プロローグ
辺りは一面の青の世界。上を見上げれば飲み込まれそうなくらい大きく真っ白な月と、七色に輝く蝶達が星のように舞っている。そして下を見回せば、緑の森がどこまでも広がり、その中心にはこの高く大きな白い城と、それを囲むように白い建物ばかりの街並みが見える。
「いつ見ても変わらず綺麗な景色ねぇ…」
黄金色に輝く長い髪と、蒼いドレスの裾をそよ風に揺らしながら、景色を一望できる城のバルコニーで1人呟く少女。そしてコツコツと足音を鳴らしながら「そうだな…」と優しく微笑みながら、少女と同じ黄金色の髪と、左耳にある満月の形をした蒼いピアスを揺らしながらこの城の主である青年が隣に並ぶ。
「そろそろ中に戻るぞ、ルナ。また明日見に来ればいいだろぅ。」
ルナと呼ばれた少女は「そうね。カイト」と言いながら青年の腕に自分の腕を絡ませ、城の中へと2人で入って行った。
ーこの2人がいる美しい世界。ここは『月の国』。昼も夜も無く変わらない景色を映し出す。そして地球上のすべての人々に、夜の暗闇を照らす光、心の闇を払う光として、何千年もの間欠けることなくこの国を守ってきた。ー
……しかしそんな美しい世界は突然闇へと支配されていくことになる……