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黒騎士

作者: 村瀬千理
掲載日:2008/05/25

我が処女作『君に幸あれ』の続編です。

上限の月が夜を怪しく漆黒の夜空を照らす。


窓から差し込む月光で、刹那は目を覚ました。


隣で寝息を立てる愛しい少女の横顔を見つめながら、刹那は安堵感を覚えた。


「まだ、俺でいれたんだな……」






『黒騎士』






彼女に気付かれないようにそっとベッドを抜け出し、洗面所で顔を洗う。


(ヨウ主、コンナニ早ク起キルトハ珍シイジャナイカ?)


鏡の向こうに移る、もう一人の俺が卑しい笑顔を浮かべている。


封じ、消し去ったはずだった、忌々しきもう一つの人格。


あの日、彼女を傷つけたあの男への復讐にあの力を使ったあの日から、奴が再び俺の心に巣食い始めた。





力を使った事に別に後悔などしていない。


一ヶ月前、どしゃぶりの雨の中俺の家を訪ねてきた彼女は、もうボロボロだった。


夕暮れの教室、俺の本から飛び立った彼女は幸せになるはずだった。


なのになのになのに!!!!


あの男はあろうことか彼女を散々いいように使い、用無しと思えば簡単に切り捨てた!


そのせいで傷ついた彼女は俺に救いを求めた。


子供のように泣きじゃくる彼女を抱き締めながら、俺は彼女を傷つけたあの男に復讐する事を誓う。



復讐を決行してから三日、今、あの男はこの世界に存在しない。


(ドウダッタ主?ヒサビサニ力ヲ使ッテ気持チ良カッタダロ?)


奴が嘲けるような笑みを浮かべ、俺に語りかけてくる。


「黙れ…」





(隠スナヨ、俺ニハ分カッテルンダゼ?アノ男ヲ



      何度モ刺シ、捌キ、剥ギ、取リダシ、潰シ、砕キ、燃ヤシタ


 

ソン時ノオ前ノ顔トイッタラモウ、凄イ楽シソウダッタゼ)






「黙れって言ってんだろ!!!」




気が付けば鏡を叩き割っていた、拳からは微量の血が流れてきている。


「……刹那?」


眠っていたはずの彼女がすぐ後ろまで来ていた、さっきの鏡が割れた音で目を覚ましたのだろう。


「起こしてゴメンな。まだ遅いし、寝てたほうが――!?」


刹那の言葉が終わらぬうちに、理奈は飛びつくように刹那に体を預けた。


混乱する刹那をよそに、理奈は刹那の体をぎゅっと抱き締める。



「勝手に、いなくならないでよ。刹那がいなくちゃ、もう私………」



絶え間無く流れ出る涙と嗚咽で、後は言葉になっていなかった。


そんな彼女を見て、刹那は深い自責の念に駆られた。


彼女を守ると、彼女にもう二度と悲しませないと、己に誓ったはずなのに、俺は何をしている!?


自分の事で精一杯で、弱りきっている彼女を一時でも忘れていた。


こんな自分が憎くてしょうがない、脆弱な自分を殺してしまいたい。


だけど、こんな自分を彼女は求めてくれている。


ならば―――


震える彼女を思いっきり抱き締める、雪のように消えてしまいそうなその体を、ここで繋ぎとめるように。


「大丈夫。側にいる、絶対離れないから――」


たとえこの体が朽ち果てようとも、例えこの心が闇に飲まれようとも、君だけは守り続ける。


いまだ拳から流れ出る血を使い、彼は世界と契約した。





そうして、一つのゲッシュのもとに一人の騎士が生まれた。


彼の名は黒騎士、仕えるは最愛の恋人。


愛する女の為ならば世界すらも脅かす、最強の騎士。




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