勇者マサルとアーロン
国王にダンジョンの件を報告していたマサル達はルーカスの野望を話していた。
「ってことだ。ルーカス・ブラックなる男があのダンジョンを手に入れ主になろうとしている。どうやってかは分からんがコアを破壊せずに。彼は間違いなく転生者だ。おそらくだが、俺たちが束になっても勝てるかイチかバチか、ってとこだろうな。しかも俺達は協力を求められている。要するにコアを破壊しない約束は守るから、見届け人になれと言われているんだ。」
「ふむ。どうしたものかの。。。」
バーバノン王は対応に悩んでいたが、取れる選択肢は少なかった。
「ルーカスという男、弱点はないのか??」
「あるぞ。分かりやすいくらいに。俺と同じだ。」
マサルは簡単に答えた。
王は唸る。
「なるほど、、、女か。女なら誰でも良いのか?」
「いや、絶世の美女じゃなきゃ靡かないな。というか絶世の美女があいつに靡いちまうんだから、俺もヒヤヒヤしてたぜ。きっと隙があったらウチのパーティメンバー掻っ攫われちまう。そんなのは真っ平御免だけどな。。。」
マサルは青い顔で言った。
神官ティアも結局、聖教会からの言伝よりルーカスに尽くす事を選んでしまった程だ。
「大丈夫だって。あたし達はマサルから離れたりしないよ。たとえルーカスがどれだけイケメンでもね。」
「確かにルーカスは色々と多才かもしれないけど、底知れない闇を感じてゾクゾクッてしたよ。あれってスキルなのかな?」
「あたしは3種の神器っぽいゴーレムさえ手に入ればどうでも良いわ。それに、あいつと付き合い続ければ、きっと引き返せなくなるわよ?」
「ぐっ!!?地味にフォロー入れられつつ若干ルーカスに対する好感度が上がってる!?やっぱりアイツは敵なのか!?人の女に手を出すのか!?」
変な方向に話が進み始めたので王は遮った。
「それについてはもうよい。そやつが人間らしい弱みを持っているのは安心材料だ。教皇、神官の件、如何様に?」
参列していた聖教会を束ねる教皇が意見を述べた。
「我らはただひたすらに信ずる神の導くままに。彼女が彼に真名を与えたのであれば、その者が神に仇成す存在で無いのは明白。彼女も人々の未来の為に、ルーカスなる者を見極める為に、コアの扱いを見定めるつもりでしょう。ただしかし、、、」
そこで懸念が入る。
「神官ティアが惑わされる可能性も否定出来ません。我々はこの探索に聖騎士を派遣する事とします。もちろん、〝男〟の聖騎士です。万難を廃して事に当たらなければなりません。こちらは何十万という信徒達の生活がかかっているのです。」
聖教会は自前の兵を有しており、邪悪な存在を討つことに特化していた。
「ま、まさか、、、!!うむ。こちらからは異論は無い。。。」
一瞬、言い淀んだ王は頷いた。
「聖騎士??誰なんだソイツ??」
訝しむマサル。
「普段は修練ばかりしていますから、王都にはいません。幸いルーカス・ブラックはあなた方が来なければ攻略には乗り出さないんでしたね?その時間、有効に使わせていただきます。」
前人未到のダンジョンコア到達。
この話が終わろうとしていた時、謁見の扉を勢いよく開けた一人の珍入者が現れた。
「おい!!!勇者マサル!!俺をお前のパーティに入れろ!!」
ゴチンッ!!
「いてぇっ!!??何しやがる!?」
マサルが少年にゲンコツをかました。
「王、誰なんです?いやまぁ顔が似てるから何となくわかりますけど。」
シワが寄る眉間を抑えたバーバノン王と、にっこり微笑む教皇が対照的だ。
「息子だ。3番目の。アーロン、、、今は公務中だ、、、わがままは侍女に言うのだ。それに、勇者殿に対してなんだその口の利き方は!!」
「ウルせぇ!!俺は冒険者になるんだ!!冒険者は敬語なんか喋らねぇ!!」
「はは〜ん、なるほど。」
王はマサルに謝った。
「すまんな、マサル殿。このアーロンはイタズラ好きで、しょっちゅう王城を抜け出しおってな。屋台で仲良くなった冒険者にある事無い事吹き込まれてからずっとこの調子なのだ。許せ。」
第三王子アーロンは今年で8歳。
兄2人と姉が居て、特に何事も無ければ王位継承権は発生しない王子。
その身分故に年の近い友達も出来ないままだった。
絵本にある勇者の冒険譚や竜伝説に憧れ、護衛の騎士や侍女から話を聞き出し、いてもたってもいられずに脱走。
屋台で会った男から冒険者という職業は、勇者が一番最初にやる仕事と知るやいなや勝手に剣術を始めた。
「良いじゃないか、将来有望なガキンチョだな!」
「ガキンチョじゃねえッ!お前だってガキンチョじゃねぇか!!」
「そのガキンチョに手も足も出ないスーパーガキンチョはどなたですかねぇ〜?」
「マサル、アーロン様は王子だよ、一応。放してあげなよ。」
ハナは何気なく失礼な事を言う。
「一応、、、」
アーロンは遠い目になった。
「お、おい気にすんなって。ハナは悪気があって言ったんじゃないんだ。」
なおさらタチが悪い。
「ふむ。まぁ一度痛い目に遭うか、死ぬほど怖い目に遭わねば分からんだろうな。マサル殿。報酬は払う。アーロンを連れて行ってはくれまいか??もちろん、邪魔にならないよう、護衛は付ける。」
マサルは突っぱねた。
「冗談じゃねぇよ!ダンジョンで死んだらどうするつもりだ??」
「責は問わん。最近、我が妻が子を産んでな。男児だった。これでもアーロンはなりは小さいが男。火中に飛び込むのは止められない。」
万が一死んでも王国は揺らがない。
「せいぜい足引っ張んなよな!マサル!」
「どの口が言うか!ガキンチョ、付いてくるのは勝手だが、ダンジョンでお前がトチれば全員死ぬかもしれないんだからな!!余計な真似はしないでくれよ!」
まぁルーカスがいればそれは無いが敢えて言わないマサル。
冒険は緊張感が無くなれば事故に繋がる。
「わ、わかった。」
「チッ!ほんと男ってしょーもな!」
彩音が舌打ちして話を締めくくった。




