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2話 スキルを手に入れましたが…

『ステータスを表示しますか』


「っ!?…あ、悪い悪い。」


無機質で女性にも男性にも聞こえる声だ。それより突然頭に響くような声に驚き、びっくとなったせいで精霊が肩から落っこちそうになりボルトの髪の毛を掴んで宙ぶらりんになっているので、そっと掌で支えながら肩に乗せ直す。

っと、声を無視するわけにもいかずとりあえず答えてみる。


「あー、お願いします?」


すると、目の前に半透明な板が現れた。宙に浮いているし視線を逸らしても視界の中央に自動的に動いてくるようだ。板には何やら日本語ではない文字と、数字が書かれているがなぜか読むことができる。


名前 ボルト

年  27

レベル 56 up!

筋力  630 up!

知力  570 up!

魔力  200 up!

運   1000 up!


特殊スキル

備品召喚発注

電気魔法


ーーーーーーーーーーーーーー

☆基本情報

名前  ボルト

年齢  27歳

種族  未確認

職業 未設定

レベル 56up!

☆ステータス

攻撃 630

防御 320

知力 570

魔力 0

運気 1000

☆スキル

・備品召喚発注

・庶務

☆称号

・創造神の使徒

・異世界の雑用係

・幼精霊の契約者

ーーーーーーーーーーーーーー


ステータスと言っていたが、RPGのゲームのような画面で苦笑いが出てしまう。ボルトも異世界転生系の読み物は人並みに読んでいたが、ここまでテンプレのような流れを実際に目にすると笑うしかなかった。


「な、なあ、さっきの声の主さんやい。スキルってなんですか?」


『スキルとは特殊能力のことです』


まさか返事が返ってくるとは思わなかったが、どうやら会話はできるようだ。できるだけここで情報を集めるべきだろうとボルトは立て続けに質問をする。


「なるほど。使い方とかは、教えてくれるか?」


『スキル名を頭に思い浮かべてください』


(頭に思い浮かべる。うーん……『備品召喚発注』)


ボルトは言われた通り頭に思い浮かべると、ステータスの板の隣にもう一つ半透明な板が現れる。大きなアイコンが並んでおり手で触れてみると、文字の羅列に変わるので目を凝らしてみる。


「備品だな… ってこれ全部あの会社の備品じゃんか!」


俺が転生する前に働いていた大手企業の備品発注のカタログと同じ内容だった。オフィス用品や工具などで分かれているようでボルトには馴染みがあった。それもボルトの居た庶務課は人数自体少ないが会社全体の雑用を受け持っていたので、発注を担当したことがあり備品については知っていた。まあ、見たことないものもありドクロマークのアイコンなど明らかにおかしいのでそこは放置する。オフィス用品の欄を見てみるとコピー用紙からコピー機のインク、コピー機まである。


「これはどうやって買うんだ?」


『選択すれば、現れます。料金等は、転生者の必要経費として転生させた神に請求が行きます。』


どうやら制限時間がすぎてしまったのかそれ以降、無機質な声は聞こえなくなってしまった。色々と質問というか聞きたいことが多いのに、なぜここまで対応が悪いのかもう一度神に会うことができたらクレームを入れようと心の中で誓いながら先ほどの情報を整理しながら備品発注の画面を眺める。


(俺がここで買い物をすればその分神様が払ってくれるのか。なら、遠慮はしなくていいな。とりあえず腹が減ったので飯を食うとして……おお!すげぇ多いな!)


