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リジェネ・スピラー  作者: ジオサイト
15/83

1ー13 銃声


「何で入りたてのそいつがムイよりも上に立つんだよっ?」


「そうだっ。しかも女が参加するって何だよっ?」


 ミカナスは予想していたように目を細めた。


「一つ。ムイは実力を持っているが、言葉が不自由だ。命令する立場に立たせるわけにはいかない。二つ。リカルトはこの作戦に大きく貢献してくれている。奴が作戦に必要だと判断するなら、女でもテストは受けさせる。三つ。グレイはプロの兵士だ。四つ。ノイス=シューゼンに個人的な怨みを抱えている。五つ・・・俺の見立てでは、こいつはムイより三倍強い」


 場内がざわついた。

 しかしアレクは姿勢も表情も変化させることはない。

 一人のムーロイディの青年が、「納得できるかよっ」と叫びながら立ち上がった。彼が折りたたみナイフを広げた瞬間、乾いた音が場内に響く。


 横にいたブライアンは、驚愕の顔をすぐに喜びの笑顔へと変化させていった。


 青年の強張った視線が、左耳にゆっくりと移動していく・・・輪っかが二連になったピアスのうち、二段目のピアスが音を立てて地面に落ちていた。彼の肩をかすめた横うしろの壁に掛かっていたダーツの真ん中が弾け飛んでいる。

 引き金を引いたのはもちろんアレクだ。銃口からうっすらと白い煙があがっている。


 アレクは無言のまま、上着の内側に銃をおさめた。


 数秒の間、時が止まったようにその場は静寂している。

 ムイは無邪気に歓声をあげ、「パレッソ~」と言いながらぱちぱちと拍手をした。彼の故郷あたりの方言だろうか。おそらくは褒め言葉なのだろう。


 ミカナスは口元を歪め、青年を見た。

「分かっただろう・・・?」


 呆然としている青年は、隣に居る仲間達に促され座った。


          



 ピアノのうしろは大きな扉で、本来はそちらが正門らしい。そのドアの外側で物音がすると、ピロティにいる殆どの者が銃を構えた。ギィィとモンスターの鳴き声のような音で扉が開くと、青白い光に紺色の人影が現れる。

 外側には錆びた鎖が何重にも掛かっているようで、それが絡まっているらしい。何とか力ずくで開けようとしているようだが、上手く行かずに苛立っているのが分る。舌打ち。そして蹴りを入れたようだ。不気味な音が室内に響く。面倒くさくなったのか、ドアの隙間から少年が入ってきた。周りからため息が聞こえ、次々に銃がおりる。


「リカルト・・・脅かさないでくれよ」


 続いて細身の女が錆びた鎖の下を潜ってくる。腰の辺りが鎖に触れ、「ああっ~」と声をあげると、「もおっ。汚れちゃったじゃないのおっ」と言いながら服を払った。


「僕のせいじゃないよ」

「ちゃんと開けてくれればいいでしょおっ?」


 リカルトはため息を吐いて、ミカナス達に気付くと片手を上げた。


「早いな」

「だいぶ近道してきたからね」

「自分で『そっちのドアは開けるな』、って言わなかったか?」

「僕の持物、僕がどうしようと勝手でしょ」


 ミカナスは肩を竦めた。扉が閉められる。天井にはいくつかの穴が開いていたので、リカルトは青白い月光に照らされていた。薄らと埃が舞っているのも分かる。女は不機嫌そうな態度で服を払い終えると、ピアノの横まで歩んできた。


「あら?」


 女と視線が合い、アレクは眉間を寄せた。ファルクのラボにいた整形女だ。


 今日は淡いピンクの髪になっている。アーミーのようなズボンに、ハイヒールブーツ、白いレースがたっぷりと使われたべバロのような布を胸に巻いていて、長いリボンが背中のあたりで結ばれていた。


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