②世界の食糧事情
3世界の食糧危機になりそうな国々
筆者:各国では戦争に伴い輸出規制に踏み切っている国も多いです。自国の生産のみに特化し、確保する段階に入っているようですね。
ブルームバーグ社によると、『ハンガリーは現在、食糧の輸出を禁止している。アルゼンチンとトルコも自国産農産物に対するコントロールを強化する措置を取った。アルゼンチンは世界の主要な穀物輸出国の1つであり、トルコは主要な小麦粉輸出国だ。モルドバも今月から小麦、トウモロコシ、砂糖の輸出を一時的に停止している。』
ロイター通信の報道によると、『ウクライナが「年内は大麦、砂糖、肉類を含む多くの農産物の輸出を禁止する」と発表し、ロシアも「6月30日までは近隣のユーラシア経済連合(EAEU)加盟国への小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシの輸出を禁止する」としている。』
という状況のようです。これは戦争が長引けば長引くほど“食料の自国優先主義”という傾向は強まっていくと思われます。
質問者:ところでロシアから小麦を輸入している(していた)国というのはどうしてるんでしょうか?
筆者: 4月3日の日本経済新聞『【詳しく】なぜ中東で食糧危機?ウクライナ侵攻影響』によりますと、『(中東で)特に心配なのが中東のレバノンです。レバノンの経済・貿易省によりますと、小麦のストックはあと1か月足らずしかないと言われています。
レバノンでは小麦輸入のおよそ70%をウクライナが占めていて、ロシアによる侵攻後、輸入がストップし、深刻な小麦不足に陥っています。さらに、レバノンでは2020年8月には首都ベイルートで大規模な爆発事故が起き、国内最大の穀物貯蔵庫が損壊しました。
このため、小麦を大量に保管する場所もないまま今回の事態を迎え、深刻な事態となっています。
中略
レバノン政府は、ウクライナに代わる小麦の輸入先を探していますが、自国通貨が暴落するなか、輸送コストの問題など課題も多く、同じように小麦の調達を急ぐほかの国との競争に勝てるのか焦りを募らせています。』
中東でロシア:ウクライナに頼る国が多い中、特にレバノンが深刻のようですね。この記事より先のことは分からなかったのですがそろそろ1ヶ月になるので心配です。
質問者:レバノンというと日産の元会長が逃げた先や、サッカーでの対戦チームでしか聞いたことが無かったんですけど、そんな悲惨な状況だったんですね……。
筆者:また、アフリカでも深刻な状況になりそうです。
日本経済新聞4月18日『東アフリカ、食糧難1300万人 ウクライナ危機が拍車』によりますと、
『ソマリアなど東アフリカ各国が干ばつで食糧危機に陥っている。国連は1300万人が深刻な食糧難に直面していると明らかにした。ロシアのウクライナ侵攻による穀物の値上がりのしわ寄せが貧困国に真っ先に及んでおり、異常気象がもたらした苦境に拍車がかかっている。
中略
追い打ちをかけるのが、ロシアのウクライナ侵攻による穀物などの価格上昇だ。国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した3月の世界の食料価格指数(2014~16年=100)は159.3と前月比17.9ポイント上昇した。穀物や植物油が大きく値上がりし、2カ月連続で過去最高を更新した。
ロシアとウクライナの小麦輸出は世界全体の3割を占め、アフリカには両国に依存する国が多い。FAOによるとソマリアは輸入小麦の9割、アフリカ東部のエリトリアは全量をロシアとウクライナに頼っている。
アフリカ開発銀行は3月、域内の小麦などの増産に向け10億ドル(約1260億円)を充てる計画を明らかにした。自給率を高める追い風になるが、目下の危機への対応策にはならない。国際非政府組織(NGO)オックスファムは、ウクライナの戦闘による食糧供給の混乱について「最も貧しく弱い人々が真っ先にひどい打撃を被る」と指摘。「東アフリカに時間の猶予はない」と国際社会の支援を訴えた。』
というように、アフリカでの食糧難も加速しているようです。これらの国々への人道的支援が必要になってくるように思えます。
質問者:日本は恵まれているほうなんですね……。
筆者:そうです。4月14日の毎日新聞の記事の『ウクライナ侵攻は「途上国への攻撃」 国連事務総長が毎日新聞に寄稿』によりますと、
『グテレス氏はウクライナへの侵攻で、世界有数の穀物産出国であるロシアとウクライナで生産や輸出が滞っていると説明。食糧価格は上昇し続け、国連世界食糧計画(WFP)など国連の人道支援活動も苦境に陥っていると指摘した。
ロシアによる侵攻によって、貧困や飢餓に追いやられる可能性がある人は世界で17億人に上る可能性があるという。
グテレス氏は途上国の多くは新型コロナウイルス感染症の感染拡大による打撃やインフレとも闘わなくてはならないとし、侵攻を受けたウクライナとの連帯と同様に、途上国に暮らす潜在的な犠牲者に対しても支援を求めた。』
とあります。今後食料生産国はこれらの国々に対して積極的に支援するでしょうから日本に食料が回ってきにくくなる可能性が高まります。
ですから、「日本は日本で何とかしてね」と言われてしまうのです。
質問者:なるほど、日本には貧困の問題は多少はあるかもしれませんけど、食料に直ちに困っているという感じはありませんからね。後回しにされてしまいそうですよね……。