3-17 レベル8
地面を一度踏み込むと、アレクは衣服を纏わないロボットの顔面を蹴り上げ、首がおかしな方向に折れるのを確認すると、周りにいたロボッツに銃を乱射した。
ショートしそこねたロボッツが、着地したアレクのみぞおちを狙って攻撃してくる。
《警告です。止まりなさい》
アレクはそれを避け、片足で蹴り上げて一体を倒し、次の二体を相手にしながら、倒れた背中に銃弾を打ち込んだ。そのまま引き金を引きながら、前方にいるロボッツに銃弾をプレゼントとして、近場にいるものから首をへし折る。
アレクも数発、敵の攻撃を受けたが避けて掠った程度である。
人型のロボットの場合、周りに一般人や人質がいると仮定し、弾が跳ね返らないように設計されている。ロボットは消耗品。故障すれば直せばいいし、新商品に買い換えればいい。それが上流階級の考え方だ。
だからアレクはアンドロイドが嫌いなのだ。
『人間らしい』をキャッチ・フレーズにしている新商品は、いずれ旧型になるだろう。そして人間は、人間らしさを捨てていく。
何れ「人形みたいに可愛らしい」という褒め言葉は、嫌味と問題に変ってゆくのだろう。
それでも人間は整った顔を好み、自らの姿を人形へと近づけ、自分と同じような姿の機械を買い換えてゆく・・・。
闇市でサロイディが別人種を買い、飽きると捨てる・・・それを連想した。
人形だったムーロイディ達の立場と、
そしてターシュイドである為にどこにも属せなかった幼少の自分――。
アレクは眉間に深い皺を寄せながら引き金を引き続けた。
金色の弾が敵の体へとのめり込んで行く。傷口から部品が見え、ショートして青い電気が走っているのが見える。電子情報の伝達故障のせいで、死に際の人間のように手足がびくびくと引きつっている。
不快だ。全てにおいて。人型のロボットなど滅びてしまえばいい。
戦闘用も愛玩用も通訳型も介護用も、全て全て、ロボットなど――・・・ロボットを作り出した人間など、滅びてしまえばいい。
アレクは、自分の言葉にならない思いを弾丸に込めた。
――ある瞬間、銃弾の音が止む。
アレクは無言のまま歩き出した。バチン、バチン、と漏電音が周りから響いている。
焦げた匂いが立ち上っていたが、アレクは前しか見えていない。
どこからか電子音声が聞こえてきた。
《あなたはレベル『8』の危険人物だと判断されました》
折り重なったロボットの山を踏みつけながら、アレクは奥へと向った。
六階に仕掛けられた爆弾が、爆発し始めた。
今回の公開3-17について、アレクは通訳用、介護用「人型ロボット」についてひねくれたことを思うシーンがあります。
それはアレクのエゴ?
「人型」であって、本当にいいのか?
もし痴呆になったお金持ちのご老体が、生前の妻を人型ロボット化して介護させたら…私は許せない。
そのご老体の妻が、必ずしも「同じ国のひと」だとは限らないから。




