御者がだいたいグルなのはベタな展開
「敵襲だーッッッ!!!」
俺達は幌馬車の中で風景を楽しみながら雑談していると突然外から怒号と矢が掠める音が聞こえてきた。
俺は気配を探り敵の情報を掴む。
「鑑定、と。敵の数は10人、野盗ってところか。こういう場合客の俺たちはどうするんだ?」
「基本的には出てはいけません。護衛の冒険者達がなんとかするでしょう。」
「そうか。けど問題があるな。早々に御者がこの馬車を捨てて逃げたようだ。俺達が先頭なのに、普通そんな事あるか?」
きっと今頃は後方の馬車は俺達の乗っている馬車のせいで立ち往生しているだろう。
「ぎゃーーーっ!?」
「積荷を奪え!!!女子供は攫え!!男は殺せぇ!!」
「野盗を仕留めろ!!」
既に冒険者に被害が出ている様だ。
「ルーカス様!!」
「ふぁーあ。しょうがないな、少し運動でもするか。」
俺は【影収納】から新たな【モンスター・ガントレット・シリーズ】の2作目を取り出した。
「フッ!このフィアーシザーの鎌から作り出した新たな『マンティス・ガントレット』の斬れ味を野盗で試すか。」
俺は馬車の扉の隙間から滑り出し、野盗と思しき連中の首元を狙って『マンティス・ガントレット』を少し当てがう。
「ごぱっ」
「カッ」
「ウッ」
「おらぁ!扉を開けブッ!!??」
野盗達は喉から血飛沫を上げて倒れた。
「むぅ。軽い力でこの斬れ味。全力を出したら鋼鉄の鎧ごと断ち切れるな。素晴らしい出来だ!!!サクサク行くか!!」
『鑑定。『魂魄』を吸収しました。』
眼にも止まらぬ速さで敵を倒した俺は返り血すら浴びずに馬車に戻った。
「終わったぞ。」
「ご主人しゃま、早いですね。今ティア様と地図を確認してました。」
「この地図で見るとわたし達はこの辺に今居るんでしょうか?」
俺が野盗如きに遅れを取る筈もないと理解していたティアとエルメは平然としていた。
「おい、あんた達!無事か!?」
冒険者だ。
どうやら外の事態は落ち着いたらしい。
「あぁ。御者が一目散に逃げ出した以外は。」
「コイツの事か?!野盗の頭と一緒に居たのを捕らえたんだ!!言い逃れはさせんぞクズが!!!」
後ろ手に縛られた御者のおっさんがボロ雑巾の様になって現れた。
「やぁ御者殿。ヴァイケンまで送ってくれるんじゃなかったのか???」
「クソッたれ!!弱い冒険者ばっかだったハズが!!とんだ見当違いだ!!女神官を拐えば味見してから奴隷にして金になったのに!おい!今からでも遅くねぇ!てめぇらもその女を、、、、???」
御者の首がコロリと落ちた。
俺が短剣に火属性の魔力を込めて一瞬で断ち切ったので傷口が焼かれて血も出ない。
「聞き間違いだったか??神官をどうするだって??おや、御者殿は首と胴が離れる事故に遭ったようだ。もう喋る事も無い。すまんね冒険者君。御者に渡した運賃は君達で山分けしてくれ。ほら、護衛料の金貨5枚追加だ。着けば更に5枚払おう。道中は物騒な様だからね。頼んだよ。」
存外にティアを狙っていたと知れば、決して容赦はしない。
冒険者は俺の不気味なまでの圧倒的実力を感じ取った。
捕らえられた野盗達の首は速やかに落とされた。
負傷した冒険者が交代で馬車の操縦を務め、俺達は再び優雅な時間を過ごし始めた。
他の2組は商人一家と貧乏貴族の一家で、不安な時間を過ごしていた様だが、俺が様子を見に行った時、御守り代わりに剣を進呈したら非常に喜ばれた。
例の貴族のお抱え騎士から奪った剣に、氷属性を纏わせた廉価な剣だが、家宝にするだのと大袈裟だった。
「はぁ。ご主人しゃまは物の価値がまだよく分かっておられません。」
「エルメ、その事は以前から知っていたでしょう??今更ですわ。」
俺は2人の髪を撫で付けながら、そろそろ馬車に揺られるのも飽きたかも、と思い始めた。
・『マンティス・ガントレット』
ルーカス・ブラックの【モンスター・ガントレット・シリーズ】の2作目。
聖騎士ローガン・カーティスが一騎討ち(?)にて倒したフィアーシザーの鎌を材料に製作したガントレット。
ミスリル並みの剛性を持ちながらもミスリルよりも軽量。
魔力を纏わせると更に威力が増す。
金属特有の共振がしない為、感知能力の高い魔物のテイクダウンに最適。
ミスリルの様な伝導性が無い為、属性付与をすると素材が傷む。