大企業だったので、幹部たちの休憩用のお菓子や、高級そうなお茶菓子もあるが主食がない。っと諦めていたが、防災用の備品の中に防災食があった。カレーやら親子丼やらで、火やお湯がなくても食べれるやつだ。ネットショッピングの感覚でどんどんと買っていく。しばらくすると大きめのダンボールがどこからか現れた。



「うまいな。意外といけるぞ。食べるか?」


肩にいる精霊に聞くと大きく頷くので、箸で親子丼の鶏肉をつまんで口元に持って行く。すると、小さな口で鶏肉を頬張る。美味しかったようで、目を見開いて肩の上で踊っている。精霊は表情が豊かだし表現がよく踊るが精霊はみんな踊りが好きなのか?と精霊に対し疑問を思いながら、ボルトは踊りを見ながら親子丼を再び食べ始める。

しばらく休んだおかげで、体力が回復したのでスキルのもう一つ。庶務を使ってみよう。


「(庶務!)」


だが、多少体が軽くなったような感じがするが、それ以外は何も起きない。なんだか何かしら使い所があるようなスキルだろうし、いつかわかるだろうと思考をスキルから切り替え今度は陽号について考える。




「称号か…『創造神の使徒』ってのは転生させた神が創造神だったってことだし、『異世界の雑用係』って庶務課だったからか?まあ、雑用っちゃ雑用だけどよ…てか、幼精霊と契約ってお前のことか?」


肩の上で鶏肉を頬張っている精霊に尋ねるが首をかしげる精霊。どうやらわかっていないようだ


「まあ、いいか…。お、まさか異世界でも吸えるとは!!」


ボルトは備品発注召喚を使ってタバコとジッポ型のオイルライターを召喚する。慣れた手つきで包装を外し口に加え火つける。転生前に使っていたライターは100円均一の使い捨てライターだったが、備品発注にジッポがあったのでお金もかからないなら良い物が欲しくなりジッポにした。


「スゥーー……っふぅ…」


肺いっぱいに煙を吸い込みゆっくりと吐き出す。ふと横をみると精霊がキラキラとした目で手に持っているジッポを見つめるので精霊に見せるように、カチンと蓋を開け火をつけると、精霊は余計目をキラキラと輝かせながらライターの火を見ている。もう少し近づけてみようとすると、突然肩にいた精霊がオイルライターの炎に吸い込まれたと思うと燃え上がっていた服の炎が消えた。ライターの炎も同じように消えているので、急いでライターの火をつけると、そこにはライターの上で激しく踊る精霊の姿があった。さっきまでは、ゆったりとしていた踊りだったが、ライターの上では腰をくねらせながらノリノリで踊っている。サングラスでもかけたら面白いかもしれないな。

どうやら、ライターに移ったようで、蓋をしても再び火をつければよびだせるようだ。一回ライターを閉じ、服を脱ぐ。精霊がいなくなったおかげで、炎は消えたが穴だらけの事務服では風邪を引いてしまうだろう。

適当に備品の中を漁っていると、無地のTシャツなどがあった。これはうちの会社にはない備品だったが、発注してわかった。これは会社が運営しているホテルの備品だ。大手なこともあって多くの事業に手を出しているようだ。

今となっちゃあ、好都合だ。ズボンと、Tシャツ、それに安全靴を発注する。


「便利なもんだな…さて、やりたくはないが…」


服を着替え終わると、象によって吹き飛んできた人間の元に近づく。見つけられたのは三人だった。どれもすでに死んでいた。首と腰の骨が折れ、肋骨が外に飛び出しているものが一人。もう一人、象の鼻の一撃にあったのか、頭部がひしゃげ、見たこともない色の液体が真っ赤な血液と混じって独特の臭いが鼻をさす。最後の一人…吹き飛んだ勢いが強かったのか顔から首、胸にかけて地面を引きずったようで皮が剥がれ肉がえぐられている。数メートルにわたって血の軌跡ができている。どれも男で、比較的若い。

普通なら、あまりの酷い死に方で目を反らすと思うが、ボルト自身驚くほど素直に受け入れていた。ボルトは男たちの体を漁り、持っているものを集めた。ポーチ3つと短剣が1つ、杖が二つ。短剣はかなり鋭く、まさに生物を殺すための道具だと思えた。杖に関してはよく分からないので、放置。

