魔剣鍛治師・マーテル
南の森に隣接する小さな鍛冶場を営む、魔剣鍛治師マーテル・フューエリカ。
俺の彼女の第一印象は一言だけだ。
「ヒゲ女。」
「何言ってんだおめ。あたしゃドワーフなんだから、ヒゲくらい、ったりめぇだろが。」
そっぽを向いて炉から取り出した鋼を金床に乗せ、ハンマーを激しく打ちつけるこのちびっ子ヒゲ娘。
どうやら彼女が俺の師匠か。。。
「これからよろしく、師匠。ルーカスだ。」
「ガンテツとパステルの娘、マーテル。ガンクツは爺だ。話は聞いてら。さっさと道具準備しな。」
ティア、エルメ、ゼラ、風雪の4人はドラゴン・スロートで女子会だそうだ。
たまには女同士色々と話したいことがあるんだろう。
単に鍛治仕事に興味が無いという可能性も高いが。
俺は『錬金術スキル』で生み出した道具類を取り出した。
マーテルは俺の道具を傍目で見ると溜息をついた。
「スキルで作った道具か。なっちゃいねぇ。ルーカス、先ずはこの道具使え。」
マーテルはそう言うとボロボロの古ぼけた道具類一式を俺に渡した。
「これを使えば良いのか?」
「っだ。あたしのお古。壊すなよ。壊したら治して使え。スキルは使うな。」
マーテルが言うには、鍛治というのは引き出されたスキルという面も多少あるが、スキル系能力に頼らない、実力で身に着く個性によるところが大事らしい。
「何らかの固有スキルか?」
「スキルは関係ねぇ!ブツブツ言ってねぇで、はやぐやれっ!」
マーテルが炉に入れた鋼を俺は見様見真似で打ってみる。
「おめさん、ドワーフみでぇな馬鹿力だな。スジは良いぜ。」
言われたそばからハンマーの柄がボキッと折れた。
「あ」
「バガたれっこの!!!無駄に力み過ぎだぁッ!柄の換え取ってごってぇの!!」
俺は近場の硬そうな木を短剣で切ってナイフで削って柄をハンマーの頭に差し込み楔を打ち込んだ。
気を取り直して再び打ち続ける。
「っだ。っだ。そん調子だ。。。」
数時間後に鋼が板棒状になっていた。
「・・・早えな。汗もかいちゃいねぇ。。。」
「そりゃ、大して力も使ってないからな。むしろ柄を折らない力加減に精神力は使うがな。」
マーテルはへへんと胸を張って言った。
「っだ!鍛治は執念だべ!魔剣造りは気合だべ!」
「気合いなのか?」
「っだ!」
マーテルは握り拳に魔力を纏わりつかせている。
「何かこう、気合い入れでっど、親父が打ってだ魔剣に近付く気がすんだべな。」
鍛治場には多種多様な武器が置いてあったが、どれも中々の業物だ。
「親はどうした?」
「宿屋『火事場の馬鹿力』で客商売やってる。鍛治は飽きたんだど。んだがらオラが継いだべ。」
あのドワ夫婦かーい!
けど顔似てないぞ?
「何で魔剣打てるヤツが宿屋なんかやってるんだ?」
「そりゃ馬鹿な貴族や軍人が追いかけ回すからだべ。エルフ達の【変化】の魔道具で変装してっからわがんねぇべな。ざまぁみくされ貴族ども!ペッ!」
俺だっていちいち全員鑑定してる訳じゃないから知らん。
そして師匠、汚い。
白熱した鋼を湯に潜らせると蒸気と共に一振りの剣身が出来た。
「最初にしては上出来だべ。」
マーテルは俺の成果にニカッとヒゲ面で笑った。




