穴名騎士団
「はえ〜、すっげ〜!」
俺は赤い髪の少女"ルイーゼ"に教えてもらったギルドへ入るための広場に来ていた。
そこで俺は、西洋を彷彿させる風景に感動していた。広場には多くの冒険者風の人間、亜人が掲示板の前で騒いでいた。
「なんだこりゃ!?」
騒ぎの原因を探るべく俺もギルド募集掲示板へ向かう。そこにあったのは、ギルド"穴名騎士団"の団員募集の貼り紙だった。たった1枚の貼り紙で騒ぎが起きる理由が分からない俺は、近くにいた厳つい男に尋ねた。
「なあ、おっさん!穴名騎士団ってなんだ?」
「あぁ…あのギルドは団員を募集したことがなかったんだ。穴名騎士団は発足してから少数精鋭を貫きあっという間にギルド最強の一角となり富や名声を欲しいままにしている。団員の多くの素性は知れず、分かるのは圧倒的な実力を持った猛者だということだけだ。そんなギルドが出した入団条件は、A級モンスター"比翼のグリフォン"の討伐だ。もちろん只のグリフォンじゃない。ある特殊な力を持ったグリフォンだ。一端の冒険者にゃそれが何の力なのかは分からないがな…」
「ほう、おもしれぇじゃねぇか!」
「あんた、まさか"比翼のグリフォン"を倒しに行くのか?」
「あったりめえだ!」
見た目に反して状況を丁寧に説明してくれた男に礼をして俺は貼り紙を取ると広場に響き渡るような声で叫んだ。
「俺は"穴名騎士団"に入団するために比翼のグリフォンの討伐に向かう!!!」
そんな俺の叫びを聞いた広場の其処彼処で驚きや呆れの声が聞こえる。
先程の厳つい男が
「兄ちゃん悪いことは言わねぇ。この件からは手を引いた方が賢明だ。俺達の様な実力の無い奴らには自殺行為だ。」
「安心しろ。俺は"最強"だ。腕試しにはちょうどいいだろう。あぁ、最後にちょっといいか?」
「あ...あぁ。」
おっさんは完全に俺に呆れながらも親切に応じてくれた。
「"比翼のグリフォン"はどこにいる?」
「そんなことも知らねぇのか..."比翼のグリフォン"は天山の頂上にいる。この町をずっと北に行ったところにデカい山があるからそこを登るんだ。」
「おっさん!ありがとよ!」
俺は広場を後にし、町を出た。そこには、目を疑うほどの広大な大地が広がっていたのだ。
「わくわくすっぜ〜!」
俺は小型モンスターを追い払いつつ圧倒的スピードですぐさま天山につき、天山を駆け上った。天山を登るたびに竦むような邪悪なオーラが立ち込めていく。
そして、俺は辿り着いた、まさに邪悪の根源とも言える天山の頂上、"比翼のグリフォン"の生息地へと。
そこにはいた。比翼連理の翼を浮かべ、獰猛な眼で俺を睨む化け物が。
手の震えが止まらない...俺は最強なはずなのに___
今すぐにでも逃げ出したい。
おれはなんのためにこんな化け物と戦おうとしているんだ?
そんなことは分からない。ただ分かることはこいつを倒さないと俺が殺されてしまうということだけだ。
俺は手を握りしめ、覚悟を決める。
「比翼のグリフォン!俺の最強をその目に刻め!!!」
止まらない汗、止まらない鼓動、そんなものに抗いつつも化け物に俺は立ち向かうのだった。