③円安により日本の食糧危機の可能性は上がっていく
筆者:次に、日本の食糧事情です。本日(2022年4月28日)1ドルが130円になったのは20年ぶりという話でした。今後更に円安が加速するかもしれないと言われていることもあり、食べ物がどんどん価格が上がっていくことが予測されます。
質問者:そもそも思うのですが今の円安ってどうして騒がれているんでしょうか?
2012年から2013年の民主党から自民党への政権交代の時にも凄い勢いで円安になりましたけど今ほど騒がれていなかった印象があります。
筆者:確かにそうですね。当時のデータを見ますと2012年の政権交代時の11月は75円、2013年1月が86円、2月が91円、5月が97円、6月が101円とこの半年では今と同程度のペースかそれ以上ですね。(それより半年先では1円程度の円安に落ち着く)
なぜ騒がれなかったのかと言いますと、当時言われていたこととしましては「当初は貿易赤字が増大するとしても、円安が徐々に輸出価格競争力を高め、輸出数量の増加とともに貿易収支も徐々に改善する」と言われていたんですね。
しかし、日本の国際競争力は思った以上に低下しており輸出高は横ばいぐらいにとどまったんです。そもそも、日本の経済を支える自動車産業などの製造業は現地生産に取り組んでいますから輸出が拡大する要素があまり無かったわけです。
質問者:なるほど、2012年日本経済の回復に繋がると思われていたんですね。ということは円安が日本経済の回復に繋がらないと分かった今となっては……。
筆者:ここで急激に円安になるというのは危険なわけです。円安になるということは国内企業にとってはまさに酷ない? みたいな!
質問者:――はい?
筆者:……失礼。輸入品目に頼っている産業は苦しくなるでしょうね。商品の値上げか、利益を削るか、従業員の給与などをカットするかのどれかになりますからね。いずれにせよ巡り巡ると国民の生活が苦しくなります。
でも僕は思う訳です。“高くても買えるならまだマシ”だと。
質問者:どういうことでしょうか?
筆者:本稿の②でも挙げましたが、危機的状況にある国々に食料を回される可能性があるからです。また、今の状況に加えて“台湾有事“の際には中国から船が攻撃される危険性が上がるので交易ルートが限られていきます。
そうなると本当に日本国内のみの生産能力で日本国民全員を賄っていかなければならなくなります。まぁ、台湾有事は早くて主席の任期が再延長される秋以降とも言われていますけどね。
質問者:そんな中、日本の食料自給率ってどうなっているんですか?
筆者:日本の食料自給率2021年度の食料自給率はカロリーベースだと過去最低レベルの37%。令和12年度までに45%と農林水産省は目標として掲げているんですけど年々低下傾向にある中かなり難しい状況です。
質問者:となると、今後は日本はどうなってしまうのでしょうか?
筆者:食料自給率全体が低い状況の日本では、他の食料を食べればいいではないかという話ではないと思うんです。選択肢はかなり少ない状況になりそうです。
質問者:仮に輸入がほとんどできなくなってしまう場合はどうなるんでしょうか?
筆者:農林水産省が2003年(当時の食料自給率は40%)に「不測時の食料安全保障マニュアル」というのを作成しています。これ以降の資料は見当たりませんでした。よって当時より食料自給率が低下・内容が異なっていることも考慮してお聞きいただければと思います。
質問者:はい。
筆者:3食に分けて考えた場合の配分として示されているのが、
朝食:8枚切食パン1枚、サラダ1皿107グラム、焼き芋2本、リンゴ一切れ(39グラム)。
昼食:焼きいも2本(385グラム)、野菜炒め1皿(107グラム)、粉ふきいも(282グラム)、煮豆(大豆21グラム)。
夕食:ごはん2杯(90グラム)、浅漬け(野菜107グラム)、粉ふきいも、焼き魚ひと切れ。
なお他に挙げられている主要品目としては牛乳は5日に1杯、焼き肉は13日に1皿、卵は36日に1個しか食べられないという状況のようです。
勿論完全に輸入が止まることもないでしょう。ですが、国内生産が異常気象などにより今の国内生産能力とも限りませんので本当に参考程度です。
質問者:なるほど……主にごはんと野菜と芋という感じになってしまうんですね。かなり厳しそうです……
筆者:また肥料などもほとんど輸入に頼っていますからね。これより食べ物が厳しくなってしまうという危険性はあります。勿論堆肥などを使って代替えをすることも可能でしょうけど、今使っている肥料より効率は悪い生産力になってしまう可能性が高いです。
質問者:あと、聞いた話では“日本は水も輸入している“という話もあるんですがどうなんですか?
