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プロローグ 外れスキル――【我慢】

半〇直樹とかは言わないでね?







「おい、ハクノ! いい加減にしろよ!!」

「うが、あ――!?」



 鳩尾に蹴りを入れられる。

 呼吸ができなかった。その場にうずくまると、相手はケケケと笑って足を振り下ろす。背中に強烈な痛みが走った。骨が軋むような感覚。

 それでもボクには何もできなかった。



 だって、ボクに授けられたスキルは――。



「へっ、本当にイジメ甲斐のある奴だぜ。与えられた才能が【我慢】することだから、いくら攻撃しても文句はでねぇしな!!」

「あがっ!?」



 今度は起き上がり際に、顎目がけて膝を入れられる。

 完全に骨が折れた。痛みも、もはや感じないほどのものになっている。

 それでも、ボクの唯一の才能は【我慢】することだから。こうやって耐えることしかできないんだ。死にかけても、死なない。


 【我慢】とは、つまりそういうスキルだった。



「さて、スッキリしたし帰るとするか」



 ボクを痛めつけて、相手は満足したらしい。

 今日はこれで終わりだった。



「あぁ――」



 狭い路地裏で、仰向けに倒れる。

 大の字になって、四角い空に浮かんだ月を見た。



 神様はどうしてこんな、なにもできないような才能を授けたのか。



 恨むのも変な話だが、ボクは恨まざるを得なかった。

 意識が次第に遠退いていく。


 それに合わせて、ボクはゆっくりと目を閉じるのだった。







 この世界で冒険者になる者には、神様から才能――スキルが与えられる。

 【炎魔法】だったり、【癒し手】だったりが一般的だ。中にはユニークスキルといって、世界に一つしかない特殊なものもある。

 ボクの【我慢】も、ユニークスキルの一つだった。


 もっとも、世間一般的には外れスキル、そう呼ばれていたが。



「大丈夫か、ハクノ?」

「うん。やっと顎の骨もくっついたみたいだ」



 ボクは幼馴染のニールに、身体中の傷を癒してもらっていた。

 銀の髪に長い耳。エルフの美青年であるニールのスキルは【癒し手】だった。それも潜在的な魔力量が多かったから、街の中でも腕利きの医師として働いている。



 ボクとは正反対の、エリートといって良い存在だった。



「それにしても、いくら死にはしないからって限度があるだろ……!」

「ははは。みんな、きっと鬱憤が溜まっているんだよ」

「当事者が笑ってどうするんだよ」



 傷だらけのこちらを見た時と同様に、他の冒険者に憤るニール。

 切れ長の鋭い蒼の眼差しをボクに向けてきたが、こちらは苦笑いをすることしかできなかった。だってやり返しても、返り討ちに遭うのが目に見えているから。


 それでも、幼馴染は大きくため息をついてこう言うのだった。



「あのな、ハクノ。俺との約束、覚えてるだろ?」

「…………うん」



 その言葉に、ボクは小さく頷く。



「いつか、二人で冒険者として活躍しよう。パーティーを組んで、王都の一流冒険者にも負けないような、そんな存在になってやろう」

「………………」

「俺はまだ、その約束を反故にしたつもりはないからな」



 それは、幼い日に彼と交わした約束だった。

 いつの日か共に一流と呼ばれる冒険者となり、王都へと出る。そして、世界中に認められるような存在になってやるんだ、と。



 もう、忘れてほしかった。

 ボクには荷が重すぎる話になっている。



 そう、思ったのだが――。



「ハクノ、いいか?」



 ニールはボクの胸をトンと叩いて、こう言った。



「やられたら、やり返せ。悔しいなら、行動に移すんだ」

「…………やられたら、やり返す」





 そう言って、彼はその場を後にする。

 残されたボクは、ボンヤリと診療所の窓の外を眺めるのだった。



 


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― 新着の感想 ―
[一言] 倍返しだぁぁぁぁッ!!(檜山ボイス ……ごめんねw
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