疑い
ウィルビッチェを抜ける頃には夜明けが近づいていた。全員がずっと黙り込んでいる。おおよそ、俺のせいだろうな。もちろん、”名もなき咎人”の俺のことは恨んでるだろうし、まぁ俺がムーン・ミルティアって言ったからかもしんねぇけど。
「おい、ここらで休もうぜ」
俺が言うと全員が少し遅れて頷く。
「”構築” テント 。」
俺が〘言霊〙を使いテントを構築する。
人が8人住んでしまえるほどの豪邸が目の前に現れる。脳内設計ミスったな、、、普通の家みたいになってる。ま、いいか。寝泊まりするだけだし
「何躊躇ってんだ?入るぞ」
誰も入ろうとしなかったから俺が入ってみせるとようやく入ってくれた。
俺、そこまで信用ねぇのかな?
ダイニングに来て重要なことを思い出す。
「さて、と。腹減ったし何か作るか。」
そう言うと全員がギョッとした目で見てくる。
ん?何?俺なんか変なこと言った?
「どーしょっかなー、、そうだ!今日はこれでいいか!」
俺は脳内で料理をイメージし
「”造”料理!」
俺達の目の前にある大きなテーブルに人数分の料理が造形された。というか、何も無い空間から急に料理が現れてカラン、ゴンと机に落ちていると言った方が正しいのかもしれない。
「な、何だこれは、、、見たことが無いぞ」
ウィンラルが口元をヒクヒクさせてその料理を見る。
「ああ、これ?建国前の料理だしお前らは知らねぇよな!食べてみろよ、美味いぞ」
そう言う彼の”建国前”という言葉に全員がゾッとした。
「へ、へぇェ?」
キールがソレを凝視していた。
「俺先に食ってもいい?”いただきます”」
俺先に食ってもいい?の後に何を言ったのか分からなかった。
「ん?今何て言った?い、ッ、ディあきむす?」
キールはもちろん皆がその発音、言語の意味が分からなかった。
「フフ、ごめんごめん。コレ建国前の言語でな。大事だからそっちで言ったんだよ。」
彼はニシシと笑うと食べ始めた。
私たちにとっては得体の知れない物体であるため食べるのに躊躇はしたが腹の虫がなり始め限界だった。
「神の祝福に感謝し頂こう、ルーム」
全員が目を瞑り両手を組み込み十字にした。
10秒経つと全員が食べ始める。そこには見慣れたスプーン、フォークが用意されていたがムーンは日本の細い木の棒で食べている。
「何だ?それは......ムーン」
ストラスがその棒を指さす。
「ああこれ?箸っていうんだ、建国前は俺達はこれで食べてたんだぜ?」
「何を言う.....?.建国前などあるはず無かろう?原始の4人と我らが尊き神がこの世界を、この国を創ったのだから!」
「へーそうですか。でもここにある料理は建国前の物だし、俺だって建国前の人間だよ?」
「ッツそれはお前が原始の4人だからであって」
「......洗脳されてくてあんがとな、これで俺達は救われてるんだ」
「ん?今何と言った?」
しまった、日本語で話したと思ったのに。 エビネの言語で話してしまったのか?
「大丈夫だ、俺たちはお前に聞きたいことが山ほどあるからな、縛りつけろ!死霊使い!」
「分かりました〜ぐふふふふありがとうございます!私を使って頂いて!」
怪しげな男が俺を椅子に縛り付ける。
ん?こいつ死霊使いじゃなかったっけ?
何で俺の事操れてんの?
「解除。おらよっ、と」
俺は死霊使いの能力を解除し天井に張り付くと叫ぶ。
「この場にいる俺以外は能力が消える!」
「おい、、、お前何と言った......?」
ウィンラルが自分の掌を動かしながら俺に聞く。
もちろん、能力は使えない。
「これでお前らに俺は掴まんねぇな」
俺は床に降りて目の前にいる奴等を見た。
「まだ、その時じゃねぇよ。お前らが知るには、早すぎる。。。。。おい!早く寝ろよ!布団用意しとくから!」
俺は逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。
俺は、俺たちはあの後......




