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2.圧倒的な力、果たされる約束。

主人公の能力開花。









 自分でも信じられない動きだった。



「うおおおおおおおおおっ!!」



 咆哮し、大柄な男に迫るとボクは相手の腹に渾身の拳を叩きこむ。

 男に避ける仕草は見られなかった。だが――。



「がっ……!!」



 確実なダメージが、彼に与えられる。

 いいや、そんな簡単な一撃ではなかった。

 何故なら男は、ボクの攻撃を受けた直後に血の塊を吐き出したのだから。すなわち、貧弱なはずのボクの攻撃が、この屈強な男の臓器にまで至った証拠だった。


 後方に倒れた大男を確認して、ボクは次に細身の冒険者を見る。



「ひっ!?」



 すでに男は敗走を始めていた。

 足は相手の方が速いはず。しかし、今のボクは――。




「遅い……!」




 一足飛びに相手へと追いつき、首根っこを掴んだ。

 そして、有無を言わさず引き倒す。相手の持っていたナイフを奪い取り、迷うことなくボクはそいつの腕を突き刺した。

 悲鳴が上がる。

 だが、それだけでは満足できなかった。



「これで、トドメだ……!!」



 うずくまる、細身の冒険者。

 そいつの顎に目がけて、ボクは膝を叩き込んだ――!




 直後、潰された蛙のような声を発して意識を失う相手。

 それを見下ろして、ボクは膝から崩れ落ちた。



「あ、れ? ボクは、どうしたんだろう……」



 いいや、自分が何をしたのかは分かっている。

 問題はそれを信じられない自分がいる、ということだった。



「ボクが、倒したのか……?」



 格上の冒険者を、三人も同時に?


 傷口の痛みを堪えながら、ひとまず立ち上がって魔素の欠片を拾う。考えるのは後にしよう。とりあえず、今はニールのいる場所に戻らないと……。



 全身が痛い。

 でも、どこか心は清々しかった。







「なるほど……?」



 ボクの話を聞いたニールは、その綺麗な眉間に皺を寄せて考え込んだ。

 手当てを終えたボクは、彼に訊ねる。



「なぁ、どういうことだと思う?」

「俺も分からないさ。でも、一つ確かなことはある」



 するとニールは、一つ大きく頷いてこう笑った。



「ハクノは、やっぱり弱くなかった、ってことさ!」――と。



 晴れやかに。

 まるで、今までの不安を打ち消したように。



「ボクは、弱くない……」



 その言葉を聞いて、自分の手のひらを見つめた。

 そこにあるのは、せめて努力はしようとしてきた木刀の素振り、その痕跡。ボロボロな手のひらから、言いようのない力が伝わってきた。



 そして、こう思う。



 本当に最後まで、諦めなくて良かった――と。




「それじゃ、俺はもう診療所で働かなくてもいいな」

「え、それって……?」



 そこでふと、ニールが言った。

 ボクが訊き返すと、彼は満面の笑みで応えるのだ。



「だって、これから一緒にやるんだろ? 冒険者!」――と。




 それは、ずっと前にした約束。

 忘れることなく、待ってくれていた友人の心からの喜びだった。




 


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