『マッスル・ダンジョン』その後
バーバノン王国はノッケンス男爵領内ピアース街『マッスル・ダンジョン』の内部で、ゴブリンを支配して力をつけた謎の人物、『ルーカス・ブラック』を公式にダンジョン・マスターと認定した。
マッスル・ダンジョン内で得られる利益は全てルーカスの物であり、バーバノン王国とノッケンス男爵の不干渉をルーカスが約束させた。
こちらに敵意あり、となればスタンピードも引き起こせると豪語したのだ。
彼を守護するゴブリン、そしてゴーレムはBランク〜Sランク相当の強さを持つ。
話が分からない何人かの貴族がダンジョン内で消息を絶ち、それから貴族のちょっかいは無くなった。
彼はダンジョンを調整し、出現する魔物の数を事前通知。
冒険者は死傷者が減り、結果ノッケンス男爵領の収益が増加する事になった。
聖教会のトップはルーカス・ブラック率いるダンジョンの勢力を信徒の守護者とした。
ダンジョン上層階は聖教会の神官が良く出入りする他、孤児の働き口としても機能している。
貴族などの特権階級は出自の不明な個人にダンジョンを接収される事に不満を抱いたが、そもそも探索する冒険者は大半が出自不明。
冒険者ギルドもその匿名性を利用して大きくなった組織。
ルーカス・ブラックも流れの冒険者であるとされ、強力なゴブリンの私兵を有している以上、これ以上の干渉は不可能だった。
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「マスタールーカス、コブちゃんから伝令がありました。お客様がお見えです。」
「ふぁああ、ダンゴちゃん。直ぐに行くよ。」
俺はダンジョンコアをゴーレム化したダンゴちゃんを従わせる事で、ダンジョン・マスターになった。
それと同時にダンゴちゃんがコアの時に保持していたダンジョン内権限は俺の物になった。
最近、ダンゴちゃんはコアの時は動けなかったせいか、新しいゴーレムの身体で娯楽を満喫して、やたら来客を喜んでいる。
俺は進化し、『エクリプス・ニンジャ』となった。
【時空魔法】【鬼神化】【再生】【幽体化】【貼り付き】などのチートスキルを手に入れた。
そしてティアとエルメが卒倒しかけるくらいの甘いマスク。
実際卒倒する夜のお楽しみの充実。
遂に地上へ繰り出す準備が整ったのだ。
「あ、ルーカス様。先に出迎えしておりました。」
「ご主人しゃま!ねぼすけ!」
ティアとエルメが紅茶を飲みながら来客者に応対していた。
「ルーカス君。久しぶりだね。」
「やぁ、神父殿。」
俺はダンジョン内に聖教会の教会を建造する事を許した。
聖の気を放つ建物が置かれた事によって、邪悪な魔物の出現が減り、冒険者のセーフゾーンとなった。
結果的に聖教会の信者は増える事となる。
「いやぁ、ここに来ればいつでも淹れたての紅茶が飲めますので、助かります。」
「フッ。教会の連中も、紅茶なんぞ冒険者に配達させれば良いのにな。ダンゴちゃんに会いたいからって、別に理由なんか要らないぞ。」
「いえいえ、これも聖教会の立派な務めですから。」
知る者は少ないが、ダンジョンコアを宿したダンゴちゃんはバーバノン王国では俺よりも重要視されていた。
当然、ダンジョンコアを宿した自我を保つゴーレムだからだ。
彼女自身はコアをダンジョン最深部に置いてきているが、ゴーレム体は常にコアにタグ付けされていて、何かあれば直ぐに身体をコアに転移させ、ダンジョン機構を守れる。
神父の訪問は定期的なコアの点検も兼ねている。
「それで、ルーカス君は近々此処を離れるのでしょう??ダンゴちゃんはどうするのですか?」
「置いていく。彼女はダンジョン・マスターである俺の奴隷で、ダンジョン内の魔素量を管理する義務がある。魔物、鉱石、魔道具を生み出し、人間がそれらを狩りで持ち帰る。そうやってダンジョンは維持されているんだ。それに俺の家の使用人でもある。賊が来ないようにゴブリンどもをまとめ上げ、俺の私財を守って貰わなければいけないからな。」
ある程度自由は認めている。
「いつでもダンジョン内には転移可能なんだ。ピアースの街に買い物に行ったり、行事に参加したりなどは許している。連絡もこまめに取れる魔道具もある。放ったらかしは無いから安心してくれ。」
「それは何よりです。ちなみに、次のスタンピードはいつなのですか?」
そっちがやはり心配か。
「ダンゴちゃん、スタンピードはいつ発生するんだ?」
ダンゴちゃんは魔素量からスタンピード発生の期日を測定した。
「次回のスタンピードはおよそ680日後になりますよ!」
時間は十分にあるようだ。
「その時は教会に何人か聖騎士を派遣する様に、教皇陛下にお願いしてみましょう。冒険者ギルドにも通達はしておきます。」
「好きにしろ。ダンゴちゃん曰く、ダンジョンで発生する魔物はランダムだからな。凶悪な魔物が出てもこちらで完璧な安全は保証出来ない。魔物はダンジョンマスターである俺と登録者、登録施設には攻撃を加えない。つまりゴブリン達の居住区画と聖教会関係施設はスルーされるはずだ。我が家にはコブちゃんがいる。万が一激しい戦闘になればこちらからゴーレムを送り出す事も可能だ。だからダンゴちゃんは心配無用だ。」
「ぶー。嘘でも心配されたいですよ、マスタールーカス!!」
メイド服を着たダンゴちゃんはダンジョンコアだった時と同じく、ダンジョン内の魔素を調整している。
最近は俺が考案した冒険者向けの魔道具やらをダンジョン内の探索報酬として配置させて魔素を消費している。
他にも出現する魔物に対して安全な緩衝地帯を設ける事で、冒険者が準備を整えたり脱出出来る時間を与えるようにした。
いずれ魔素が満ちてスタンピードが発生すれば次のダンジョン四天王が生まれるという。
もちろん、ダンジョンマスターである俺に四天王は攻撃を加えない。
どんな四天王か楽しみだ。
「3日後に、俺とティア、エルメは旅に出る。後の事はダンゴちゃん、バトラーゴブリン以下ゴブリン軍団、コブちゃんに任せてる。何かあればダンゴちゃんから連絡してくれ。」
「はーい、マスタールーカス!」
「グヘヘ!ご主人しゃまと地上に打って出るっすか!世界征服も夢じゃないでしゅ!!」
「ゴーレムさんも早く冒険したくて召喚されたがってるでしょう?わたしも待ちきれません!」
「あぁ!俺もだ!まずはゆるりと旅行気分でバーバノン王国を見て回ろう。その後はグラナパイアの国の何処かで冒険者登録して、別荘探しだ!!」




