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リジェネ・スピラー  作者: ジオサイト
13/83

1ー11 同盟


「随分と曖昧な話だな」


 アレクはブライアンを横目で見た。遠くを見ているブライアンは微笑していたが、さきほどとは違って因縁の含みを内側に隠しているのが分かった。


「それから、俺の下にいるのは素人に毛が生えた程度の民間人だ。俺とムイだけじゃ人数が足りねぇ。付け焼刃でもかまわねぇから指導も頼みたい」


「俺は兵士であって指揮官じゃない。戦闘と戦争は違う」


「てめぇの身を守る最低限の術でいい」


「・・・・・・了解した」


「当日はVIP(ビップ)が訪れる。君達にとっては効果的なんだろう?」


 ブライアンが言うと、ミカナスがグラスを揺らしながら答えた。


「まぁな。世間の目が集まる」


「あんたはカドケウス社の何だ?」


 ブライアンはこげ茶色の目をアレクに向ける。うすい唇が微笑った。


「敵でもあり、味方でもある・・・そんな存在さ」


「そのミッションが成功しなくても、ノイスを殺してもいいと聞いた」


「ああ。それは確実に、だ。何があっても・・・僕の全財産と命をかけてもね・・・」


 アレクはブライアンに同類の〝匂い〟を感じた。

 復讐の匂いだ。


「それはこちらも同じだ。途中で作戦変更の命令が下っても、俺はあいつを生かしておくつもりはない。もし俺が奴らの手に落ちたなら、自害する。そちらに迷惑はかけない。紹介料だけエフの口座に入れておいてくれ」


 三人がアレクを見た。

 楽しげな視線と、意味深な視線と、興味本意な視線だ。

 バーテンは調合した酒をシェイクし終え、グラスに透明な酒を注いだ。無数の金箔砂が対流しているグラスをリカルトは受けとると、ブライアンはアレクに言った。


「なぜこの仕事を受けたのか聞いていい?」

「金のため。そして母の復讐のためだ」

「カドケウス社に恨みが?それともノイス個人に?」

「どちらも嫌いだ」


 ブライアンの瞳が見開かれ、はじめて狂気をはらんだ笑顔を浮べた。


「君ほどの適役は他にいないようだっ」


「おい、おい。あんまりそんな顔すんなよ。いくら同類見つけたからって、依頼主はもっと整然としてるもんだぜ」


 ミカナスが呆れて口を挟む。


「いいじゃないか。もう仲間だろう・・・?」


 ブライアンはご機嫌で酒を飲んだ。



 数秒の沈黙。



 店内の静かなジャズに気が付く。

 先ほどの店とは大違いだ。氷が高い音をたてる。ブライアンは目を細め、グラスのふちを噛みながら言った。


「・・・・・・僕の妹は、ノイスにいいようにされて殺された・・・」


 アレクの眉がひくりと動く。


「その時ノイスは、すでにカドケウスの社員だった。だから社をあげて隠蔽されたんだ。ノイスの父親はカドケウス社の幹部だ。もともと息子のスキャンダルは潰して回っていたらしいからね・・・ノイスはそういうのの一種の病気だ。きっと初犯じゃない」


 だから母とシスター達を殺しても、ノイスは捕まりもせずにひょうひょうとCMに出ることができるのだろう。

 酒が不味い。アレクは低い声で言った。


「俺の母親もだ」

 ブライアンは見開いた瞳でアレクを見つめた。

「俺の母親も、ノイスにいいようにされて殺された・・・」


 アレクは視線を合わせようとはしない。

 しかしそれで真実だと悟ったのだろう。

 二人は沈黙し、ブライアンは破顔してくつくつと笑い出した。


「まったく、今日は神やら運命やらを信じたくなる日だよ」

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