笑顔
俺は村上匠、ひょんなことから異世界に来ちまって、自信満々でふっかけてきた女剣士を一撃で吹き飛ばしちまったところだ。
俺はこの世界に来るときに神様に貰った特典"最強"によりこの世界ではズバ抜けた力を持っているようだった。
「あんた、とんでもねぇパワーだな。」
俺と女剣士の闘いを見ていた隣のおっさんが話しかけて来た。
「そりゃ"最強"だからな!」
「確かにあんたのパワーはすごいが、最強はいいすぎじゃないか?あの、世界を救った勇者様や勇者様と互角に渡り合った魔王よりも強いとは思えねぇが。」
「そんな奴らがいるのか。ま、俺が"最強"なんだけどな!」
「おっ、そうだな」
おっさんは呆れた様子で俺の元から去っていった。
それにしても、勇者と魔王か...気になる存在だぜ。
「っ...ぐぬぬぬ」
さっきの女の子が俺を睨みつけながら戻ってきた。
綺麗な服が汚れまみれになっている、これではせっかくの容姿が台無しだぜ。
「おっ!嬢ちゃん戻ってきたか!」
「何よ!勝手に吹き飛ばしといてその態度は!」
「はあ?喧嘩を吹っかけてきたのはそっちだろ?」
「そんなに強いなんて聞いてないわ!」
「言っただろう?俺は"最強"だってさ」
「確かに言ってたけど...あなたいったいなにものなの?剣聖である私をイチコロだなんて...」
また何か聞いたことのないワードが出てきたぞ?
「剣聖ってなんだ...?」
「そんなこともしらないの!?まあいいわ、簡潔に言うと私は世界で10本の指に入るほどの剣士なのよ」
「あの弱さで...?」
「ええ、そうよ!悪かったわね!」
「あぁ...それでよお?さっき聞こうと思ってたことなんだが、俺ここ初めてくるんだけど、食べ物とか寝床とかどうすりゃいいんだ?」
「あんたギルって持ってない?」
「ぎ、ぎる??」
「はあ...あんたほんとに何も知らないのね。これよ、コレ。これを払えば宿屋に泊まれるし、食べ物だって買えるわ。」
少女が取り出した物は金色の硬貨だった。どうやら俺たちの世界で言うお金らしい。
「どこで貰えんだ?」
「まったく...どうやって生きてきたのかしら...。ギルはね、ギルドに入って仕事をこなしたり、物を売ったりしたら貰えるの。」
なるほど...俺たちの世界と同じらしい。
「ギルドはどこにあんだ??」
「あんたさっきから質問しかないわね!?自分で調べなさいよ!自分で!」
「そんな事言われてもわかんねぇしなあ...嬢ちゃんさっき、俺にボコボコにされたくせにそんな上から目線でいいのかい??」
少女は込み上がる怒りをぐっと抑えながら答える。
「ぐぬぬぬ...仕方ないわねぇ...ギルドって言うのは町の中心にある市場に行けば入れるわ、ギルドは沢山あってね、メンバーを募集しているギルドマスターに話しかけて面接に受かれば入れてくれるわよ。でも、ギルドにも色んな種類の仕事があってね。よく考えて入りなさい。」
なるほどギルドというのは俺たちの世界で言う会社みたいなものらしい。
「なるほど!色々ありがとな!じゃあその市場ってとこに行ってくるわ。」
「えぇ...!さようなら、あなたと一生関わらないことを願うわ!」
少女は相変わらず厳しい。去り際に1つ聞こうとしていたことを思い出した。
「あっ...最後にもう1つ質問いいか?」
「えっ...えぇ...いいわよ。」
「嬢ちゃん名前は?」
「名前ね...私の名前はルイーゼ。そっちは?」
「俺の名前はタクミだぜ!よろしくな!」
「ぷぷっ!へんななまえ!」
ルイーゼは微笑んだ。まるで、太陽の如く彼女の笑顔は綺麗だった。そんな笑顔を俺は守ってやりたい、そう思ったのだった。
2話完!!