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ゴブとチートとダンジョンと  作者: 青もんた
40/50

竜の喉笛

「そろそろドラゴン・スロートか。見事に岩山ばかりだな。俺の『鑑定』でもここから貴重な鉱石が幾つも発見できるな。殆どは鉄鉱石だが、アメジストに、ルビー、お?少しだがミスリルもあるなぁ。」

「御使様。あまりご自分の奇跡を周囲で言いふらすのはお控え下さい。」

「ゼラ、わたくしも何度かルーカス様に注意しているのですが自重なさらないんです。」

「でしゅでしゅ!!!」


数日間の旅は順調に続いた。


途中ワイバーンの群れから襲撃に遭ったが、俺が【闇翼(ダークフライ)】の魔法で空を飛び、ドッグファイトで首を何頭か斬り落としたり、散弾銃で撃ち落としたりすると、その後ワイバーンは襲って来なくなった。


幌馬車の見えやすいところにワイバーンの頭を10個、これ見よがしに吊るした。


周りにいる商人や冒険者、騎士なんかがギョッとした表情で俺達の馬車を見るが気にせず行こう。


「ワイバーンの肉って美味いのか?ティア。」

「ワイバーンは高級肉ですよ?ルーカス様の活躍でいつでも食べられるのが嬉しいです!」

「そもそも、ワイバーンの襲撃から生き残れる冒険者が少なくないでしゅか?」

「その群れを全滅させる御使様がおかしい。人間は普通空は飛べないのです。」


売れば金貨何枚くらいするんだろうか?


既に俺はダンジョンの利益で遊んで暮らす事もできる。


正直冒険者になる必要なんてあまり無い。


「ゼラって冒険者ギルドに登録はしてるのか?」

「いえ、俺は冒険者にはなってません。」

「ふむ。まぁ錬金術ギルドの会員証もあるし、特に必要無いか。」


俺達は無事にドラゴン・スロートの街に到着した。


大口を開けた竜の顔を模した彫刻が飾られた門を中心に、頑丈そうな外壁に囲まれて、巨人族が来ても耐えられそうな見た目をしている。


「そこのワイバーンの頭を括り付けてる馬車!止まれぃ!」


俺達は早速、門番をしている衛兵に止められた。


皆、良い鎧を着ている。


「この馬車の持ち主はお前か!?」

「そうだ。ふむふむ。君、なかなか良い鎧を着ているな。流石、鍛治の街のお膝元の衛兵、というところだな。」

「ど、どうも?い、いやそんなことよりもだ!そのワイバーンは・・・」


たじろぐ衛兵。


「御使様、ここは俺が。おい、衛兵。このお方はお前などが気安く語りかけられるお方ではないぞ。この装いを見て分からないのか!俺達をその辺の下賤な身分だと思ったら大間違いだ。身分証を確認したら通行料を受け取ってさっさと通せ。ワイバーンのことは気にするな。命が惜しくばな。」


「わ、分かった。」


ゼラのドスのきいた言葉遣いに盛大に勘違いしてくれたのか、呼び止めた衛兵はあっさり陥落して通行を許可した。


「ルーカス・ブラック殿。れ、錬金術師?でありますか?」

「あぁ。趣味みたいなものだがな。ポーションに毒薬、魔法の武器を作るのが得意だ。今回は鍛治ギルドに要件があってな。途中ワイバーンに襲われたが、ザコばかりで歯応えがなかった。。。ワイバーンの肉、食うか?」

