

 ハーレムの下準備のようなものだ。

 すると、アルノーはアリアナ以上の笑顔を返してきた。


「……?」


 笑顔に笑顔で返してくるなんて、明るくていい人ね!


 店に着くまでの少しの間、二人で歩いた。

 どんな授業が好きかとか、アカデミーは楽しいかとか、そんな雑談。

「オススメはサンドイッチかしら」

 アリアナのオススメのアカデミーの食事だ。

「あー、いいね。今度一緒に食べよう?」

「いいけど、レイに付いていなくていいの?」

「レイノルド?あはは」

 アルノーはカラカラと笑う。

「アイツは一人でいるのも好きだから。勝手に動きたい時は勝手に動くんだ。流石に付き人だから、出来る限り一緒に居ないといけないけど、時たま昼食で抜けるくらいいいだろ」


 そういうものなのか。

 公爵家といえども、色々と違うのね。


 そんな話をした先で、着いたのは1件の小さな魔道具屋だった。

 看板の出ていない蔦の絡んだ家で、中を覗くこともできない。


 こんな店でジェイリーはちゃんとわかるかしら。

 なんて思っていると、後ろからジェイリーが追いついて来た。


 三人で店を見上げる。

 ジェイリーも魔道具屋とは縁が無いようで、少し困った顔で店を見上げる。

 少し困った顔でアルノーの顔を覗くと、アルノーはちょっとお茶目な顔で、ウィンクを寄越した。

さて、新エピソード。ここからしばらくはアリアナと魔術師くんエピソードです。

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