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エビネの結末  作者: 時雨 咲綺
2/7

始まり

真夜中、静まり返る王都。人々はもう眠りについている頃だろう。私は古びた煉瓦造りの病院を歩く。薄く白い布を重ね造られた服。そのサイズは何故か合っており不思議に思ったがひたすら前に進んだ。カツンカツンと靴が床を弾くような音が鼓膜に響いた。私は今では希少種となったエルフだ。人よりも尖った耳の先。肌は陶器のように白く瞳は必ずエメラルドというのがエルフの特徴だった。だが、私はエルフであるはずなのに瞳の色は鮮血のような赤だった。色素を失ったような薄気味悪い髪。そんな私に愛おしいと言ってくれた彼の為に尽くす。私は、奴等に正義を貫く。

彼の望むままに。私は彼の為に生まれてきたんだ。彼女の頭上には赤い月が怪しげに輝いていた。「......不吉ね、こんな日なのに。」

彼女は言った。

「今夜は、奴等を滅ぼすその1歩目を踏み出す大事な日なのに。何故こんなにも不気味な赤い月なのかしら?」

彼女は頭上に輝く赤い月に手を伸ばす。

そして、

「ふふ、これでいいわ。」

拳を固く握った。

彼女の手中に錯覚とは言えど赤い月が握ってあるのだ。

「このまま、なくなっちゃえばいいのに。」

恐ろしいことをボヤく彼女は”女戦士”の称号、唯一の保持者だ。


「おい、何をしてるんだ?アンスリウム、であってるか?」

彼女の目の前には強者である5人が立ち並んでいた。

”聖騎士”の保持者であるウィンラル・ベイカー。

”赤魔道士”の保持者であるストラス・ルテ。

”召喚士”の保持者であるキール・バーム。

”神童”の保持者であるムーン・ミルティア。

”死霊使い”の保持者であるカイ・アルブレム。


国でも名を馳せる実力者が揃っている。

ウィンラルはCP 58800、HP4000。流石は聖騎士といったところか。だがそれは、普通の人から見て、だな。やはり弱い。私が相手をしたら5分でウィンラルを死に追いやる事など簡単だ。

私はこの特別な目の加護で見る者全てのCP、HPを見ることが出来る。

此処に集った者たち〘キルス〙は国でも十数名しかいない”二つ名持ち”だ。それでも、やはり優劣はついてしまうものだ。

ストラスは..CP 87750、HP 8000。中々手練なのだろう、が。私の前では弱いという域を脱することは出来ないだろう。ウィンラルと比べるとやはり強者であることに変わりはないのだが私が、異常者であるためだろう。

キールは、召喚するモンスターによってもCPやHPが前後するようだがこれまでに召喚出来たモンスターのCP最高値は98690、HP最高値は10500だったか。やはりCP最高値を引き上げることが今後の課題だろうか。まだ23歳であるにも関わらずここまでモンスターのCPを引き上げる事に成功したのだ。これはエビネ王国の歴史上初のことであった。それでも、キール自身は弱い。モンスターのCPやHPを上げた状態で召喚するのが召喚士であり本人の強さを重視しないのだ。だからこそ、呆気なく終わってしまうのだ。

次はカイだが......コイツはただの”変態”だ。

死霊を操り戦わせること以外に生存意義を見いだせていない。それほど死霊を愛している?のだろうが。本人の力量は凄まじいものだがそれを使う気が本人にないためまだ警戒しないで大丈夫だろう。さて、問題は彼だ。そう、彼はムーン・ミルティア。アビネが建国した当時からいたと言われる伝説上の人物。殆どの国民が伝説上の人物だと言うだろう。だが、事実は異なり実際にムーン・ミルティアは存在する。彼は17、18の青年に見えるがそれは成長が止まっているためだ。建国当時の古い書物に記載されている内容はムーンが国王つまりは王族と血縁にあるというものだった。この事実は広く知られてはいない。また、彼が神童という二つ名を授かっている理由は彼の圧倒的な強さにある。

彼は全てのことが出来た。完璧だった。

全ての人物になることが出来るのだ。

召喚士、魔道士、錬金術師、聖騎士..etc。

正に神のように。

そして、CP♾️ HP♾️ 。

この私ですらも圧倒される存在がムーン・ミルティア。

「なぁ、ずっと気になってたんだけど、コレだれ?」

そういったウィンラルはリンゴを齧るムーンを指さした。

「そうそう、俺も気になってたんだよ。こんな所に餓鬼が偶然まよいこむなんてねぇ?」

キールが腰に手を当てジロジロとムーンを見る。

「、、、そうです、ね〜。彼は可哀想ですし殺して操ってもいいですか?」

そうキョトンとした顔で言うカイを止めるストラス。

「ダメだ、我慢しろ。おーい、坊。もう夜遅いんだから家に帰んねぇとダメだろ?」

宥めるように言ったストラスに彼は言った。

「へ..?レムに呼ばれて来たんだけどさ、行かなくていいんだったら俺は帰って寝たいんだけど。ふわぁ、テンイ。じゃーなー」

そう言ったムーンは最後にそう呟いて消えた。

「あーーー!!!!何でいつもこうなのかなぁアア?ケイさんは。」

急に後ろから叫び声が聞こえたかと思えば後ろには...!

「王国の若き太陽、我ら〘キルス〙、ここに集k」

「そんなこといいから!誰かケイさんッ!じゃなくて...君達のリーダーを探しに行って!もうっ、何でいつも勝手に帰るのかなぁ!!??」

皆が目を丸くする。ムーンが実在するという事も、先程まで此処にいた青年がリーダーでムーンであることも〘キルス〙ではアンスリウムしか知りえなかったことなのだから。

〘キルス〙は国王直属の部隊だ。

咎人を、止めるため。若き国王を守るため。

〘キルス〙はこれまで5人だった。

が、事実は異なり〘キルス〙にはもう1人メンバー兼リーダーがいる。永遠の17歳で最強、伝説級の人物であるムーン・ミルティアだ。

王国の誰もがその名を幼い頃に聞いたことだろう。伝記になるほどアビネ建国に携わった偉人でもある。

だが、彼自身サボり癖が根強いため殆ど〘キルス〙として行動することは無かった。

そう、ただただ毎日ぐだぐだしていただけである。

「あの..ケイという方がキルスのリーダーなので、し、ょう、、か?会ったことがないと思うので」

「ケイはさっき転移しただろう?あれが書にある言霊だよ」

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