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報告と新たな王命

 ラウルがアルタジア国王と王妃に錬金の光の魔法の報告のに向かうと、そこには先客としてリコ、カリン、レノワールが来ていた。


「すまないな。この者たちからアイオライトと話を聞いておったところだ。それでな、アイオライトは先日の外での食事の最中寝てしまってな。その寝顔がなんとも可愛いものであった」

「うちは三人とも男の子ですからね。娘がいたらと夢を見てしまったわ」

「アオは可愛いですからね~」


 三人とも王と王妃もアイオライトの話をするのが楽しそうである?混じりたいが、話が終わるのをラウルは待っていた。


「して、ラウル、報告を聞こう」


 リコとカリン、レノワールの三人は退室する事なくこの場に残る様だ。ラウルはこの三人なら聞かれても問題ないだろうと話を進めることにした。


「はい。ついに錬金の光を使う者を見つけることができました。さらに母上は、意図せずエリクサーを二度ほど口にしたと思われます」

「意図せずに? すでに私はエリクサーを飲んでいたというの?」

「はい」


 最近、王妃の体調は良くなったとはいえ、再発してしまうのではないかという不安もあった。

 それが万能薬であるエリクサーをすでに口にしたのなら完治したと言ってもいいだろう。

 何という幸運かと、王と王妃が目に涙を浮かべて微笑み合う。


 話を唖然と聞いているリコとカリン、レノワールだったが、錬金術などこの世界で聞いた事がないと、レノワールがつい口に出てしまった。


「錬金術って、賢者の石とか、ただの石を金に変える……みたいな」

「? ジーランではどういう風に伝わっているかは分からないが、アルタジアでは魔法と同じように栄えた学問であり、それは貴重な薬などの製法であったと伝わっている。そして錬金術と同じ作用を持つ薬を作れる神の御業が錬金の光の魔法と言われている」

「あぁ、そういう感じがこの世界では錬金術と言われているのね」


 カリンが言う、そういう感じ、の意味がラウルにはわからなかったが、アルタジアでは錬金術と錬金の光がどう伝わっているのかは三人には伝わったようだ。


「して、そのものは? すでに城には呼んでいるのか?」

「いえ、その……」

「礼と褒美の準備もせねばならぬからな」

「礼も褒美もいらないと申しておりました」

「すでに本人とは会えたのか。どのような者であった?」


 王も王妃も興味津々である。

 それはそうだ。愛する妻の命を救ったものが、自らの命の恩人がどのような人間か気にならないはずはない。


「アオです」

「あお?」


 ラウルの言葉に反応したのは両親ではなくその横にいる三人組であった。


「アオ、そんなチートスキル持ち!?」

「設定上はさ、なんか凄い力を持ってます~って話してたからあり得ない話じゃないよね」

「髪の色と目の色だけかと思ったけど、これはキタわ!」


 きゃぁきゃぁと声を上げてテンションがあがっているようだが、会話の声は小さくラウルには肝心な会話が聞こえず、何を話しているのかわからない。


「あおとは?」

「失礼いたしました……、アイオライトが錬金の光の魔法を持つ者です」


 さらに王と王妃の表情が、驚きと喜びに溢れる。


「そう、アイオライトが私の命を救ってくれたのですね」

「では、先日外で食事をした際に……健康ドリンクと言っておった物がエリクサーであったのか?」

「そうですね。私の鑑定では健康ドリンクがエリクサーでしたので。ただ、母上はそれよりも前に口にしております。土産で飴が始まりではないかと。現物がありませんので検証が出来ませんが、あの時から快方に向かっておりました。さらに……」


 王妃がなかなか目覚めず、急に病が悪化したのかと思った時にもアイオライトが持たせてくれた健康ドリンクを飲んでいるはずだ。

 ラウルは、王妃が初めに飴を食べ、さらに健康ドリンクと言う名のエリクサーを飲んだことにより、完治したのではないかと説明をした。


「そうであるか。どの時点で口にしていたのであってもアイオライトには感謝の念に堪えんな……」


 王が涙を一筋流し、それを王妃が指で拭う。

 王妃の目にも光るものが見える。


「して、アイオライトは来ておらぬのか?」

「はい、店の仕事がありますので。あとは、褒美などは特にいらないと」

「それはいけないわ。命を救ってくれたのだもの。お礼の一つもできないのは……」

「そのですね、一週間の無料温泉宿泊などがいいかもしれないとは言っておりました」


 そこにいるラウル以外の人間の目が、全員点になったように見える。

 それはそうだろう。

 王妃の命を救った褒美が一週間無料の温泉旅行など、無欲にもほどがあるだろうと。


「他には、何か言っておらぬのか?」


『ラウルとはずっと一緒にいたいです』


 友達としてだが、アイオライトがそう言ってくれたことをラウルは思い出す。


「いえ。特には。しかしこれからはアイオライトへも警護が必要になるかと思いますがいかがいたしましょうか」

「そうであるな。こちらの三人も今後護衛を付けなければならぬし、いっそまとめて四人で暮らせるようにするのがいいか」


 国王がそう提案するや否や、リコとカリンとレノワールは王に走り寄っていく。


「ほんと!? アオと一緒に暮らしていいの?」

「仕事はするから、みんなで一緒にいたい!」

「この国にちゃんと恩返しはするわ!!」


「あらあら、みんなアイオライトが大好きなのね」


「「「はい!」」」


 即答で返事をする三人を微笑ましげに見ながら、王妃が声をかける。


「警備は誰にお願いしようかしらね」

「イシスにはアイオライトが兄と慕う者もおりますし、治安も大変いい街です。ちゃんと警備が行きとどいておりますので、式典後であれば専属はいなくても問題ないかと存じます」

