物持ちの良いひよっこ
「いらっしゃい。表の騒ぎはまたカッセル伯爵の獣刑かい?全く世も末だねぇ。」
「そうだな婆さん。だが今回処刑されたのは、人じゃなくワニの方だったな。」
「何だいそりゃ!?どういう事だい!?」
俺達は騒動のあと当初の目的だった錬金術ギルドに来ていた。
ギルドで店番をしている婆さんは数年前に現在のカッセル伯爵が当主になってから、ギルド前の沼が大きく変わってしまった事を嘆いていた。
「以前はね、もう少し綺麗な沼だったのさ。血の臭いが水の狩人を呼び寄せちまったんだ。それからあのデカいのが住み着いた。前は多少なりとも薬草取りが出来たんだが、あのバカ伯爵のせいで縁起でもない名所扱いじゃ!全く反吐が出る!」
婆さんはそれでもニタリと笑った。
「しかしまぁ、神様ってもんはいるもんだねぇ。今度感謝しに拝みに行ってみようかい。喜捨すれば沼を清めてくれるかもしれんからねぇ。ヒッヒッヒ!」
あのワニが死んでよっぽど嬉しいらしい。
「そうすると良いさ。話は変わるが、錬金術ギルドに加わりたいんだが、大丈夫か?」
婆さんは錬金術ギルドに加入する為の条件を示した。
「あたしゃこのちっぽけな錬金術ギルドのマスターだからねぇ。一応、ひよっこ向けの試しみたいなのはあるよ。まずはケアリーフ、ヒカリダケ、アケボノサボテンを幾らか、それと甕一杯の綺麗な混じりっけの無い水を自力で持ってきな。買うも良し、採ってくるも良し。第一の試しはそれだよ。意外にもこの試しが出来ないやつは多いからね。稀にこの試しで死んでしまうボンクラもいるくらいだからね。」
ケアリーフは治癒効果のある薬草、ヒカリダケは持っているだけで保温効果があり、摂取すると痛みを取り除く作用がある薬草、アケボノサボテンは血行を良くして代謝を促す作用のある薬草だ。
どれも貴重で買うのは現実的では無いし、この3つは野生ではそれぞれ植生地が全く違う。
例外はダンジョンだ。
ダンジョンの植生は濃い魔素の影響でデタラメになる。
なので普段は共生しない薬草が群生している事も多い。
しかし、それを目当てで出没する魔物も多い為、危険度は段違いになるが。
「全部持ってるぞ。」
俺は言われた素材を【影収納】から取り出した。
伊達でダンジョン・マスターやってないからな。
「おっどろいたねぇ。。。こんな物持ちの良いひよっこは初めてさ!幸先が良いねぇ!!こっからが本番さ!」
婆さんの目が銭ゲバめいている。
婆さんは瓶を3つ取り出した。
「用意した材料を使ってポーションを作りな!ただし、挑戦は3回まで!使える材料はそれぞれ人差し指の先の関節くらいまで!水は瓶の分までだよ!失敗したら明日また出直してきな!」
「分かった。」
俺はケアリーフをナイフで刻んだり、素材を火魔法で乾燥させてみたり、沸騰させた水に入れてみたりしたが上手くいかなかった。
2回失敗し、最後に素材を火で炙り、乾燥させて粉末にし、水に溶かして魔力を込めながら混ぜ合わせると淡い光と共に魔法薬が完成した。
「ふん。センスはあるみたいだね。紛れも無くローポーション。合格だ!名前を教えな!!会員証作っとくよ。」
「ルーカス・ブラックだ。よろしく頼む。」
「やりましたね!ルーカス様!」
「ご主人しゃますごいでしゅ!」
俺の作業に息を飲んで一喜一憂していたティアとエルメは喜んで抱きついてきた。
「ほれ、錬金術ギルドの会員証だ。失くすんじゃないよ?国や街の出入りもラクラクだからねぇ。門番に見せるなら冒険者ギルドよりも、こっちのギルド証の方が信頼度が上だから、税も安いよ。それと、錬金術ギルドでは薬草、ポーション、貴金属、鉱石、魔道具の買取、販売仲介をやっとるからね。大口の取引の時は此処に手数料が書いてあるからちゃんと読んでおきな!」
俺達は婆さんから諸々の説明を受けてからギルドを後にした。
「なかなか難しかったが、楽しかったな。スキルを使わずに錬金術をやってみるのも良い気分転換になるな。」
「ルーカス様、おめでとうございます!これで素材を捌き易くなりますわ!」
俺達は次にタグ付け出来るようなセーフゾーンを探しながら、【料理召喚】し、ハンバーガーにポテトとコーラを食べた。




