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④中国のロシア支援の真の狙いは“基軸通貨奪取“

5, この戦争を機に“基軸通貨“を狙う中国


質問者:しかし、そもそも思ったんですけどロシアとしても経済制裁を耐えきれないのではないですか? そうすればウクライナからロシアが撤退して戦争は早く終結すると思うんですけど……。

SWIFT(国際銀行間金融通信協会)から排除されたんですよね? これから排除されることは“経済の核兵器を放たれたのと同義“とまで呼ばれているというのを聞いたことがあります。


筆者:それについては2か月以上経過をしていますが、ロシアは思った以上に耐えられそうみたいなんですよ。

 ニューヨーク共同4月14日『ロシア通貨、侵攻前水準に回復』より『米欧の金融制裁により急落したロシアの通貨ルーブルが、ウクライナ侵攻前の水準まで持ち直した。欧州連合(EU)などはロシア産の原油や天然ガスを制裁対象に含めず、輸出で外貨獲得が続いているためだ。ロシア政府は通貨防衛策を実施。市場の実勢を反映しておらず再び下落するとの見方もある。』

 というようで通貨の価値は回復しています。勿論今後どうなるかは分かりませんけどね。


質問者:この「通貨防衛策」というのは具体的にはどういうことなんですか?


筆者:どうやら、ルーブルの価値を守るために原油の輸出の際にロシアはルーブルで支払うように要求しているみたいなんですね。勿論西側諸国は応じないのですが、制裁に参加していないインドなどの国々、中東のロシア友好国はその要請に応じてルーブルで支払っています。これによりルーブルの価値の低下を最小限度に食い止めていると言ったところです。


質問者:なるほど……それが通貨防衛策という訳ですか。ところで、当初言われていた中国は今のところは表立ったロシア支援をしていないようですね。


筆者:中国はウクライナとも友好条約を結んでいるみたいなんですね。これには『核の傘』を提供することも含まれているほどの軍事協定もあります。ですから、表立ってロシアを支援するとこの協定に違反することになるからだと思います。

 ただ、ロシアに対して制裁をしないことや貿易が継続しているだけで“事実上支援”しているとも言えますからね。また読売新聞4月21日『異例の展開となったG20が閉幕、G7と新興5か国に亀裂』によりますと『今回のG20は、ロシアを強く非難する日米欧などG7(先進7か国)と、G20からのロシア排除に反対する新興5か国「BRICS」の中国やブラジルなどとの亀裂が開幕前から表面化し、異例の展開となった。』

 とありますからBRICSの他の国は貿易を続けて事実上ロシアを支援していくことでしょう。中国は2か月で前年比40%ロシアとの貿易高を増やしたという情報もありますからね。


質問者:ですが、ルーブル支払いでは外貨獲得は出来ないでは無いですか?


筆者:ところがそう言う訳でもないんですよね。

 MSNニュース 2022年4月10日『長引く戦火が世界の人々の生活に与えうる悪影響 食糧、エネルギーだけでなく産業構造転換も』より 

『そこで、注目されてくるのが中国やインドの存在だ。ロシアは格安の原油をちらつかせながら、エネルギー供給の代わりに、インドルピーや中国人民元を使って外貨収入を得ようとする。ロシアへの武器の供与といった部分では中国もインドも手は出せないが、貿易に関していえば、欧州はいまだにロシアから原油や天然ガスを買っているように問題はなさそうだ。

 問題は、ロシアがルーブルを中国人民元やインドルピーと交換することで外貨を取り入れる新しい仕組みを構築しようとしていることだ。実際に、ロシアには金融に関連する“抜け道”が数多くある。たとえば、マスターカードやビザカードは、ロシアから撤退したもののロシア国内の決済機能は単独に構築されていたためにクレジットカードは今もロシア国内で機能している。

 IT技術やフィンテックの定着で、金融システム全体の多様化が進んでおり、SWIFTなどの制裁だけではロシア経済を追い詰めることができそうもない。2014年のクリミア併合に伴う経済制裁が長引いたため、ロシアには西側に頼らずに経済の自律化を推進してきた成果といえるかもしれない。』

