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リジェネ・スピラー  作者: ジオサイト
54/83

4-02 光線


 ◆*◆*◆*◆*



 セージは赤い燕尾を翻し、廊下の角を曲がった。

 その間にも電子脳内ではメイン・コンピューターへのハッキングが行われているが、情報は混乱していて要領を得ない。

 テロのせいで不具合が出ているというよりは、直接干渉を受けている感じだ。

 おそらくは先客のハッカーがいるのだろう。


 変に情報を操作されて、過去のデーターが露見しては困る。

 博士の研究内容は、本社のマザー・コンピューターに保管されている筈だ。

 いくらセージの脳内がコンピューターでできているからといって、全ての情報をインストールできるわけではない。


 それに自分の体を許容量の大きな機器に繋ぐことによって、より多くの情報を把握できることが数日前に分かっていた。

 本社のマザー・コンピューターに侵入するためには、支社のコンピューターがどうしても必要だった。


 ――博士の遺志いしを達成しなくては。


 こういう形で現世に蘇ってしまったことを、怨んでいないわけではない。

 しかし、今のセージにやれることは、このぐらいしかなかった。

 それを実行することで、この世に再生してきた意味が欲しかった。


 セージは曲がり角で警備ロボとはちあわせになり、【止まって下さい】と警告される。

 電子脳内から【付いて来い】と直接命令を送信すると、警備ロボッツは瞬時に態度を変化させ、セージに向って敬礼した。


了解しました(イエス・サー)


 セージは片方の口角を上げて苦笑した。

《周りにいる警備ロボッツを全て集め、メイン・コンピューター室へと向わせろ》


 

 ◆*◆*◆*◆



「行くわよっ・・・さん、にぃ、いちっ」


 ラーヴィーは実行ボタンを押した。


 部屋が停電になったと同時、赤い光線が全て消える。

 アレクはそれを瞬時に察知し、全速力で走り出す。


 セージはメイン・コンピューターへの侵入が途切れ、目を見開く。

 警備ロボッツが同時に動きを止め、セージは弾かれるように階上へ走り出す。

 テトラは真っ暗になった八階で天井を仰いだ。

 ラーヴィーとムイは、険しい表情でパネルを睨んでいる。

 支社長室にいたノイスは、突然の停電に動揺。

 隣にいた二人の人物は何故か冷静だ。

 五人のボディ・ガードが銃を構えた。


 6・00、6・48、6・51、6・5563――。


 瞬時に総電源が復活した。 

 レーザービームの最後の二本が、アレクの目の前で放射される。


 斜めにかかった赤い線を跨ぎ飛び、その勢いで片足に重心をかけると、垂直に伸びた光線を高飛びの要領で飛び越えようとする。

 ネコのように捻れた上半身のあとに、下半身がついくる。

 回転している一瞬の間、鼻先に赤い色を感じた。ジュと焼けて、クズになったものが床に落ちる・・・。

 ――それは青年の鼻先ではなく、ローブの袖だった。


 風の神の属性名を持つアレク・グレイリアは、膝をついて着地した。


《・・・グレイ・・・グレイッ、無事ッ?》

《大丈夫デスカ~?》


 アレクは一拍の間を置き、深呼吸をした。


「ああ・・・問題ない」

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