2.圧倒的な力、果たされる約束。
主人公の能力開花。
自分でも信じられない動きだった。
「うおおおおおおおおおっ!!」
咆哮し、大柄な男に迫るとボクは相手の腹に渾身の拳を叩きこむ。
男に避ける仕草は見られなかった。だが――。
「がっ……!!」
確実なダメージが、彼に与えられる。
いいや、そんな簡単な一撃ではなかった。
何故なら男は、ボクの攻撃を受けた直後に血の塊を吐き出したのだから。すなわち、貧弱なはずのボクの攻撃が、この屈強な男の臓器にまで至った証拠だった。
後方に倒れた大男を確認して、ボクは次に細身の冒険者を見る。
「ひっ!?」
すでに男は敗走を始めていた。
足は相手の方が速いはず。しかし、今のボクは――。
「遅い……!」
一足飛びに相手へと追いつき、首根っこを掴んだ。
そして、有無を言わさず引き倒す。相手の持っていたナイフを奪い取り、迷うことなくボクはそいつの腕を突き刺した。
悲鳴が上がる。
だが、それだけでは満足できなかった。
「これで、トドメだ……!!」
うずくまる、細身の冒険者。
そいつの顎に目がけて、ボクは膝を叩き込んだ――!
直後、潰された蛙のような声を発して意識を失う相手。
それを見下ろして、ボクは膝から崩れ落ちた。
「あ、れ? ボクは、どうしたんだろう……」
いいや、自分が何をしたのかは分かっている。
問題はそれを信じられない自分がいる、ということだった。
「ボクが、倒したのか……?」
格上の冒険者を、三人も同時に?
傷口の痛みを堪えながら、ひとまず立ち上がって魔素の欠片を拾う。考えるのは後にしよう。とりあえず、今はニールのいる場所に戻らないと……。
全身が痛い。
でも、どこか心は清々しかった。
◆
「なるほど……?」
ボクの話を聞いたニールは、その綺麗な眉間に皺を寄せて考え込んだ。
手当てを終えたボクは、彼に訊ねる。
「なぁ、どういうことだと思う?」
「俺も分からないさ。でも、一つ確かなことはある」
するとニールは、一つ大きく頷いてこう笑った。
「ハクノは、やっぱり弱くなかった、ってことさ!」――と。
晴れやかに。
まるで、今までの不安を打ち消したように。
「ボクは、弱くない……」
その言葉を聞いて、自分の手のひらを見つめた。
そこにあるのは、せめて努力はしようとしてきた木刀の素振り、その痕跡。ボロボロな手のひらから、言いようのない力が伝わってきた。
そして、こう思う。
本当に最後まで、諦めなくて良かった――と。
「それじゃ、俺はもう診療所で働かなくてもいいな」
「え、それって……?」
そこでふと、ニールが言った。
ボクが訊き返すと、彼は満面の笑みで応えるのだ。
「だって、これから一緒にやるんだろ? 冒険者!」――と。
それは、ずっと前にした約束。
忘れることなく、待ってくれていた友人の心からの喜びだった。