最後にポーチの中に手を入れてみた。深さがそれほどないので、あまり入っていないのだろうと思ったが手を入れると、終わりがなく、肩まで入った。どうやら、見た目以上にものが入るようだ。手にあったったものを適当に取り出していく。数種類のコインと、白く立派なツノ…数種類の試験管に入った液体だけだった。


「これはなんだ?…まあ、このポーチは使えるな…いただこう。」


大きめのポーチに杖、コイン、脱いだ服を入れ、もう一つのポーチに食べたもののゴミを入れておいた。ライターはポケットに入れ、短剣は護身用として腰に。

男たちは見た目から兵士?のようだ。三つ足のワシと蛇を使った紋章のようなものが装備に描かれていた。

埋めてやろうとも思ったが、こいつらにしてやる義理はない。それに穴を掘る道具もないので仕方ないだろう。


「さて…そろそろ眠いな」


あたりは月明かりが照らしているのでそこまで暗く感じないがそれでも真夜中だ。警戒なく、寝るというのはさすがに厳しいだろう。象のような化け物がいつ出てくるか分からない。しかし…眠い。

ボルトはポケットからジッポを取り出すと、火の精霊を呼び出す。精霊はすやすやと眠っていた。

精霊を起こさぬよう、そっと近くにあったエルフの残した松明に火をつける。数本に火をつけ、地面に刺しておく。野生動物って確か、火が怖いという素人知識だ。炎に囲まれながらテントを発注、すぐに組み立てて横になった。やはり地面が硬いせいか、寝心地は悪かったが疲れていることもあってすぐに眠った。



目をさますと、やはりテントの中だった。夢である可能性も考えていたが仕方ない。

ゆっくりと体を起こし伸びをすると、眠気が冷めていく。テントから出ると周囲の確認をする。すでに松明は燃え尽きていたが、獣が近くを通った痕跡はなかった。エルフも戻ってくることはなさそうだ。

少し残念に思いながら切り替え、非常用の飲料水とホテルの歯ブラシセットで歯を磨き、朝食をとる。ボルト自身転生前からあまり朝食をとらないので、チョコバーを二つ食べて終わった。ちなみに、火の精霊はチョコレートがえらい気に入ったようで、食べた瞬間大きめの火柱が立ってびっくりした。


「さて!今日の目標は人里まで行くことだ!まあ、突然襲われるということもないだろう。」


身支度を済ませたボルトは適当に進み始める。兵士たちが地図でも持っていたらよかったのだが仕方ない。

のんびり歩いていると、若干だが整備されているような道に出れた。自動車がギリギリすれ違える程度の道幅なだけだ。しかし、木々がないので森を歩くより見晴らしもいいのでマシだ。

のんびりと鼻歌を歌いながら進んで行く。気ままな旅だ。



(そういえば神様は「世直しをしろ」といってきたが…世直しとはどういうことだ?エルフの老婆は「魔王を倒せ」と言っていた。テンプレ通り魔王を倒せば世直しなのか?それに人間が人間を制御できなてないとも言っていた。人間の中でも戦争とかあるのか?まあ、考えたところでどっちみち情報が足りなさすぎか。あのエルフの老婆の忠告は守るべきだろう…悪意とか感じなかったし。ギルドか…)


「ん?…何かくるな…」


後ろから何やら、カタカタという音が聞こえて来る。今までなら聞こえないほど小さな音だが、今だとかなりしっかりと聞き取れ、大体の距離もわかる。体の変化に驚くこともなく自然と受け入れられるのは転生に慣れたということだろう。

とりあえずボルトは道を外れ手頃な木に登りやってくる何かを待つ。悪い奴らだと面倒だしとりあえず様子を見ようと考えたからだ。しばらく待つと、軽自動車ほどの大きさの馬車が視界に入った。引いているの真っ白な馬だ。その馬車の前後に四人の人影が見える。先の兵士ほどではないが、急所に防具をつけており腰や手には武器がある。


