表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リジェネ・スピラー  作者: ジオサイト
56/83

4-04 神か悪魔

「いよいよ最終章ねっ」

《ああ・・・》


 ラーヴィーはパネルを操作しながら、支社長室へのハッキングを試みている。ノイスが使っていると思われるコンピューターへの侵入が可能になり、扉を開いていくように次々と情報を開けていく。


 ラーヴィーの数歩うしろで、ムイがふと首を傾げた。


「ソウ言エバ、通信ガトレマセン。ミカナス、ドコデスカ?」

《・・・それは・・・・・・》

「・・・・・・グレイ?」


 ”グレイ”が口を開きかけた時、メイン・コンピューター室のドアが開いた。

 背中越しに四角い光が差したことに気付き、その場にいた全員が振り返る。薄暗い室内に逆光を背負っているのは、赤い燕尾スーツを着ているセージ・サクトだった。


「動くなっ」


 援護団ヘラがセージへと銃口を向けた。セージは虚ろな顔で立っているだけで、反応を示さない。ムイも銃を構え、そして奇妙な感覚に顔を顰めた。


《おい、どうした?奇襲か?》


 アレクの問いに、ムイは答える余裕がなかった。腕には粟が立っている。


「何ダ・・・『アレ』・・・人間、アンドロイド、ドッチモ違ウ・・・」


 セージは目を細め、ムイを見つめた。

「なぜ、一目で・・・?」


 ムイは唾を飲み込んだ。

「機械、人間、アナタ違ウッ・・・」


 セージが苦笑を浮べると、警備ロボッツが到着した。青年の背後から銃を構える。


「貴様、カドケウス社の者だなっ?」


 援護団の一人が引き金を引いた。

 セージは弾丸の軌道を瞬時に読み取り、スローモーションに見える透明な風の道を、ドアの縁にぶらさがる、という行為で避けた。そのまま勢いよく背中を逸らし、その反動で部屋の中へと飛び入る。

 いっきに部屋の真ん中に着地したセージは呆然としているムイ達を無視し、うしろに控えている警備ロボッツに向って、「ロック・オン機能で攻撃しろ」と命令した。


《おい、誰か応答しろっ》


 二列に並んだ警備ロボの前列が膝をおり、プログラムされている筈の【警告】なしで発砲してきた。ムイは咄嗟に、デスク型のコンピューターの裏側へと逃げ込む。


《おいっ》


 援護団の一人は肩と腹を撃たれ、他の二人に支えられて別のデスク・コンピューターの裏側へと飛び込んだ。すぐさま反撃を開始し、一体一体を確実に倒していく。


「メイン・コンピューターは破損させるな・・・」


 その命令のおかげでラーヴィーは狙われずにすんだが、セージは幻想を見ているような顔でコンピューターへと近づいて来る。


 ムイはセージの背中を撃った。バン、という音がして燕尾服に穴が開く。銃弾が金属にのめり込むが、セージは痛みを示さず、振り向きもせずにパネルに向って歩き続けた。ただでさえ白いラーヴィーの顔から、血の気が引いている。


《おいっ、・・・――死んだのか?》


 気合の声と共に、ラーヴィーはセージの首もとに手刀しゅとうを落とした。渾身の力を込めて勢いよくくりだされた右手が、ミシッ、と奇妙な音を出す。


 ラーヴィーは目を見開いた。

 平然と視線を合わせてきたセージの異様さが衝撃的で、痛みは感じなかった。


「ごめん・・・折れたかもしれないな・・・」


 セージは困惑した顔でラーヴィーの胸倉を片手で掴み、軽々と持ち上げた。


「あっっ?」


 ラーヴィーはムイのいるデスクの裏側まで投げ飛ばされた。床を滑るように転がり、ムイに受け止められる。


「なんなのよっ?」


 すぐに起き上り銃を拾って反撃しようとしたが、隊長ムイ副隊長ラーヴィーの腕を掴んだ。


「ダメネッ。彼ハ『生キテ』ナイ・・・ダカラ、殺セナイッ・・・」


「何言ってるのよっ?」


 ムイの純粋な黒い瞳は、畏怖を孕んでオレンジ髪の青年を映している。


「アレハ、神カ・・・悪魔ダ・・・」


 セージは横目でそれを聞いて、苦笑した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