「式典前は必要であろう」

「そうですね……。駐在も私の顔見知りばかりですから安心ですが……」


 リコがなかなか前に進まないラウルに、つい口を出してしまう。


「あのさ、ラウル……さんよぅ、アオの事好きだったら、自分がやるって言えばいいと思うよ?」


 今回もとってつけたようなさん付けでラウルを呼んだが、問題はそこではない。


「な、な、なんで知って……」

「好きですオーラダダ漏れなのに、寧ろなんでばれてないと思ってるのかが私には不思議よ」


 真っ赤になってしどろもどろになるラウルに、ため息交じりのカリンの一撃が突き刺さる。


「そうであるぞ。誰が見てもお前がアイオライトを好いているのは一目瞭然ではないか」


 首まで真っ赤にしながら、はくはくと声が出ずに口だけが動くラウルに、さらに王妃も追い打ちをかける。


「あんなに大事そうに腕に抱いて帰るなんて、とても素敵な王子様になったわね。ラウル。エグバードの若い時を思い出すわ」


 王妃カーネリアは、国王であるエグバードとの若い頃を思い出したのかほんのりと頬を染める。

 王もそっとカーネリアの腰を抱き、幸せな雰囲気全開である。


「……」

「じゃぁ、ラウル……さんは、他の人がアオの護衛についておはようからおやすみまで一緒にいても良いと?」

「それはだめだ」

「誰も男の人だけなんて言ってないじゃん。護衛は女の人かもしれないのに?」

「っ!!」


 イシシと、面白いものを見つけたようにリコに笑わる。


「さて、式典が終わるまでは三人には城にいてもらわねばならぬ。危害が及ぶ可能性は消えないからな。ラウル、お前を式典が終わるまでアイオライトの護衛として任命する。アイオライトにはお前から告げよ。イシスの治安維持に関する騎士団員は別に派遣することとする」

「父上!」

「父ではない、王として命ずる。錬金の光の魔法を使う人物の護衛を命ずる。よいな」

「はっ。謹んで拝命いたします」


 嬉しいのだが、なんだか周りにのせられた気分が拭えない。しかし、アイオライトと共にいる時間が増えることは、理由がどうあれ正直嬉しい。

 金の林檎亭のそばに借りられる家があれば一番いいが、あそこは周りにあまり何もない。小さな小屋ぐらいはあったかもしれないのでイシスに戻ったら探してみよう。とラウルは顔が嬉しさで緩むのを堪えながら考えていた。


「明日から準備に取り掛かり、早いうちにイシスで護衛につくように。あぁ、アイオライトの両親には私から話はしておこう。あの二人は厄介だからな。話を通しておかねば、お前が八つ裂きにされかねん」


 怖い一言を国王がさらりと言い放ち、今回の謁見はお開きとなった。


「三人とも、城でおとなしくしていてくれよ。式典が終われば四人で暮せるんだからな」

「さっきまでアワアワしていた人の台詞かっ!」

「うっさい。なんとでも言え」


 リコにはついつい強い口調で突っ込みを入れたくなってしまう。

 後ろを振り返り、ラウルはレノワールに声を掛けた。


「レノワール嬢、お願いがあるんだけど」

「今? ここで?」

「急ぎっていうわけじゃないけど、そのアオの舞踏会用のドレスの色のこと……」


 レノワールは立ち止まり、何故か勝ち誇ったようにラウルに告げる。


「刺繍はあなたの瞳の瑠璃色を使いますけど、何か?」

「いや、ありがとう」

「どういたしまして」

「宝飾品も瑠璃色のものを選ぶんでしょう?」

「それは勿論」


 カリンにも宝飾品についての確認に答えた後、カツカツと靴の響く音が近づいてきた。


「リチャード氏!」


 リコに呼ばれたリチャードは、素早く眼鏡を外して胸ポケットにしまう。

 少しは慣れてきたとはいえ、鼻血を出さないとは限らない。


「ラウル、報告は終わったのか?」

「あぁ、あとアオの護衛につくことに決まったから、準備ができ次第またイシスに向かう」


 リチャードには王と王妃に報告する前に、錬金の光の魔法をアイオライトが使う事を軽く話はしていた。こんなにも身近にいたとはと国王と王妃同様驚いていた。


「護衛? まぁ希少な魔法を使うのだから仕方ないだろうな」

「式典までは俺が専属でつくよう王命を受けた」

「よかったな。他の奴じゃなくて」

「うん」


 色々な感情が入り混じっているのだろうが、その表情なら上出来だろうか。

 リチャードは、主のその顔からちゃんと気持ちが固まったのだと推測する。


「俺、アオの事めちゃくちゃ好きだって気がついたよ」


「「「知ってたけど、ヒューヒュー!」」」


 先を歩いていたリコとカリン、レノワールはラウルとリチャードとの会話をしっかり聞いていた。

 王城に響かないよう、小さな声で三人がラウルを冷やかす。


「悪いか?」

「悪くないよ~」

「あとは、アオに直接告るだけね!」


 告る、事が何なのかわからないラウルとリチャードをお置き去りにどんどん先を歩きながら、三人はさらに会話を進める。


「ふふふ、楽しくなってきちゃったんじゃない? 異世界ライフ」

「十七年も待たされたんだから、楽しまないともったいないわ」

「前世では色恋沙汰ゼロだったアオの恋を、今世で見られるなんて楽しみしかない」


 会話は聞こえないが、楽しそうにはしゃぐリコとカリン、レノワールを見ながらラウルがつぶやく。


「すごい楽しそうだな……」

「ペンが転がっても楽しくて笑える、そういうお年頃なんだろうか……」


 リチャードは何かを悟ったように呟いた。

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