筆者:そうなんです。上記にありませんでしたが、水もほとんど輸入なんですよね。日本では雨水は大量にありますけど、飲み水に使える水というのも少ないんです。人口比で使える水が世界平均の半分しかないという話もあります。そうなると、川の水をすするとかそういう状況になってしまうかもしれません。
質問者:それは過酷ですね……。ところでこのロシアとウクライナの戦争というのは長引きそうなのですか? 長引かなければこういった問題発生の可能性も低そうですけど。
筆者:4月16日CNN.co.jp『ウクライナの戦闘、年内いっぱいは続行か 米国務長官』よりますと
『欧州の政府当局者2人がCNNに明らかにした。米欧の政府当局者は、ウクライナ戦争は短期的には終結しないとの見方に一層傾斜しているともした。
CNNの取材に応じた政府当局者の多数は、ウクライナでの戦闘がどれほど長くこじれるのかを見極めるのは困難と指摘。ロシアのプーチン大統領が侵攻による最終的な目的を変えた兆候もないとした。
また、プーチン氏が軍事的な敗北を喫しなければ、外交交渉の模索に転じる可能性も少ないとした。』
とあります。この見方が僕の意見と近く最低でも年内いっぱいは戦争が続いてもおかしくは無いです。紛争として断続的な戦闘と考えたらもっと長引く可能性だってあります。
質問者:各国で輸出規制があるかもしれない。食料自給率が低い日本の一番頼みの綱のアメリカは異常気象、戦争は長引きそう……これらを勘案すると確かに厳しい可能性というのはあるかもしれませんね。
筆者:そうなんですよね。更に加速度的に円安が進んでいるにもかかわらず、国債の償還の関係や景気の都合上、利上げをしないと日銀が考えているようなので更に円安は進んでいくでしょう。そうなると食べられる物はあってもかなり高額な値段になってしまうという可能性があります。
質問者:いったいいつぐらいから値段が上がる可能性があるんでしょうか?
筆者:僕は10月ぐらいから大きく値段が上がる可能性があると見ています。
2022年3月10日のNHKサクサク経済Q&Aより
『(小麦の値段はいつ決まるのかという問いに対して)過去6か月に、政府が商社から買い付けた価格を元に計算されているんです。今回発表されたことし4月からの売り渡し価格は、去年9月第2週から3月第1週、3月4日までの週の平均買い付け価格をもとに算出されました。
製粉会社は2~3か月ほどの小麦を備蓄しているため、これまでの例から考えると製粉会社が小麦粉の価格を改定するのは、およそ3か月後。その後パンや麺などさまざまな食品への影響も出てくると考えられます。』
というように3か月に1回大きな価格改定が行われるみたいなんですよね。つまり6月初めの買い付け平均価格が7月に反映されるという訳です。まだ7月は大丈夫だと思うのですが、10月の価格改定になるとどうなるのかは分かりません。もしかすると今まで見たことのないような価格になる可能性だってあるかもしれません。
質問者:なるほど3か月に1回どうなるのか注目したほうが良いんですね
筆者:そうですね。僕は特に半年後にどれぐらいの値段になるかどうか注目したいところです。
この食糧危機が仮に訪れた場合の具体的な対策・対応というのはちょっと最後にしようと思います。次は“ロシアは経済制裁にどれぐらい耐えられそうなのか”ということに注目して見ていこうと思います。