1.我慢の限界。
今日はなにをしようか。
そう思いながら、ボクはギルドへ向かった。
するとちょうど良く、簡単な魔物退治の依頼が貼り出されている。この程度の相手であれば、戦闘系のスキルを持っていなくても、形にはなるはずだ。
もっとも、得られる金銭は雀の涙程度、なのだけれど。
「それでも、食い繋ぐには必要なんだ……!」
ボクはふっと息をついて。
受付にその依頼書を持っていった。
受理されて、正式にクエストに挑むこととなる。
「今日は何もなければいいけど……」
そう思った。
けれど、そういう時に限って目をつけられるのだ。
◆
魔物を規定数討伐した、その帰り道のこと。
「よお、待ってたぜ。ハクノ」
「お前は……!」
街の入り口で、一人の冒険者がボクを待っていた。
彼の名前はアグノン・クレオス。中堅冒険者であり、いつも決まってボクのことをイジメてくる相手だった。
そんな奴が、どうしてボクを待ち受けているのか。
その理由はすぐに分かった。
「いやぁ、今日の稼ぎが意外と少なくてよ。どうやらハクノ、珍しく金になりそうな仕事をしたみたいじゃねぇか」
「…………!」
小銭稼ぎ――いわゆる、カツアゲだ。
ボクの手元にある僅かな金銭を、奪い取る算段なのだろう。
「おっと、逃げようとしても無駄だぜ?」
「え……!?」
とっさに周囲を確認すると、そこにあったのは――。
「今日はオレ様の仲間も、一緒だからなァ!」
もう二人、別の冒険者の姿。
筋骨隆々とした奴と、細身の下卑た表情をした奴。
それでも分かったのは、二人ともボクよりも戦闘経験は豊富ということ。各々に武器を構えて、ジリジリと距離を詰めてきた。
「それじゃ、今日もストレス発散と行きますか」
アグノンがそう言うと、一斉に二人の冒険者が襲い掛かってくる。
なす術はない。一直線に振り下ろされた大柄な男の方の拳は、ボクの顔面を捉えた。数メイル後方に吹き飛ぶと、そこで待ち受けていたのは細身の冒険者。
彼は小型のナイフを持ち、倒れ込んだこちらの腕に突き立てた。
「あぁ……っ!?」
鋭い痛みが、左腕に広がる。
のたうち回っていると、愉快そうに笑いながら細身の冒険者は蹴りを入れてきた。防ぐことはできない。口から胃液のようなものが出ても、攻撃は続く。
そうしていると、首根っこを掴み持ち上げられた。
目の前には大柄な男。
「あ、が――!?」
そいつは何の言葉もなく、ボクを地面に叩きつけた。
顔面から落ちて、鼻の骨が折れる。血がポタポタと落ちた。
「けけけ、二人ともオレ様の出番を残せっての!」
そこへアグノンがやってくる。
彼は倒れ込むボクの前にしゃがみ込み、乱暴に髪を掴み上げた。
そして――。
「おらぁ!!」
渾身の力で、無遠慮に、容赦なく。
ボクの腫れ上がった顔を殴打するのだ。
首を持っていかれるそんな感覚に加えて、脳が揺さぶられる。
「へへ、だいぶスッキリしたぜ」
アグノンはそれで満足したのか、ボクの懐に手を入れた。
そこには魔素の欠片が複数。ギルドで換金できる、冒険者の生活には必要不可欠なものだった。報酬が安価な分、それを売らなければ生活はできない。
しかし、彼らはそんなことに興味はなかった。
ボクの成果を奪い、立ち去ろうとする。
「ホントに、お前は――」
こちらを見下して。
「都合の良い、金づるだよ」
そう言った。
「…………」
その時だった。
ボクの中で、なにかがプツンと切れたのは。
「ま、て……」
「あん?」
震える膝に喝を入れて、ゆっくりとだが立ち上がる。
立ち去ろうとしていた三人は、何事かとこちらを振り返った。
「いい加減に、しろよ……?」
この時、ボクの胸に湧き上がっていたのは怒り。
これ以上ないほどの、憤怒だった。
そして思い出すのは、ニールから言われたあの言葉。
「やられたら、やり返す」
悔しい、悔しい悔しい悔しい――!
歯を食いしばる。
拳を握りしめた。
「あぁ、まだ殴られたいってか! いいぜ――」
アグノンがこちらに駆けてくる。
そして、思い切り拳を――。
「ああ、ああああああああああああああああああああああああ!!」
叫んだ。
ボクは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
すると自然に、自分の拳がアグノンの顎に吸い込まれて……。
「ぶはぁ!?」
信じられない、一撃。
それこそ『今までの鬱積が、すべて詰まったような一撃』だった。
この瞬間から、ボクの人生は一変する。
倒れるアグノンを見下ろしながら、ボクは大きく息を吐きだすのだった。
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