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10 花祭りの日(1)

 春。

 アカデミーの新学期が始まる前に、王都では花祭りが行われる。

 3日かけて行われるその祭りは、春に咲く花をふんだんに使い、貴族も平民も入り混じって楽しむ盛大なお祭りだ。

 アカデミーの新学期前ということもあり、貴族達も集まるのに都合がいいのだ。


 城のそばの貴族街であるヴェセルタウン、南側に広がる平民街であるサークルタウン、その中央を走る中央通り。王都の全ての場所が、人でごった返す日だ。


「ドキドキするわ」

 鏡の前で髪をセットしてもらいながら、アリアナがサナに声をかけた。


 公爵家の娘ともなれば、誘拐などで狙われる事を考慮しなくてはならない。

 1年で一番人が集まるこの日は、今まで外に出してはもらえなかった。

 けれど、高等科に上がる事になった今年、初めて外に出ていい許可が出たのだ。


 ともすれば、お金持ちの娘なら平民でも着ていそうな服に、必ず護衛を二人付ける事が条件だった。


 金色の流れる髪を、キュウキュウの三つ編みに仕上げてもらう。

 心持ち短い動きやすい薄紫のワンピースを着れば、そうそう公爵家の娘だとは思われないだろう。


 ジェイリーを含めた護衛も平民のような格好をしている。

 騎士のみんなは平民から上がってくる人もいるけれど、子供達の護衛をするメンバーは貴族の中から選出される。

 これは、出自が確かな人員を採用することで、護衛が護衛対象を誘拐するなんて事が起こらないようにするためだ。

 侯爵家出身のジェイリーも、なんだかちょっと気軽な服が着られる事を嬉しそうにしていた。


「じゃあ行きますか」

 ジェイリーが手を出したので、その手に掴まった。

「人混みですから、離れないでくださいね」

「ええ!」

 もう一人の護衛騎士オニオン卿は少し離れた所から見守る役だ。大柄でゴリラ味のあるオニオン卿は、なんだかお父さんといった感じ。


 花祭りは、昼間から人でごった返していた。

 夜は夜で騒がしくなるというし、アリアナにとって想像以上のお祭りだ。


 出店が並び、通りでは、ブラスバンドや手品、ジャグリングなど、見た事もないもので溢れている。

 広場のステージでは演劇やダンスなどで湧き上がっていた。


「すごいわ!」

 キラキラとしたアリアナの瞳に、ジェイリーもにっこりだ。


 花祭りらしく、花飾りや花びらが舞い散る中を、あちこち見ながら歩き回った。


「遊びの出店も多いのね」

 左門の記憶を思い出す。

 夏になると、近くの神社で、盛大なお祭りが行われた。

 綿菓子、りんご飴……。ビー玉掬いやピンボールなんかもあったっけ。

 ここの花祭りでも、似たような店がちらほらと目に入った。


「あれ、美味しそうだわ」

「いいですね」

 アリアナは見つけたのは、フルーツの出店だ。

 カップにふんだんにスティックに刺さったフルーツが入っている。

 手に持たされたカップを、またジェイリーの方へ差し出す。

「どうぞ」

「いただきます」

 ジェイリーはにこにこと1本受け取る。

 毒味の意味もあり、遠慮はない。

 オニオン卿にも1本。


「ジェイリーはどこに行きたい?」

 アリアナがジェイリーの顔を見上げる。

 ジェイリーがにっこりと笑った。

「護衛の任務中ですからね。今日はお嬢様の行きたい所に行きましょ」

「それは残念ね」

 アリアナは、ジェイリーに向かって、にっこりと残念そうな笑顔を見せた。

出店が立ち並び、花が舞う。

なかなか大騒ぎのお祭りです。

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