 このように2014年のクリミア併合からロシアは外貨獲得のための方法を模索してきました。西側としてもなるべく石油資源に頼らないために原子力発電所を一時的に稼働させるなどの工夫をしておく必要がありますね。

 ちなみにインドは武器や原油の8割以上の割合をロシアに依存しており、容易には切っても切れない関係にあります。


質問者:個人的には中国がインドと足並みを揃えつつあるのが驚きなんですが……。


筆者:中国はロシア・インドと相互に領土争いの問題がありますからね。意外に思われる方も多いと思います。ですが、中国はこれを機に実はあるものを狙っているんです。


質問者:いや、勿体ぶらずに教えて欲しいんですけど……。


筆者:それはズバリ『基軸通貨』です。現在のところドルが世界の基軸通貨になっていますが、その地位を人民元が取って代わろうと狙っているわけですね。「デジタル人民元」というのをお聞きになったことはあるでしょうか?


質問者:あります。日本で言う“PASMO“や”PAYPAY”や“楽天ポイント“のようなものを中央銀行が発行するんですよね?


筆者:そうですね。先ほどのSWIFTの影響力というのは勿論ドルが基軸通貨です。ですが、中国はデジタル人民元を作ることによって新しい国際基軸決済システムを作ることを狙っているわけですね。

 これは僕が勝手に妄想していることではありません時事通信の4月27日『正念場の国際協調体制=「ブロック経済」再来に懸念』によりますと

『中ロとの溝が深まる中、イエレン米財務長官は「信頼できる国との自由で安全な多国間連携が望ましい」と主張。ブレトンウッズ体制を改革する必要性に初めて言及した。エネルギー輸出を政治利用するロシア、医療物資やレアアースを囲い込む中国など、経済安全保障上の脅威とみなす敵対国を締め出す考えだ。


 これに対し、ロシアのシルアノフ財務相は、対ロ経済制裁の手段として使われた基軸通貨ドルは「信頼が損なわれた」と反論。新華社電によると、中国の劉昆財政相は、ドルを武器に使う米国を批判したロシアを擁護した。中国は新興国に人民元の使用を促し、基軸通貨化を狙う。』

 とありますからね。


質問者:なるほど……。


筆者:デジタル人民元へ移行するためには更なる準備金が必要と言った条件がありますが、中国国内では既に中国人民銀行による人民元建国際銀行間決済システム(CIPS)、Alipayアリペイや WeChat Payウィーチャットペイといったスマホ決済が広く利用されています。

もしかすると、既存のスマホ決済の割引などさまざまなキャンペーンで特典方法を使い、デジタル人民元に移行していく可能性があります。具体的には実証実験で行われたような無料配布や、国際送金での優遇などが予想されています。


質問者:現実的にはドルの決算というのは減ってるんですか?


筆者:そうみたいなんですよね。ロシアの友好国はルーブルでの決済をしていますからね。

大和総研ロンドンリサーチセンター・シニアエコノミストの菅野泰夫氏によりますと『世界のエネルギー貿易の構造変化などを理由に、決済通貨のドル離れが加速し、海外投資家(特に中東や東南アジアなどのソブリン・ウエルス・ファンド=政府系ファンド)が、米国債やユーロ圏国債の保有を敬遠するようになれば、基軸通貨としての地位は加速度的に危うくなる』と述べています。

中国からしてみたらロシアがSWIFTから抜けてくれたことは実はチャンスと捉えている可能性が高いです。ドル離れが勝手に進んでいっていますからね。

この状況の上に更にロシアが弱っているところを見たら「ルーブルをも取り込んで一気にデジタル人民元を広めてしまおう」そう言ったことを考えている可能性が高いと僕は思っています。


ですから、各々の国同士の問題はあると思うのです。しかし、人民元がドルから基軸通貨として取って代わるまでは中国は他の国と足並みを揃え、ロシアと貿易を続ける可能性があります。これはあまりニュースでは触れられない視点だと思いますが、かなり重要なポイントだと思っています。


質問者:これはどうなるか中国の動向にかなり注目したいところですね。

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