始まり&始まり
「なぁ、藍奈。お前、好きな奴いないんだよな?」
「い、いないけど…」
「じゃあさ、好きになれよ、俺の事。」
……あれ、あれ?どうして…
どうしてこんな状況になってるんだっけ!?
――――――――――4月7日――――――――
「うぉぉおぁぁぁ遅刻するぅ!!!」
私、冬野藍奈、只今絶賛遅刻中の高校二年生の17歳!誕生日は9月2日、身長は159センチ、血液型はA型。好きなスポーツはバドミントン!
―キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…
「あぁ間に合わなかったぁぁぁ!!!」
「よし、じゃあ出席取るぞ~。一番、赫里祐馬。」
「はい!」
「二番、飯田桃喜。」
「うぃ。」
「三番…」
―ガラガラガラッ!
「すみません、遅刻しましたぁぁ!!」
「冬野…また遅刻か?もうこれで三回目だろう…まだ第二学年始まったばかりなんだから、ちゃんとしてくれよ?」
「は、はい…」
「まぁ、席に着きなさい。」
柳波先生に言われた通り、席に着く。
「ゴホン、三番、凰司朔舞。」
「へい。」
隣の凰司朔舞くんが、立ち上がり返事をする。朔舞くんは、着席するとこっちを見て、
「藍奈、お前ホントに寝坊、遅刻ばっかりだよなぁ、確か去年も、その前の年も…」
「あぁその話はしないで!」
朔舞くんとは、所謂幼なじみで、中学の時からずっと同じクラスなんだよね。朔舞くんはイケメンで、背も高くて、勉強もできて、人脈も広い…ほぼ完璧なんだけど、ちょっと強引で意地悪なのが玉に瑕なんだよね…
「ゴホン、凰司と冬野、静かにしなさ~い。」
「あ、ごめんなさい!」「サァセンしたっと。」
「はい、七番、真郷海飛」
「ハイッ!」
………………
――――――四時限目、体育・終了時刻―――――
「ヘックシ!あぁ~寒い…」
「まさか4月の始めに着衣水泳やるとはねぇ…」
友達の“染城あすか”ちゃんと、今日の着衣水泳について愚痴っていた。まだ最高気温は23ºくらい、水温なんてもっと低いのに…
「にしても藍奈…また胸大きくなったねぇ…背丈そんなに変わってないけど。」
「余計なお世話です~!」
私たちは、ささっと水着から体操服に着替えた。そして、教室に帰る途中…
「お~い、藍奈!」
「あ、朔舞くん、どうしたの?」
朔舞くんが大きく手を振って、手招きしてる。来いって事かな?
「チェッ、またイチャイチャで~すか?」
「そ、そんなんじゃないよ!」
あすかちゃんがからかってきたので、言い返す。そして、朔舞くんについて行く。
着いたのは…校舎裏?なんでこんな所に…
突然、朔舞くんが振り返って…
「なぁ、藍奈。お前、好きな奴いないんだよな?」
「え?どうしたの、急に…」
朔舞くんが突然そんな事を言い出すから、正直言うと私、放心してる。朔舞くん、こんな事聞いてくるタイプじゃないのに…どうしたんだろう?
「じゃあさ…」
「…なに?」
「好きになれよ…」
「…え!?」
「だから、好きになれよ、俺の事…!」
え、え?え???
「えええええええええ!?」
昼休み前の校舎に、私の驚く声が響いた。