導きの光
錬金術ギルドに加入した俺はティア、エルメと昼食をとりながらマッスルダンジョンに転移できる安全な場所を探していた。
「俺としては聖教会を当てにしていたんだがな。本当にこのヴァイケンには聖教会はないのか?」
ティアは推測に基づいた話をする。
「はるか昔、聖教会が発足したばかりの黎明期に〝導きの光〟という暗号が使われたと聞きます。手がかりになるでしょうか?」
「なるほど。隠れキリシタンみたいなものか。」
「隠れ、、、なんですかそれ?」
「いや、なんでもない。とりあえず、その暗号はどんなところにあるんだ?」
「かつては干上がった噴水や、聖気を放つ遺物、塩や砂糖を保管する倉庫の壁なんかに刻んだり、チョークで描いたようです。凝ったものなんかは絵画に紛れていて、反聖教会派の貴族に購入させる方もいたとか。」
それは中々面白い奴も居たもんだな。
「ご主人しゃま。かつてはエルメのようなサキュバスに入れ込んでいた貴族と聖教会が戦っていた時代もあるんですよ?そのせいでエルメは、、、、」
エルメが言ってるのは魔族差別のことか。
「それに関してはティア、どうなんだ?」
ティアはバツの悪そうな顔をした。
「現在、魔族と人間の大規模な戦争はありませんが余波はありましたね。魔族を神敵認定しようとする動きもありましたが、魔族による教皇暗殺事件や魔族擁護派信徒による反対運動。聖騎士が本旨に反する虐殺に対してストライキ、などなど歴史を振り返ると色々ありまして、、、、」
「つまり、お互いに引っ掻き回してお互い火傷して終わったのか。しょうもない話だ。」
エルメも何か思い出したようだ。
「そういえば、魔族にも合言葉がありましたよ?片方が〝リンゴ〟、もう片方が〝蜂蜜〟、それを確認したら両者ともに〝辛くない〟と答えるんですよ?子供の頃から教わる魔族の言葉遊びみたいなものでしゅ。」
「役に立つかどうかは分からんな。りんご、蜂蜜、辛くない、、、異世界人が絡んでそうだな、、、、探してみるか。謎解きみたいで面白い。。。」
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どこにでもチンピラはいるものだ。
特に異世界の裏通りなんかには。
俺は『戦闘スキル』【古武術・極】【格闘術・極】の練習代替わりにチンピラに手心を加えながら暗号の事を聞いたり、「りんご、、、」と言いながら反応できないやつにゲンコツをかましたりした。
そんなことをやっていたら俺と似た黒い服を着て目深にフードを被った、どう見てもチンピラじゃなさそうな集団に囲まれた。
「・・・・お前ら何のつもりだ?何故〝導きの光〟を探す?何故魔族を探す?カッセルの手の者なら、此処で死んでもらうぞ。」
黒服達は一斉に毒々しい色をした短剣を抜いた。
「ま、待ってください!!!ルーカス様は悪い人じゃありませ・・・」
「『はいはーい!!!マスタールーカス!!!定時報告の時間でーす!!!あれ?誰ですかこの人達??』」
ダンゴちゃんが幽体化で現れた。
「な!?面妖な!?」
黒服もびっくり。
タイミングが良いんだか悪いんだか。
「いいぞ、ダンゴちゃん。このまま報告を続けてくれ。」
「『はい!ダンジョンの方は冒険者達が来て適度に魔物が間引かれて魔素も安定してます。ゴブリン達も筋トレ頑張ってますよ!聖教会の方は神父様が時々来てくださって紅茶を飲むのも変わりませんね。ピアース街の方ではマスターの欲しがっていた〝コメ〟なるものを見つけたので買い占めてきました。』」
「でかしたぞダンゴちゃん。米くらい自分で炊きたかったからな。」
「『それなら良かったです!あと、ダンジョンにはそろそろ戻られるんですか?』」
「あー、、、今目の前にいる人たちが安全な場所を知ってそうなんだ。話がついたらすぐに戻る。」
「『そろそろゴブリン以外の従業員を雇う話もしましょう。それでは!』」
通信が終わったダンゴちゃんの姿は霧のように消えた。
「・・・そうだな、自己紹介がまだだったな。俺はルーカスという。事情があって聖教会を探してたんだ。疑ってるようだが隣にいるティアも聖教会の神官で、俺の妻だ。もう1人はエルメ。奴隷だ。ちなみにカッセル伯爵は嫌いだ。ワニ、死んで良かったな。お前ら聖教会か?」
黒服は首を振った。
「リンゴの方だ。だが〝導きの光〟の守護者だ。」
「なるほどね。俺達を拠点まで連れて行け。尾行者は排除してある。」
俺は【影収納】から気絶した男4人を取り出し、地面に転がした。
チンピラとの戦闘中に【影分身】で倒したのだ。
ティアを狙う素振りを見せたので後で尋問しようと思っていたのだ。
「な!?!?こいつらはカッセルの奴隷狩りだ!!」
「こいつらのせいで何人もの仲間がワニに・・・タダじゃ殺さねぇぞ、、、」
黒服のリーダーは警戒を解いた。
「良いだろう。手土産もあるんだ。俺達のシマに案内してやる。」




