7話 勤めていた会社の備品?なんですが…
それから馬車の中では会話が一切なく無言の重い空気だ…
門からギルドまではそこまで遠くはないはずなのだが、ものすごく長く感じた
「ついたな。さあ、降りてくれ」
受付嬢が馬車の扉を開け、降りていく。ギルド前にいた人間は野次馬のように集まっている。顔を隠すようにギルドの中に急ぐ。ギルドの中でも、一斉に視線が集まる。
「ボルトくんは私についてきてくれ。ベレッカ、彼のギルドカードを預かりなさい」
受付嬢は嫌そうな表情を浮かべながら手を差し出してくる。俺はポケットに入れたギルドカードを渡すとすぐにカウンターに走って行った。
それを確認するとテューガが先に進むので続いていく。カウンターを超え、奥にあった扉に入っていく。多くの部屋があり、その一番奥の突き当たりの部屋に入っていく。
部屋の中はとてもシンプルで机と椅子、来客用のソファーが置いてあるくらいだ。
「まあ、かけてくれ。」
「失礼します」
俺はソファーに腰掛ける。この世界に来て一番座りごこちがいいかもしれないな…
テューガは俺と向かい形で座る。
「話し方が変わったと思うが、こっちが素だから気にしないでくれ。さあ、こちらがギルドカードが届くまで、少し話をしよう。君はどんな武器を使うんだ?」
「今はこいつです」
俺は腰から鎌を取り出し、机の上に置く。テューガは、目を大きく開き鎌を見つめ驚いている。イケメン顔が残念なことになってるぞ
「触っても?」
「ええ、刃は鋭いので気をつけてください」
テューガはそっと俺の鎌を持つと、顔を近づけたり触ったりしている。
「これをどこで?…」
「それは言えません。」
「そうか…素晴らしいな…属性もないのに、ここまで鋭いか…」
「属性?」
「知らないか?そうだな…よし!人を紹介してやろう。『鉄の婿』と呼ばれる男だ…名前はグラス。ちょうど門と真反対にいる。行ってみてくれ」
コンコン
扉がノックされ、受付嬢が入ってくる。その手には銀色に光るカードだ。受付嬢はそっと俺の前に来ると、カードと小さな皮袋を手渡してくる
「ありがとうございます」
「これでギルドカードはいいな。A以上になるとカードの色が銀になる。皮袋には王金貨50が入っている。後日、金が用意できたらこちらから呼び出すから応じてくれ」
「わかりました」
「以上だ。」
「では失礼しますね」
俺はすぐにソファーから立ち上がると、スタスタと扉から出て行く。こんなところに長くは居たくはない
スタスタと廊下を抜け、カウンターに戻ると多くの冒険者が俺を見てきた。俺は下を向きながらギルドを後にする。
それにしても金貨か…王金貨ってどれくらいの価値なんだ?
△
そうだな…街を少し見て歩くか。おそらく金に余裕ができたので、ゆっくりと街を見て歩く。どうやら植生などあまり地球と変わっていないのか、多くのフルーツや野菜などが売っていた。そういえば召喚の画面って誰かに見られてるのか?…試してみるか
「すいません、このマンゴーっていくらですか?」
「マンゴー?…なんだいそれは?」
「あ、えーと…その黄色の果物です…」
「ああ!セールね!4つで銅貨だよ」
「えーと…すいません…銀貨で」
「はいよ!」
俺は銀貨をおばさんに手渡すと、銅のコインを9枚を受け取った。おばさんはマンゴーを5つ袋に入れてくれた。袋は麻布の袋だ。手触りが悪い…
「おまけしといたよ!また、よってね!」
「はい、ありがとうございました」
買う気は無かったが、まあいいか。しかし、一切画面に目を向けることがなかったな…見えてないみたいだな。
さて、さっき紹介してもらったグラスという人物の元に向かうか。しかし、何をしている人なんだ?…なんかよく説明されなかったが。
門から真反対と言われたので、門から続く大きな通りを発注の画面を見ながら歩いていく。
そういえば発注画面なのだが、種類別に分けられている。例えば食料ならば、骨付き肉のロゴをタップすれば出てくる。その中に、骸骨のロゴがある。今まで怖くて見なかったが、今日はタップしてみる。
しかし、よく話からわからない…商品の名前だと思うが英語表記だ…それに数字とローマ字の組み合わせ。草刈り鎌を出した時は、『手持ち草刈り鎌』と書いてあったので想像ができた…うーん怖いが一回どんなものか発注してみるか…なんだ?…
『備品発注召喚』
どのサイズかわからないので、一応重さがかかってもいいように構えておく。ガチャっ…
結構な重量感がある。手のひらには銀色の見た目のすごい存在感の拳銃だった…
「え?…いや、待て待て待て待て待て待て待て待て…は?」
え?…こんな備品…備品!?いや、どう見ても備品じゃないだろう…こんなもん備えておく会社がどこにある!?いや、会社の持ってる工場…んな、わけあるか!あーわかった。これ偽物だ。だろ?だよな?ものすごく重いけど!偽物だよね!?どっかの社長か何かが趣味でやってるんだろ…
「ははは…どうせ偽物…」
発注画面を全て消し、拳銃を胸に抱え人気のない路地に入り込む。何もしていないのに身体中からいやな汗が吹き出る。
「はぁはぁ…」
どうせこの世界の人間だったら銃なんて見てもわからないと思うが…しかし…俺は元日本人だ…捕まるんじゃないかと思ってしまう…それにしてもこんなもの誰が発注してたんだ?…まあ、いい
人気の多い道はやはり戻る気になれないので、路地から目的地に向かう。息を荒げて全身に汗をかいている俺は側から見ればかなり怪しいだろう…
とにかく今は宿に戻ろう…宿でゆっくり休むんだ。気持ちのせいかどんどん早歩きになり、いつの間にか走っっていた。適当なところで大通りに戻ろうと角を曲がると、何かにぶつかった。
「いってぇ…」
「てめーどこ見て歩いてんだ!?」
顔を上げてみると、そこには柄の悪そうな男たちが俺を睨んでいた。そしてぶつかったの男が…どう見てもボスだろう…オールバックに鋭い眼光…黒いコートから全貌は見えないが黒い蛇の刺青が見える。いやはや、これは非常にやばいパターン?…ギルドで絡まれるのは異世界転移ってのはこの俺でも知ってるけど…このテンプレは違う気がする…
「おい!テメェ…ぶつかって謝りもしねーのか!ああ?」
「おい。やめろ…怪我はなかったか?」
ぶつかった男の後ろにいた奴がガンをつけてくるが、すぐに男が止めてくる。男はそっと俺に手を貸してくる。
「怪我はなかったか?…今後は曲がるときは歩け。」
「いいんですか?グラスさん!けじめをつけないとなめられますよ?」
「ウルセェ。俺には俺のやり方がある」
男は低い声で呟くような小さな声だったにもかかわらず、後ろにいた男まで聞こえているようだ。その声は低く、声に色を感じた。真っ黒な声だ…後ろにいた男たちは皆顔が真っ青だ。
それにしても今、グラスさんって言ったか?…まさか…この人が?
「あの…すいませんでした…それと失礼ですが…あなたがグラスさんですか?」
「ああ。俺がグラスだが…どうした?」
「は、はい。ギルドで会ってみろと勧められまして」
「ギルドってことはテューガだろう。あいつが紹介するってことは相当なんだろう…ついてこい」
「は、はい」
銃とか出てきますが、知識はありませんので…大雑把にしか出てきませんので…悪しからず…