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なんだか気分の良い農作業

「ほら、朝だよ、起きて」


 俺はルーシーの声で目を覚ました。異世界の朝は早い、俺が起きた頃にはみんな起きて朝飯まで済ましていた。

 早く起きて何をするかと言うと、冬場は何もない。もう少し寝かして欲しいところだ。


 俺は朝飯を食べながらふと考えていた。そういえば異世界では朝飯、昼飯、晩飯の区別があまりない。一つ多めの料理を作り、それを朝昼晩、次の日と少しずつ食べて行くんだ。

 異世界でいる間に同じ料理を何度も食べることが多く、味に少し飽きたのはローリーには内緒だ。



 昨日の異世界入りを終えて、今日からのんびりスローライフといきたいところだが、俺は軽はずみに言った言葉を思い出した。

 そう、俺は農業をしなければならない。


「さぁ、畑に行くわよ!」


 ローリーは準備万端のようだ。草を刈るものと草をかき集めるもの、そして水筒を持っていた。

 俺も畑仕事が出来る服装に着替えついて行くことにした。


「この辺の近くに畑はあるのか?」


「この山の上よ」


 荷物を持ったローリーは難なく草木に挟まれた小さな獣道のような場所を登って行く。荷物も持っているのによくやるなと俺は感心した。俺はと言うと、ほぼ手ぶらなのだが日頃の運動不足のためか頂上に行くまでに疲れていた。



 頂上はひらけており、そこに畑があった。どうやら何かの畑だったらしいが、今は冬だ、収穫され枯れた幹だけが残っていた。今回の農作業はこの幹を伐採して燃やすらしい。


「ほら、これ持って」


 ローリーからレーキをもらった。フォークのような草をかき集める道具だ。

 ローリーが刈った幹を俺がかき集め、彼女のお父さんが火をつけて処理をする。


 異世界に機械なんて便利なものはない。全て手作業だ。現代知識やらで無双してみたいものだが、俺は生まれてこの方都会暮らし。そんなこと出来るはずもなく、ただローリーの指示に従うのみだ。


 刈っている途中から腰が痛くなるが、そんなことお構いなしに俺はなんだか良い気分だった。

 農業自体が目新しく楽しいのもあるが、それよりもローリー達の笑顔が何より嬉しかった。作業早いねとローリーはすごい喜んでいてくれた。それに、彼女のお父さんも言葉は通じないものの微笑んでいた。喜んでいてくれているのが分かる。



 ふと一息付いているとローリーのお母さんが伐採した幹を集めているのが目についた。


「何しているんですか?」


「これを蓋にするの」


 こんな直径2センチほどの幹が蓋になるなんてどうするんだろうと思っていたが、これが案外綺麗に蓋になる。麻糸で一つ一つ括り付けて、異世界唯一の調理器具であるフライパンみたいな大きな鍋の蓋にするんだ。

 異世界は異世界なりに知恵があるものだ。こんな簡単なことも思い浮かばない俺はもはや異世界よりも退化しているのかもしれない。俺はそう思った。



「これ見て」


 そう言って嬉しそうに俺の方へ駆け寄ってくるローリー。彼女の手には蛇が掴まれていた。お前は子供かとツッコミそうになる。


「それ持ちながらこっち来るなよ」


 俺と彼女の追いかけっこが始まった。

 嫌がる素振りはするものの、幼い頃に戻ったような感覚がした。少年みたいに追いかけっこする俺達に、微笑む両親、やっぱりなんだか良い気分だった。


【異世界小言】

異世界で現代知識で無双するのは難しい。確かに全部手作業だったり、山の頂上で農業したり、文明的には遅れているが、現代知識なんて入る余地がない。

無駄なことせずに労働力として一生懸命働く方が異世界の現地人には喜ばれると思う。

異世界に行くやつは覚えておいた方がいい。楽しようと考えるな!努力して働け!

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