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3話 出会ったパーティで街まで行くことになりましたが…

サブタイトルは変更します。

それからボルトは男に馬車まで連れて行かれた。すぐ後ろを歩く様子から何かあったらすぐ斬れる距離なんだろう。馬車に近づくと他の三人はボルトの姿が視界に入ったようで、警戒し剣を構えるがすぐに男が割って入る。


「剣を下ろせ。こいつは転移陣に巻き込まれたかもしれない。街まで連れて行き、犯罪者かどうか調べる」


「転移陣ですか?まだいるのか…そんなやつ。おっさんも災難だったな〜」


馬車の前方で警戒していた男が答える。高身長に筋肉質な体格に彫りの深さで勝手に同年代ぐらいに思っていたが、声の高さと話し方から若さを感じる。


「それは災難でしたね…ってザック、初対面の人におっさんって失礼よ!」


「だって、どう見てもおっさんだろ?おっさん、名前は?」


「あー俺はボルトだよ、一応27歳だからおっさんっていう歳では…」


「いや、おっさんじゃん!俺たち15だぜ?十分おっさんだって!」


「いい加減にしな!この子が失礼なこと言ってすいません…。私はサーです。このバカはザックって言います!」


軽口を叩く少年がザックで、それを注意しているのがサーという少女ということだ。二人の掛け合いを見ていると付き合う前のカップルのようで少しイラッとした気持ちになるが、それを『顔に出さないのが大人』だと自分を言いくるめながら微笑みを絶やさないボルトであった。


「私は、メルディーナです。」

「名乗るのが遅れたな。俺は冒険者ギルド教育部のハッシュだ。」


ボルトを先に見つけた男がハッシュという名で、その隣にいる美しい女性がメルディーナだ。この二人は見た目だが幼いようには見えないのでボルトより同じか少し上くらいの年齢だろう。


「俺も名乗るのを忘れていましたね。ボルトです。商売をしていたら気がついたら森に立っていて、あてもなく歩いていたら街道に出れて馬車を見つけたのですが、怖くて声をかけることができなくて……」


「そりゃ仕方ないって!ハッシュさんの顔面じゃ一般人じゃ怖くて震えあがっちまうって!」


「悪かったな。顔が怖くて。お前は俺からの評価がいらないらしいな?」


「い、いや!そうじゃなくて〜もぉ!冗談っすよ〜」


「ったく、お前ってやつは…はぁ…。まあいい。それで、ボルトは何を扱っている商人なんだ?」


ザックの軽口のおかげでボルトの会話が流れそうになったが、ハッシュは鋭い視線になりボルトに問いてくる。会話で悪い人間という雰囲気はないがまだ怪しんでいるのは理解できた。


(どう見ても怪しんでるよな…ここは何か出しておくべきか…)


「見てもらえばわかりやすいですよね。僕が取引していたのは、こういうものです」


「これは?…」


「これは『ゴム手袋』と言います。水を通さず、衛生的で…伸縮性に優れているのでほとんどの方の手にフィットすると思います」


取り出したのは厚手タイプの使い捨てゴム手袋だ。これはトイレ掃除用の備品だったな…結構減りが早いから少し多めに発注していたのを思い出す。なぜ発注したかというとテントを片付ける際手が汚れるのが気になったので三双入りの手袋を発注していた。


「具体的にはどうやって使うものなんだ?」


「えー…これは手が汚れる作業で多く使いますね。汚れたら捨てればいいんですから」


ボルトがそう言うと、ハッシュが驚いたような声を上げる。結構声でかかったな


「捨てるのか!?もったいないだろう…安いものではないようだ。感触からいってゴームスの皮…いや、ここまで伸縮性はなかったはずだぞ」


安いものではないって言われても三双で数百円だし高いものではないと思うが、ここでの価値観が違うのだろうと判断し勝手に納得する。ここはメリットをあげてデメリットがそうでもないと思わせるべきだろう。


「ですが、直に手を触れないという利点がありますよね?」


「そうか!わかったぜ!スライムの魔核取り用だ!」


「そうか…スライムの魔核は酸があり手が荒れるしな…それに、意外と使いどころがあるかもしれん」


「売れますかね?」


「売れるっすよ!まあ、馬車がないということは品も少ないから商売は難しいっすかね…この手袋は売れると思うから、ボルトさんに投資してくれる人を探して、資金援助してもらい国に帰ってからこっちに戻ってくるってのはどうっすか?ターベスの街じゃ聞いたことないし、物珍しさに援助してくれるほともいるっしょ!」


