如月、苦悩する
中野との話を終え、如月は3週間、外観は今にも朽ち果てそうな雰囲気を醸し出している昭和の頃から時間が止まったようなアパートで、そこの2階の階段を上がったすぐ横の角部屋に引きこもっていた。
四畳半の畳の部屋で台所も小さく、とてもじゃないが女の子が住んでいるように見えない、パソコン2台と、プリンターそして、冷蔵庫しかない殺風景な部屋となっていた。
中野から聞いた例のエンジニアを探すため、誰にも教えてないそして、誰も知らないここに都内の本宅に戻らずに過ごしていた。毎日、パソコンとにらめっこしているが、未だに見つからない。マイも、ネット上にもぐったまま帰ってきていない。
こんなに手こずるとは思わなかった。あの中野でさえ、1週間で見つかったのだ。簡単に考えてた訳では無いが、これほどまでとは思いもしなかった。如月は、思わず深いため息をつく。
いたずらに時間だけが過ぎていく。やらなくてはいけない仕事も全て投げ出している。あと、1週間しかない。もし、それで見つからなければ諦めなくてはいけない。如月は、一旦探すことを止め自分のスケジュール表を立ち上げ確認する。
マイが管理しているため、五年先まで仕事の予定が入っている。そして、あと1週間仕事が出来ないと、予定が7年先まで伸びて埋まってしまうとマイは予測してたてている。
これ以上の仕事は増やしたくない。正直例のプロジェクトだけをしていたい。そんなことを考えていると、だんだん腹が立ってきた如月は、絶対にそいつを見つけて、このイライラをぶつけてやると八つ当たり気味な事を考え、またネットを開いて知らない相手を探すことを再開した。
すると突然、もう一台のパソコンから、
「マスター、見つけました。」
と、声がしたかと思うとすぐ横のプリンターが動き出した。
「本当に?」
「ええ、今から2時間後に会う約束も取り付けました。」
「はぁ?展開早くない?ちゃんと説明してよね。分かるように。」
「すみません。急いでたものですから。とりあえず、プリンターの資料を読みながら、私の話を聞いてください。」
そう言って、マイは如月に全てを語り出した。




