⑥ロシアがウクライナから撤退する条件
8BRICSの連携を断つことが大事
質問者:でも、BRICSの支援があるとはいえ無限に戦えるわけでは無いと思うんです。既に25%以上の兵士が機能不能というニュースもあります。ロシア国民生活がままならなくなる可能性というのは無いんですか?
筆者:それは当然あると思いますね。特に物価指数という意味ではかつてないレベルで上がっています。
4月9日の時事通信より
『ロシア連邦統計局が8日発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、前月から7.6%上昇した。ロイター通信によると、前月からの上昇率は1999年1月以来で最大。一方、ロシア中央銀行は8日、通貨安が一服したことを受け、主要政策金利を20%から17%に引き下げた(侵攻前は7%台の金利)前年同月比では16.7%の上昇(2月は9.2%上昇)』
とあります。
また、国営ロシア鉄道が制裁により4月12日にデフォルトしたという情報があります。ただ、他国籍の企業が撤退してもそのままロシア国営企業として営業を継続しているという話もあるので思ったよりもロシア国民の生活に影響は薄いように思えます。
質問者:なるほど……。
筆者:しかし、この現在のロシアの利率の17%というのも相当なものですからね。貨幣の価値が戻ったとはいえ国際信用力としては大きく低下しているということを示していると言って良いでしょう。
質問者:いわゆる『ハイパーインフレ』という状況にはロシアがなる可能性はあるんですか?
筆者:アメリカの経済学者、フィリップ・D・ケーガンは、ハイパーインフレーションは「インフレーション率が毎月50%を超えること」と定義しています。これは毎月のインフレ率50%が継続すると、一年後には物価が129.75倍に上昇することになる。すなわち、インフレ率12875%のことです。
これほどになるのは相当な状況ですので、国際会計基準の定めでは「3年間で累積100%以上の物価上昇」をハイパーインフレの定義としています。
こちらの国際会計基準の方が現実的ですかね。ちなみに、3月のインフレペースでロシアがいけば1年後には今を100%とすると240%ぐらいになりそうなので“国際会計基準ではハイパーインフレ“になるともいえますね。
質問者:なるほど……やはり最低でも1年ぐらいは耐えなくてはいけ無さそうなんですね……。
筆者:中々ロシア国民が革命を起こすということも難しそうですからね。独裁国家のデータは眉唾物ではありますがロシアの国勢調査で支持率80%前後というデータがありますからね。また、ロシアの食料生産能力が高く最悪は自家消化すれば国民が食べるものに困るということは無さそうですので経済制裁の効果次第と言ったところになりそうです。
質問者:ですがよく考えてみれば私達の方の物価も上昇していますよね?
筆者:日本ではまだ物価目標2%に達していないという話なんですけど、電力だけでなく、食品品目によっては値上がりの傾向はあります。海外では日本以上のインフレが進んいるんですよね。
東京新聞4月13日『燃料や車に食品…身近な物品の価格高騰 アメリカのインフレ、ウクライナ侵攻で長期化必至』より
『米国のインフレが加速している。米労働省が12日に発表した3月の消費者物価指数は前年同月から8.5%も上昇し、1981年12月(8.9%)以来40年3カ月ぶりの大きな伸びとなった。昨年からの供給不足に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で燃料や食品など身近な物品の価格が高騰している。』
ただこれに付け加えて話すことがあるとするならアメリカのインフレが進んでいるのはコロナ対策のための財政出動が日本よりも多額だからというのもあるんです。2021年は日本円に換算して600兆円、2022年は700兆円ものの国民への財政出動を行っているんですね。その影響からFRBは利上げをしてそして利率を上げない日本が円安になっている……という構図になっているわけです。
まぁ、こちらもインフレはピークアウトしたという話も別の記事であったんで不透明ではありますので注視していきたいですね。
質問者:ロシア国民の方々は今回の戦争についてどう思われているんでしょうか?
筆者:まぁ、大統領の言う“正義”を信じている感じはありますね。ただ、ロシア兵の死者数が嵩んでいきますと反戦の動きも出てくるのではないかと思いますね。
そうなるとロシア側としたら東南側の制圧が完了すれば今後は兵力の損失をあまり出さない長期的な戦術に切り替えてくるでしょうね。ミサイルを放ちつつ占領地を維持するための動きに変わってくるのではないでしょうか。
質問者:ロシアが撤退させるためにはどうしたらいいんでしょうか?
筆者:本来であれば物理的な奪還を行うことが望ましいです。ですが、NATOの武器供与だけでは撃退させることは難しいでしょうね。
また、ロシアはあらゆる停戦の働きかけに対して妥協をする姿勢を見せていません。“勝利宣言“をするまでは絶対に譲らないでしょう。
こうなると、やはりロシア国民に対して働きかけるしかないでしょうね。ロシアの攻撃はウクライナだけにとどまらず「発展途上国をも間接的に攻撃している」そう言った事実を広げていくことが大事かなと思いますね。
NATOやウクライナの政治的ミスはあると思うんですけど、間違いなく中国やロシアの今回の行動は倫理的に間違っていることは断言できることだと思います。
質問者:ですが、ロシア国民が自分から気づくということはなかなか難しいように思います。
筆者:そうですね。特に西側諸国の情報を“自分に受け入れられない”として完全に拒否すると思うんです。そこが全体主義国家を相手にする上でとても難しいことですね。政権側が行う情報統制や言論弾圧ということが容易に正当化されてしまいますからね。
やはり長期戦になるのは必至かなと思います。なるべく経済制裁の抜け穴が無いようにBRICSの連携を弱めるように働きかけることが大事なのかなと思いますね。ここが今のロシア経済の最大のアキレス腱だと思います。
質問者:基軸通貨を狙う中国は説得が難しいとして、インドやブラジルの説得をすることが肝になりそうですね。
筆者:そうなりますね。しかし、インドは日本が
『【ニューデリー共同】岸田首相は、今5年間でインドへ5兆円を投資する目標を掲げると表明した。』
このようについ最近(3月19日)5兆円の支援を約束したにもかかわらず、
MSNニュース4月28日『インド閣僚レベルが自衛隊機使用を拒否 貢献アピールが裏目に』によりますと、
『ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援策として、日本政府は28日の閣議で、国連の物資をウクライナ周辺国に輸送するために自衛隊機を使うことを決定した。当初予定していたインド・ムンバイからの輸送は、インド政府から自衛隊機使用を拒否されたため頓挫し、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイからの輸送だけに。日本の貢献を目に見える形でアピールしようとの狙いが裏目に出た格好だ。』
とあるように、インドは日本の自衛隊によるウクライナ支援に対しては妨害する動きを見せています。
想像以上にBRICSの連携を崩すのは難しいのかもしれません。
質問者:なるほど……思った以上に厳しい可能性があるんですね……。
筆者:いずれにせよ、短期的視点だけでなく長期的な視野で腰を据えて物事を見ていく必要がありそうですね。