プロローグ 外れスキル――【我慢】
半〇直樹とかは言わないでね?
「おい、ハクノ! いい加減にしろよ!!」
「うが、あ――!?」
鳩尾に蹴りを入れられる。
呼吸ができなかった。その場にうずくまると、相手はケケケと笑って足を振り下ろす。背中に強烈な痛みが走った。骨が軋むような感覚。
それでもボクには何もできなかった。
だって、ボクに授けられたスキルは――。
「へっ、本当にイジメ甲斐のある奴だぜ。与えられた才能が【我慢】することだから、いくら攻撃しても文句はでねぇしな!!」
「あがっ!?」
今度は起き上がり際に、顎目がけて膝を入れられる。
完全に骨が折れた。痛みも、もはや感じないほどのものになっている。
それでも、ボクの唯一の才能は【我慢】することだから。こうやって耐えることしかできないんだ。死にかけても、死なない。
【我慢】とは、つまりそういうスキルだった。
「さて、スッキリしたし帰るとするか」
ボクを痛めつけて、相手は満足したらしい。
今日はこれで終わりだった。
「あぁ――」
狭い路地裏で、仰向けに倒れる。
大の字になって、四角い空に浮かんだ月を見た。
神様はどうしてこんな、なにもできないような才能を授けたのか。
恨むのも変な話だが、ボクは恨まざるを得なかった。
意識が次第に遠退いていく。
それに合わせて、ボクはゆっくりと目を閉じるのだった。
◆
この世界で冒険者になる者には、神様から才能――スキルが与えられる。
【炎魔法】だったり、【癒し手】だったりが一般的だ。中にはユニークスキルといって、世界に一つしかない特殊なものもある。
ボクの【我慢】も、ユニークスキルの一つだった。
もっとも、世間一般的には外れスキル、そう呼ばれていたが。
「大丈夫か、ハクノ?」
「うん。やっと顎の骨もくっついたみたいだ」
ボクは幼馴染のニールに、身体中の傷を癒してもらっていた。
銀の髪に長い耳。エルフの美青年であるニールのスキルは【癒し手】だった。それも潜在的な魔力量が多かったから、街の中でも腕利きの医師として働いている。
ボクとは正反対の、エリートといって良い存在だった。
「それにしても、いくら死にはしないからって限度があるだろ……!」
「ははは。みんな、きっと鬱憤が溜まっているんだよ」
「当事者が笑ってどうするんだよ」
傷だらけのこちらを見た時と同様に、他の冒険者に憤るニール。
切れ長の鋭い蒼の眼差しをボクに向けてきたが、こちらは苦笑いをすることしかできなかった。だってやり返しても、返り討ちに遭うのが目に見えているから。
それでも、幼馴染は大きくため息をついてこう言うのだった。
「あのな、ハクノ。俺との約束、覚えてるだろ?」
「…………うん」
その言葉に、ボクは小さく頷く。
「いつか、二人で冒険者として活躍しよう。パーティーを組んで、王都の一流冒険者にも負けないような、そんな存在になってやろう」
「………………」
「俺はまだ、その約束を反故にしたつもりはないからな」
それは、幼い日に彼と交わした約束だった。
いつの日か共に一流と呼ばれる冒険者となり、王都へと出る。そして、世界中に認められるような存在になってやるんだ、と。
もう、忘れてほしかった。
ボクには荷が重すぎる話になっている。
そう、思ったのだが――。
「ハクノ、いいか?」
ニールはボクの胸をトンと叩いて、こう言った。
「やられたら、やり返せ。悔しいなら、行動に移すんだ」
「…………やられたら、やり返す」
そう言って、彼はその場を後にする。
残されたボクは、ボンヤリと診療所の窓の外を眺めるのだった。
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