勇気を出して会社に行こう
思い出しても頭を抱えたくなる。あれほど我慢してたのに、童貞と言われて頭にくるなんて。そりゃあ経験もないし、付き合ったこともない。そもそもがめんどくさい。人付き合いだって仕事中だけでいいのだ。
まぁあれこれ考えても仕方ないので、僕は携帯の電源を入れる。会社から連絡あっても出たくないから電源を切っていたのだ。主流はスマホらしいが、僕は相変わらずガラケーを使用している。必要ないし、アドレスだって10件も入ってない。
携帯を見ると、「会社」、「人事部長」、「専務」の名前で着信履歴が残っていた。それも、全部で40件も。伝言は、無かった。とりあえず、会社に行くしかない。そう思っていると、着信音がして液晶に「人事部長」と表示されていた。とりあえず、電話に出てみる。
「もしもし?」
「もしもし。やっとでやがった。心配してたんだぞ。」
「電源切ってた。すまん。」
「とりあえず、会社にでてこい。義人も心配してるぞ。」
義人とは、会社の専務であり、社長の2番目の息子であり、僕と人事部長とは、小学校からの同級生だ。だから、大学生の時専務に誘われ就活もしたくない僕は、そのまま就職した。
「分かった。とりあえず今から出勤するよ。そしたら、出勤時間に間に合うから。」
「じゃあ着いたら、そのまま専務室に来てくれ。話があるそうだから。」
「嫌な予感しかないな。じゃあまた後で。」
そう言って電話を切り、僕は出勤することにした。