聖女ですが偽聖女に断罪されたのでこの国の神さまである光龍と共に出て行きます。もちろん妖精や精霊達も連れて行くのであとはよろしくお願いします
聖女ですが偽聖女に断罪されたのでこの国の神さまである光龍と共に出て行きます。もちろん妖精や精霊達も連れて行くのであとはよろしくお願いします
私は、一体何の罪を犯したと言うのでしょうか?
はじめまして、ご機嫌よう。私、レティシア・サントと申します。公爵令嬢です。代々長女は聖女になる家系に生まれました。そして私は長女。聖女なのです。その証拠に、普通の人には見えない妖精や精霊達が見えます。もちろん仲良しです。そしてこの国の神さま、光龍アダラール・ディユ様からとっても可愛がっていただいております。
ですが、これは一体なんの冗談でしょう?
「レティシア様!もう嘘をつくのはやめてください!」
「嘘とは?」
「惚けるな、レティシア!お前が偽聖女ということはもうわかっているのだ!」
この学園の卒業パーティーの席で騒いでいるのは、男爵令嬢のマリエル・マントゥール様。そしてこの国の王太子であり、私の婚約者のイディオ・アンベシル様。…ついでに言うとこのお二人、学園生活の中で、私というものがありながら白昼堂々と浮気しておりましたの。この騒ぎに会場の皆様は興味津々のご様子。困りますわ。
「私には聖痕もありますが?」
「それは後から彫った刺青だろう!ルルにこそ本物の聖痕がある!」
「それこそ後から彫った刺青でしょう。第一私の家系は代々聖女が生まれる家系。疑いようもないはずですが?」
…この辺で引いてくれませんかね?アダラール様や妖精、精霊達までもが怒り心頭で今にも暴れ始めそうなのですけれども。
「くどい!ルルには奇跡の力がある!ルルこそが聖女なのだ!」
「それはただの光魔法でしょう。稀少な価値のあるものですが、それと聖女の力とは関係ないはずです」
「そんなことはありません!貴女こそ、居もしない神さまや妖精、精霊が見えるなんて嘘をついて、最低です!」
そう。悲しいことですが、この国では最近妖精や精霊達、挙げ句の果てにはアダラール様の存在までも疑う声が上がっています。魔法と科学が急速に発展した弊害ですわ。…でも、それ。私の後ろで霊体化しているアダラール様には禁句ですわよ。
「…ほう。俺たちが居もしないか。思い上がったな、人間」
アダラール様が霊体化を解き姿を現します。この巨大な学園のパーティー会場にすら収まりきらず、天井を突き破りその巨大で偉大な、神々しいお姿を皆の前に見せるアダラール様。会場の皆様はあまりにも突然の出来事に誰一人として動けず、呆然としています。
「ああ、だが。そうだな、それもいいだろう」
アダラール様はゆったりと告げます。
「居ないと思うなら、それでいい。俺たちはお前らの思惑通り、この国から消えてやるよ。…本物の聖女と一緒にな」
そういうとアダラール様は私を背中にひょいと乗せて、学園のパーティー会場を邪魔だなと言って破壊して、翼を広げて飛び立ちます。
「お前らー、ついてこいよー」
「はーい!」
「わあい!久しぶりのお引越しだー!」
「みんなー、行こう行こう!」
そして妖精や精霊達を伴って、この国とは違い信仰心の篤い隣国の小国を目指します。
…パーティー会場を破壊した際には私が祈りの力で守ったので怪我人はいないはずですが、きっと今頃会場は相当なパニックに包まれているでしょう。…これからは、妖精や精霊、アダラール様の加護を受けられなくなるのですから。
あ、家族に挨拶は要りません。家族とは、ギブアンドテイクな関係性で、あまり仲が良かったわけではないので。
「ついたぞ、シア」
あっという間に隣国についてしまいました。隣国ではアダラール様のお姿を見た王族や神官達が手厚く出迎えてくれました。
「今日からこの国で世話になろうと思う。光龍アダラール・ディユだ。こっちは、聖女で嫁候補のレティシア・サントだ。…いつまでもドラゴンの姿でいると、ここでは狭いな。人間の姿をとるぞ」
人間のお姿をとったアダラール様はとても美しい青年です。かっこよすぎて、いつ見ても慣れないものです。…というか、え?嫁候補?
「これから二人と…あと、お前らには見えないだろうけど妖精や精霊達も世話になる。よろしくな」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します!光龍様!」
「あ、あの、アダラール様、嫁候補って…」
「そのままの意味だぞ。あと、これからはアルと呼べ」
「あ、アル様…」
「それでいい。今回のことで、お前を人間なんかに任せておけないと思ったからな。これからは俺の寵愛を存分に与えてやる」
絶対に落としてやるから覚悟しろよ、とアル様。…もう、メロメロですわ。
追記
その後
我がドラグーン国の隣国であったドラグニカ国は地図上から姿を消して久しい。ドラグニカ国では愚かなことに、偽聖女と王太子が聖女様を断罪しようとし、更には光龍様や妖精、精霊達の存在を否定するような発言をした。これにより光龍様や妖精、精霊達の怒りを買い、ドラグニカ国は守護と加護を失った。そして我が国に光龍様や妖精、精霊達が大移動して来た。我が国は光龍様の守護と加護によって繁栄し、かつての小国とは思えないほどの発展を遂げた。一方守護と加護を失ったドラグニカ国は大地が痩せ、経済は回らなくなり、疫病が流行して、政も上手くいかなくなり、件の偽聖女と王太子は革命軍により斬首され晒し首にされた。他の王族達もまともな最期は迎えなかったという。これらの歴史を鑑みて、これからも我が国では聖女様と光龍様を崇拝するべきであると考える。
加護を失った国に未来はない