「いや〜長かったぜ。あと少しで、ターベスの街か!」


「そうだね。ここら辺にもエルフがいるそうだ。ったく、国王軍だけだよ。エルフを追放しようとしてるのは……」


「エルフは結構いいやつが多いんだがな。まあ、頭が硬いから仕方ない部分もある」


「おい、あまり喋るな。どこで、誰が聞いてるかわからないのだぞ」


「へーい」


馬車の前方で警備していた男女が、後ろにいた男に注意をされる。短い会話だった、かなり有益な情報が手に入った。もう少しでターベスの街につくらしい。そして、エルフは国王軍に追放されようとしているか。悪そうな人間には見えないがわからないので、少し後をつけて、街まで着いていくことにする。

そっと木から降りると、馬車が視認できるギリギリぐらいの距離を保ちながら街道沿いの森を進む。すると、後ろにいた先ほど注意をした男が突然ボルトのいる茂みを見つめはじめた。すると、隣にいたローブを着た女性が声をかける。


「どうかしたの?敵?」


「気配を感じたのだが……まあ、いい」


「そう」


再び二人は馬車の後方に着くと、警戒しながら歩いていく。少し距離を置いてから、馬車を追いかける。すると、突然馬車が停まる。ボルトは様子を見に少し近づく。すると、そこには緑色の肌をした醜い顔の子供がいた。その数は3人。手には木の棒を持ち、今にも飛びかかってこようとする。


「おい!ゴブリンだ!やっちまうぞ!」


「ゴブリンだと!?くそ、後ろに注意しすぎたか。まあ、いいだろう。」


「よっしゃ!」


前方にいた男が腰に差していた剣を抜くと、ゴブリンと呼ばれた醜い子供に向ける。あれはあの象と同じ類か。

男は一気にゴブリンに駆け寄ると、そのまま袈裟懸け。その間にもう1匹のゴブリンが木の棒で攻撃しようとするが、男の回し蹴りが顔面にクリーンヒットし、そのまま半回転し倒れる。最後の一匹は、前にいた女性の拳で倒れた。

あんな隙だらけな攻撃なのに、倒せるということはそれほど強くないだろうと判断し、すぐに再び馬車の後ろに向かう。


「おい、さっきから隠れている奴!でてこい!」


先ほどボルトの存在に感づいていた男が声をこちらを見ながら声を出す。ここは出て行くべきか悩むな


「おい!早くしろ! メル!ザックとサーを呼べ!早くしろ!」


「あ、ああ。ザック!サー!こっちに!」


男は剣を構えながら、ボルトのいる茂みに近づいてくる。同じく後ろにいた女は、前方にいた二人を呼ぶ。

明らかに警戒されてしまっている。これなら最初から話しかければよかったと後悔する。


「こ、こんにちは」


「誰だ!貴様!名告れ!」


男は剣を向けながら、叫ぶ。近くだからそんな大きな声出さなくてもわかるって


「俺は怪しいもんじゃない……しょ、商人なんだ!」


「嘘をつけ!なら、なぜ後をつけてきた!」


「つけたのは謝る!俺はまず、ここがどこだが分からないんだ。気が付いたらここにいた!訳も分からないまま、こんなところに放り出された。」


「まさか、何かの転移に巻き込まれたか?…いや、そんな報告ギルドには上がっていないぞ。しかし、転移事件は前触れもなく起こる。しかし、信じるのも……」


「信じなくてもいい。俺はお前らに危害を加えるつもりはない。ただ、街まで行ければいい!」


「貴様、出身はどこだ」


「えーと…グンマと言ってもわからないだろう…」


「グンマだと?聞いたことはないな。まあ、いい。馬車に乗せるわけにはいかないが一緒についてこい。街に行けば犯罪者かどうかわかるか」


「そうか!助かる!」



2023.01.31 手直し

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