如月、思い出にひたる
「しかし、変な名前よねぇ。田中一郎太なんて。写真見てもそんな名前なんて想像つかないよ。」
如月は、少し笑う。
「確かに名前だけは変かと思いますが、スキルはとてつもない持ち主かと思われます。プログラミング言語は全て習得していますし、マスターとスキルは比較しても見劣りしないでしょう。」
「確かに。まぁこの人が例のプロジェクトに参加してくれれば、効率はあがるでしょうね。で、作戦はこのままで大丈夫?」
「99.99%問題ないかと。」
「100では無いのね。」
「100だと油断しますから。最悪のパターンもいくつか考えています。」
「分かったわ。じゃあ、この場所に向かえばいいのね?」
「はい。まもなく作戦開始の合図があるので、それから向かっても間に合います。」
「おっけー。じゃあ久しぶりに体を動かしますか。」
「やりすぎないようにお願いします。」
「それは、分からないよ。3週間引きこもってたし、なまってるからね。」
そう言いながら、如月は体を伸ばしたりしてストレッチを始めた。
「今回は、中野さんの時と違いますから。簡単に考えないでくださいね。」
「まぁね。中野くんは私の信者だから簡単だったからね。ヤバイと判断したらうちの会社の例の部隊を出動させてね。」
「問題ありません。手配済みです。あなたの親会社の社長にも連絡しています。」
「そう。何か言ってた?」
「特に何も。無理しないでくれとのことでした。」
「優しいのか冷たいのか、分からないわね。」
少しだけ、如月は悲しい表情を見せる。
「どうかしました?」
その表情を見てマイは言う。
「何でもない。少しだけ思い出に耽ったの。心配しないで、大丈夫だから。」
「ならいいのですが、よろしかったらデータを出しましょうか?あなたの成長記録は10才から保存しています。時間もありますから思い出に耽りたいときは、映像を見て思い出に浸りましょう。」
「マイは、やっぱり人間じゃないのね。」
「当たり前ですよ。で、どうします?見ますか?」
如月は、マイの言葉に感傷にも浸れないと思いつつも、マイの提案に
「見ようかな。」
と、言った。それから、しばらくは如月はマイが保存している、自分の写真や動画そして、記録を見せてくれた。それを見ながら2人は、話をして盛り上がっていった。
しばらく話していると、マイが
「時間です。懐かしい思い出はここまでにして仕事に戻りましょう。」
と、言った。
「オッケー。じゃあ、行ってくるよ。」
「忘れ物は、ありませんか?」
「大丈夫よ。マイがくれた資料に書かれてたやつは全て、車の中にあるから。」
「かしこまりました。では、気をつけて。インカムは忘れないでくださいね。」
「分かってるよ。それが無いとマイの指示が聞けないからね。しかし、懐かしかったよ。ありがと、マイ。」
そう言うと如月は、電気を消して外に出ていった。