「なるほど…そうですね。そうします」


(なんだかんだで、優しいな。これで信じてくれたかはわからないが…まあ、警戒は解いてくれたんじゃないかな。

そうだ。エルフの老婆の言っていたことを確認しておこう)


「今から行く街に、ギルドはありますか?」


「ギルド?あるに決まっているだろう。」


「そ、そうですよね…ははは」


そういえばハッシュもギルドの所属と言っていたし、街にない訳がないか。それからハッシュ達と一緒にターベスというポーションで有名な町に行くことになった。ちなみにポーションで有名というのはザック情報だ。こちらが話を振らなくても喋り続けるので情報が引き出しやすい。

ちなみに緑色をした子供のような怪物などの襲来はなく、のんびりと進んで行く。だんだんと森を抜け、開けた田園風景が広がってきた。よく見ると腰までの高さのネギに似た植物が植えられている。


「この植物は?」


「これは蜜草っす。この花の蜜には空気中の魔力を貯める性質があって、魔力の回復のポーションの材料なんす!」


「ホホォ…これが…ふむふむ」


意味がわからないが、一応知っているような口調で植物を見る。

まじまじとネギを見ていると、もぞもぞとネギが動きその間から真っ赤な目に一本のツノを生やした兎が飛び出してきた。モキュモキュと口を動かす姿はとても可愛らしかったが、どうも様子がおかしく口元から上半身にかけて真っ似合わない赤な液体で汚れている。


「なんだ?こいつ」


「ば、バカ!離れろ!」


ハッシュの叫び声が聞こえると同時に兎は頭を下げ、ボルトに向かってツノを向けると後ろ足で地面を蹴り上げ飛びかかってくる。驚いたがそれまでで、ツノをかわしながら飛びかかってきた兎のツノを掴むとゆっくりとハッシュの元に歩いていく。


「危ないところでした。こういう動物は多いんですか?」


「お、お前…角兎を片手で」


ツノを持たれた兎は必死に手足をバタバタとさせ抵抗するが、長いツノを持っているので暴れても脅威ではない。逆に可愛いくらいだ。


「こいつはツノを切って逃がしましょうか?」


「何を言ってるんだ!角兎は繁殖力が高いから見つけたら駆除だ。それに金になる」


「なら、持って行きましょう。どうやって持っていくのがベストですか?やはり殺しますか?」


「角兎は、その角が心臓のようなもので角が折れると死んでしまう。死ぬと味が落ちるから、なるべくそのままでいこう」


ハッシュと話していると、ボルトの一連の捕獲劇を見ていたザックが飛びついてきそうなほどの勢いで話しかけてくる。


「ぼ、ボルトさんすげ!角兎を角を掴んで捕まえるとか!飛びかかってくるまで一瞬で目で追うことも難しいのに完璧に動き読んでその上角を掴み上げるなんてやばいっすよ!」


「すごいどころじゃないよ!ボルトさん引退された冒険者か何かですか?」


「いや、冒険者なんてやったことないよ。たまたまさ」


「そういえば商人ってことはギルドは商人ギルドに登録してるんすよね?」


「あー、ギルドには登録していないんだよね」


単純に返したつもりが、傍にいたハッシュからものすごい怒気が伝わってきた。


「貴様、ギルドに登録せずに商いをしていたというのか?」


「い、いや…個人商売だったので…お店とかありませんし」


ギルドについて何も知らないせいで、うまくごまかすことができなかった。あまりの怒気に怒られるかと思ったがハッシュは大きなため息をつき注意してきただけだった


「しかし、それでも商売は商売だ。街に着いたらすぐにギルドに登録するように」


「だったら、ついでに冒険者ギルドにも登録したらどうです?」


「名案だ!サー!ボルトさん!俺たちと少しの間だけパーティ組みませんか!」


サーとザックがボルトをキラキラとした瞳で見つめる。


「さ、さすがに…厳しいかな…」


「そうですよね…商人さんですもんね…」


「おい、喋ってないで先に進むぞ。すでに街は見えている」


「「はーい」」



2023.02.01 手直し

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