友を思いクビを選ぶ
それから、しばらくは3人で今後のことや、僕の処分について話し合った。当事者の僕が、2人の話し合いに参加してるのだから、おかしな話ではある。しかし、彼らは1社員として僕を見ず1人の友達として見ている。
それが嬉しかった。役職が付いていても、部署が違っていても、僕の上司になっていても、小学校からの友達として僕の事を心配して、今後の事について対策をたてようとしてくれている。気付くと、僕は、無意識に笑っていた。
「おい。何急に笑ってんだよ。お前の事を話してるんだろ。」
義人に気付かれ、怒られてしまった。
「すみません。いや、つい嬉しくてですね。ほら、昔にもこんな事があったなぁと。」
「昔?なんかあったか?」
信人が尋ね返す。
「昔、大学生の頃僕の両親が事故で亡くなって、落ち込んで引きこもってた僕を励ますために、勝手に僕の家に来てくれて、2人でどこに行こうか、何をしようかって僕に色々話してくれたじゃないですか。」
「そういえばあったなぁ。みんなで話して、お前は乗り気無くて、何をするか決めたら無理やり車にお前を押し込んで、あちこち行ったなぁ。」
信人は、しみじみと話す。それから、しばらくは昔話になり、3人で思い出話を語った。
ふと僕は、事情こそ違えど、あの時と状況は似ていると思った。けど、今は違う。恐らく義人には、かなり迷惑をかけている。もちろん信人だって、この件がバレたらあいつから標的にされてしまうかもしれない。昔みたいに友達としては、接する事はあれど、今はもし、3人の誰かが困ったときに助ける事は出来ても、その助けた後にもしかしたら、それぞれの立場が危うくなる可能性も出てくるのだ。
そう考えてしまった僕は突然2人に
「すみません。辞表は無いけど、僕は辞めます。」
と、言った。