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リジェネ・スピラー  作者: ジオサイト
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5-03 ノイスの懺悔


 嗚咽を漏らしながら泣きじゃくるノイスの息は荒く、これから犬の吐息を聞くたびにこいつを思い出して不快な思いをするのだろうな、と頭の端にいるどこか冷静な自分が無意識の内に思考している。本物の悪鬼すら視線で射殺せそうな殺気を放っているのだろう。


「はっ、はっ・・・あ・・・ま、待ってくれ。許してくれ。金を。金を出そうっ。お前が雇われた額の三倍っ。いや、言い値でいいっ・・・賠償金でもなんでもっ・・・」


 アレクは嫌悪感の為に目を見開いた。銃口をノイスの首元に突き付け、「ひっ」と声を上げるノイスを焼き尽くすかのような瞳で見つめる。


「認めるんだな?」

「ひぃいっ・・・」


「認めるんだな?お前が連続婦女暴行殺人犯のリーダーだと?お前は今、認めたなっ?どうなんだっ?えっ?」


「ぼ、僕はっ・・・」

「言えっ。神にっ、悪魔に誓って真実を言えっ」


 ノイスは教会での懺悔のポース、拳を作るように組んだ手を、額に当てた。


「わ、わたし、ノイス=シュー、シューゼン、はっ、じょ、女性を誘拐し、拉致して、暴行をし、そのっ・・・その死体を捨て、い、隠蔽をっ・・・し、しまし、た――」 


「そしてお前は、自分の父親をも殺した」


 ノイスは目を見開いた。口を噤もうとしてるのが分かったので、アレクはノイスの耳を撃ち抜いた。もう一発撃とうとして弾切れの音を聞く。


「そして?」


 悶えるように悲鳴を上げたノイスは泣きながら続けた。


「そ、そして――そしてわたしは父をっ・・・父をっ、じゅ、重役会議の場、で、殺害しそ、それをネタに、ス、スキャンダルを恐れた重役達を脅し、し、支社長の座を――し、支社長の座を受け継ぎ、まし、まし、たっ・・・」


「その証拠品はどこだ?」

「か、勘弁してくれっ。もう許してくれっ。僕はただ、そそのかされただけなんだっ」


「そそのかされた?」

「そ、そうだっ――あいつに、」


 パシューと空気が抜ける音がして、アレクは銃をドアの方向へと向けた。


 ドアが左右に開くと赤い燕尾スーツを着た青年が入ってきた。その背後には整列した警備ロボがいるが、大体がどこかを故障していて、人型やケンタウルス型もいる。まともな人型のロボットが何かを抱えているのに気付き、アレクは目を見開く。気を失っているのはラーヴィーで、黒く焦げて悲惨な姿になっているのは、おそらくムイだった。


「は、早くっ。警備っ、こいつを殺せぇっっ」


 ノイスが叫んだ途端、警備ロボが銃を構えた。アレクは義足を思いきり蹴り上げる。その意思に反応し、瞬時に義足のカバーが外れた。ズボンやローブをナイフ部分が引き裂いて、トースターのように銃が空中へと跳ね上がってくる。


 赤い燕尾服は危険を察知し、空中へ高く飛翔した。天井にも届くかという宙返りのジャンプの間に、アレクはラーヴィーとムイだけを避けて警備ロボを撃った。五十発連射可能の最新小型銃だ。黄色い光を放ちながら、マガジンカードの残量表示は減っていく。


 打ち込んでくる銃弾の雨を避けながら、アレクは確実にロボッツの額か瞳を狙って撃ち込んでいく。体をねじり床を跳ね、転がりながら部屋を移動していく。弾切れになるとロボッツと組合い、その足や首をへし折った。


 さらに義足を蹴り上げるとマガジンが飛び出し、空中で振り下ろしたグリップへと収まる。そのまま引き金を引くと、近くにいたロボッツは全て倒れた。今まさに打ち落としたケンタウルスが最期の一発とばかりに銃弾を撃ち込んできた。近隣諸国では輸入が禁止されている、対象物に命中すると銃弾自体が破裂するタイプのものだ。


 アレクは銃弾を避けようとした瞬間、その軌道の向こう側、背中越しにいるラーヴィーとムイに気付き、咄嗟に義足で振り上げ、銃弾を蹴り止めた。脛に命中した弾はオレンジ色の火花を散らしながら義足をひしゃげさせている。神経を繋いでいる為に痛みが走り、アレクは顔を歪めて声を上げた。


「うっっ・・・」


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