8話 商業ギルドなんですが…
さて、次話で主人公も強くなってもらいます
それから俺はグラスがついてこいというので、後ろに下がりグラスの後を歩く。
「グラス!元気か?」
「グラスさん!寄ってかないかい?」
「あ!おじちゃんだー!飴ちょうだい!」
グラスが通りかかれば、通行人全員が挨拶をしていく。こんな極悪人みたいな面構えをしているにもかかわらず、みんなフレンドリーだ…
俺はグラスが近寄ってきた少年少女たちに飴玉を配っているうちにそっと後ろにいた男に聞いてみる
「グラスさんって何者なんですか?…」
「は?…グラスさんは商業ギルドのギルマスに決まってんだろう」
「す、すいません」
軽く男に睨まれたな…それにしてもあの顔で商業ギルドのギルマスか…テューガとは全くタイプが違うな…てか、見た目的にはテューガが商業ギルドで、グラスが冒険者ギルドの方が合っているような気がするんだが
それからもグラスは声をかけてくる人全員丁寧に返事をしている。なんか、見た目じゃないんだな…ただ、見た目は怖いけど…
どんどん奥に進むにつれ、店が多くなってくる。店…いや工場といった方がいいか。木を切る音や、鉄を削る甲高い音、異臭を放つ独特の店など様々だ、俺は田舎者が初めて東京に来たかのように辺りをキョロきょろとする。
徐々に城壁が見えてきて人際は大きな建物が見えた。どうやらあれが商業ギルドなのだろう。冒険者ギルドより新しくはないが、大きくシンプルに見えてかなりこだわりを感じる建物だった。その建物にグラスたちが入っていくので、俺も続いて中に入る。中は冒険者ギルドと同じように掲示板がありカウンターがある。違うのは、中にいるのが皆武装していないのと、受付嬢の数か?お、制服もこっちの方が可愛いな。バーバリアンドレスに似た制服だな。
「おい!お前、こっちだ。こい」
受付嬢に夢中になっていると声をかけられたようなので振り向くと、グラスが俺に手招きをしていたので駆けつける。グラスはそのままカウンターを超え奥にあった扉に入っていく。商業ギルドは廊下はないようで、カウンターの奥の壁にそのまま扉が付いている。
「まあ、かけろ。」
グラスが指差すソファーに腰掛ける。冒険者ギルドのソファーよりふかふかでかなり驚いた。しかも手触りがいい…高級家具店にあってもおかしくはないレベルだろう。
俺が触っていることにグラスが気づいたようで、にやけた面で俺の向かいのソファーに座る。
「いいだろう? その椅子。山羊の子供の毛のみを使ったんだ。」
「すごいふかふかです。」
「ふっ…売らねーけどな。さて、どうして俺を尋ねるように言われたんだ?」
「はい。テューガさんはこれを見て、属性がなんとかとか言ってました」
ソファを褒められてにやけた顔を一瞬で元に戻し、俺に聞いてくる。空気が変わるのがわかるほど、はっきりした人だな…
俺は腰に差した草刈り鎌を取り出し、持ち手をグラスに向けて手渡す。グラスは目を細めながら、そっと俺から鎌を受け取ると真剣に睨むように鎌を見つめる。
「こいつはスゲェ…あいつは物を見る目はないが…ここにお前を連れてきたのは褒めてやる」
「どういうことですか?」
「俺の鑑定だと、この武器はランク10だ。俺は生まれて初めて見たぜ…ドワーフの夢だ」
「ランク?…鑑定ですか?」
「ランクも知らねーのか?」
「すいません。記憶が一部なくなっていまして、教えていただけると助かります」
「そうか…アイテムにはランクってのがあってな。何も付与されていない、且つ魔力を使わず純粋に作り上げたアイテムは1〜10までのランクがつけられている。そんで、魔力で能力が付与されてると11〜100までのランクがつけられる。ランクが高ければ高いほど良品ってことだ。ランク10以降はどれだけ強い能力がついているかで判断される。これは付与魔法でどうとなる。強いスキルを付与すれば、高ランクになるからな。だが、レベル11以下はズルが効かない。つまり職人の腕が出るってことだ。レベル10の武器に能力を付与すればどれだけ高ランクになるか、想像もつかねぇ。それと、これは鑑定ってスキルで見ることができる。まあ、鑑定なんてほとんどのやつは持ってないがな」
「そうなんですか。スキルとは行動なんですよね?」
「そうなんですかって…もう少し驚けよ。それと、スキルが行動?まあ、確かにスキルのレベルを上げるには積み重ねだが、スキルは職種で決まるじゃねーか」
興奮しているグラスは、俺の冷めた反応が気に入らなかったのか若干拗ねているように思える。まあ、強面が鎌を見つめながらブツブツ言っていれば怖い…
「職種ですか?」
「職種ってのは15歳で教会にみんな行って、選ぶ。自分に向いてる職種が頭の中に浮かんでくるからその中から選ぶんだ。そうやって決めた職種に沿ったスキルしか手に入らない。覚えてなさそうだな」
「ええ。そうだったんですか」
「お前も職種を見たらどうだ?『ステータスオープン』って言ってみろ」
「『ステータスオープン』」
すると何かが体から抜ける感覚がする代わりに、レベルが上がった時に表示できたステータスがあられた。こうやって開くのか…覚えておこう
「名前の下に職種って欄があるだろう?」
『
名前 ボルト
年 27
レベル 57
筋力 650
知力 590
魔力 400
運 2000
☆スキル
・鎌術 lv3
・金槌術 lv1
・虚言 lv1
・殺傷探求 lv2
☆特殊スキル
・備品召喚発注
・電気魔法
」
ないな…名前の下って言ってたよな?
「ないですね」
「ない?お前、もしや教会に行ってないのか?」
「たぶんそうなるのでは?」
「そうか…まあ、今日にでも行ってみろ。まあ、職種がもしも『付与士』だったら『付与魔法』を教えてやるよ。んで、これはどうするんだ?付与するか?」
「いえ、もし教会に行った時『付与士』だったら、自分で付与したいので。そうだ!これに付与をお願いできますか?」
俺は腰から金槌を取り出し、グラスに手渡す。先ほどゴブリンを撲殺した金槌だ。ちゃんとゴブリンの血は拭ってある。グラスはまた睨むように金槌を受け取る。
「こいつもレベル10だ」
「お願いできますか?」
「ああ。わかった。付与はする内容だが、俺が決めてもいいか?」
「ええ。お願いします。時間的にはすぐ終わるようなものですか?」
「いや、時間でいうと三時間は欲しいな。その間に教会にでも行ってきたらどうだ?」
「教会ですか。わかりました。どこにあるんですか?」
「ギルドを出て右に行けば嫌でもわかる。」
「わかりました、行ってみます」
「終わったら、寄ってくれ。以上だ」
「では、お願いしますね」
俺はグラスに頭を下げると鎌を腰に差し直すと、そのまま席を立つ。一度も金槌から目を離さなかったし、なんか適当に話された気がするな…まあ、職人ってこんなものか。
俺が部屋の扉を開けようとした時、グラスから声をかけられた。
「おい、忘れもんだぞ…お!これセールじゃねーか!一個くれないか?」
「全部差し上げますよ。どうぞ」
俺はそういうとそのまま部屋を後にした。セールは食う気にはないからな…拳銃は未だポケットに入れてある。
さあ、教会に行きますか!