「ハハハ、、、さいですか。職務中なのでご遠慮します・・・おい!お通ししろ!!!」


俺たちの馬車は問題無く門を抜けた。


「ゼラ、頼りになります!」

「ゼラっちカッコいい!!」

「ま、まぁな。ハーフだけど俺は鬼人族だからな。強気の交渉は任せてくれ!」

「強がりだけど、中身はしっかり乙女だがな。」

「御使様!?からかわないでください!!」


顔を真っ赤にして恥ずかしがるゼラは可愛いな。

髪も赤いからトマトみたいになってる。


俺達はイチャつきながら街の宿屋に辿り着いた。


「宿屋『火事場の馬鹿力』。」

「すっごい暑苦しそうなネーミングセンスでしゅう。。。」

「さっき小耳に挟んだんですけど、ドワーフの夫婦が切り盛りしてるらしいですよ?火酒を飲めるみたいです。」


火酒か。

ファンタジー世界ではお馴染みのドワーフ達ご自慢の酒だな。


馬車を厩に留め、ワイバーンの頭を【影収納】に入れた。


扉を開けると「いらっしゃい!!」というデカい声が響いた。


「何日泊まるんだい?1ヶ月なら金貨13枚!割安さ!2週間なら金貨10枚だよ!」

「1ヶ月で頼む。女将、先に飯にしてくれ。火酒を頼む。あとこの肉を人数分ステーキにしてくれ。」


俺は旅の途中で解体して、【加工】で薄く削いだ木の皮に包んだワイバーンの肉を【影収納】から取り出した。


「何だい!?この肉を包んでる薄っぺらいのは!?便利だねぇ!!ってワイバーンの肉じゃないか!?」


宿で昼食を取っていた有象無象がこちらに視線を向けた。


「ワイバーンの肉?貴族でもないのに?」

「おいおい、飛龍種の肉なんて腐ってても拝めねぇぞ。。。」

「な、なんでも、舌が蕩けちまうくらいに柔らけぇとかなんとか!」


俺達は周囲を気にせずにいい匂いを漂わせるステーキと火酒の組み合わせを愉しんだ。


熱い鉄板付きの木皿の上でジューッと音を立てて肉汁を滴らせたワイバーンステーキの香りと、ツンとくる火酒の香りがテーブルに充満している。


俺はステーキを切り分け、肉を口に放り込んだ。


「美味い!柔らかく溶ける食感。かといってしつこい脂っこさもない。極上だな!米が食いたい、、、む!強烈だが美味い酒だ!薄めて飲みたいが、失礼に当たるか。けどストレートでもなかなかイケる。」

「ルーカス様、火酒をストレートで呑む人種はドワーフだけかと。。。あ、ステーキとっても美味しい!」

「もうベロンベロンでしゅよ〜〜〜!!ステーキうんまっ!?」

「うわっ!エルメ!?俺の火酒取らないでよ!もう!メッ!だからね!」


真っ昼間から酔いも回ってカオスな状況だが、ティア、エルメ、ゼラが楽しんでくれてるようで何よりだ。


「ドラゴン・スロートって街の名前は何が由来なんだ?ゼラ。本当にドラゴンが居た、とか。」

「そうですね。ドラゴンは居たとされています。若い火竜がこの地で頻繁にブレスを放ち、山を噴火させていたと言います。今は少し冷涼になってしまったらしいので、何百年も前に火竜は姿を消したとか。その影響で大量の鉱石が採掘されています。ドラゴンを惹きつける土地、竜は喉から熱いブレスを吐くことから『竜の喉笛(ドラゴン・スロート)』と呼ばれるようになりました。」

「詳しいな。」

「父が俺によく語っていたので・・・」


ゼラが父親のことをボソリというとしんみりした雰囲気になった。


俺は空気を明るくするため話を続けた。


「長旅だったんだ。少し昼間から酒なんて贅沢もたまにはいいだろう?」

「なんだか働きもせずに悪い事をしている気分になってしまいます。」

「ティア様はそんなに働きたいんでしゅか〜?エルメは死ぬまでご主人しゃまの奴隷でいいでしゅ!冒険者時代なら一生かかっても稼げない金額を貯金しちゃいましたからね〜〜〜!ヒック!!」

「でもエルメはそのお金使うタイミングも無く御使様に全部買ってもらっちゃってるんだろ?ずるくないか?それ。」

「良いじゃないか。この食事はこれまで苦労してきたゼラを労うためでもあるんだ。失った青春の数年分、ゼラには贅沢してもらって、俺の傍にいる限り世界の何処の王族なんかよりも煌びやかでいてもらうのさ!もちろん、ティア、エルメ、ダンゴちゃんもな!!はっはっはっは!!!」


俺達はしこたま食って飲んで笑った。


宿屋のドワーフ夫婦が呆れ顔で言ってきた。


「アンタら、火酒の代金払えるのかい?飲み過ぎだよ?」

「まぁワイバーンの肉をたらふく食えるくらいのお貴族様なら平気なんだろうが、火酒の在庫がもう少ないのさ。これ以上飲まれたらアンタら客に恨み買うぞ。」


俺は酔っ払って気が大きくなっていた。


「ほーん。。。だがそれがどうした!!!金ならある!!受け取れい!」


俺は【影収納】から数えもせずに金貨を大量に取り出したが、そこは流石ティア。

しっかりと火酒の代金分だけ数えて渡していた。


「ルーカス様、エルメ、飲み過ぎです。」

「御使様とその奴隷は自制心と自重が無い、ってことは俺よく覚えとくよ。」


宴もたけなわとなってお開きになり直ぐにベッドで眠りについた。


翌日、俺以外の3人は頭痛が酷そうだったので錬金術で酔い覚ましの薬を作って渡した。


苦そうに飲んでいたがすっかり体調が良くなったようだ。


「俺、御使様がすごく強い事と何処かのダンジョンの支配者だとしか知らないんだけど、やっぱり神様が遣わせたんだろうな。」

「ゼラ、本人には自覚がありません。」

「ポンポンお薬作っちゃうから価値観ぶっ壊れましゅ。」


俺達は目的であった鍛治ギルドに向かう事にした。

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