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1話 転生したその日に戦闘ですか…

最近読んでいるのが、異世界で現代のネットショッピング的なものが多くて…触発されてかいて見ました



神様が遊びで作った世界がありました。あくまで遊びだったので、神は早々に飽きてしまい何億年も放置をしていました。ある日神様が年末の大掃除をしているとその世界が物置から出てきました。放置していた世界は荒れていました。神様はこれはまずいと思い、とある世界から一人、神の力を与えて世直しをさせよう…


そして選ばれた男……




「ボルトくん!そこの蛍光灯も切れてるから交換してくれるかな?」


「あ、はい!今行きます」


公立高校進学、公立大学卒業。犯罪歴もない。経歴的には何の問題もない男だが、とある問題で面接に落ち続け就職ができずアルバイトで食いつないでる。その問題とは両親に最初にプレゼントされる名前だ。彼の名前は


『宍戸 ボルト』


親が陸上好きで世界で最も早い男の名前を息子につけた。そのせいで、就職活動で企業に面接に行っても名前を笑われ、「こういう名前はちょっと……」「うちの会社にあってないかな」と意味のわからない理由で落ち続けてきた。そして現在27歳のボルトはなんとか誰もが知っている大手企業の、最近では珍しい庶務課で働いている。仕事内容は主に、オフィスの清掃や備品交換などだ。

現在ボルトは蛍光灯の定期点検の最中だ。自分より年下の社員の指差す照明を見ると、確かに片方だけ光っていない。ボルトは慣れた手つきで担いでいた脚立を地面に立たせ、新しい蛍光灯を担ぎながらスタスタと登っていく。


「おいおい、気をつけてくれよ?でかい脚立なんだから」


「あ、はい。」


通常なら蛍光灯を片手に持ちながら脚立を登るなら早く登れるようなものではないが、ボルトからしてみれば何度もやってきたことなので慣れている上に早く終わらせたい気持ちがあった。

脚立を登りきった後はゆっくりとまたがり、切れた蛍光灯を取り外そうと力を込める。


「固っ!なんだよこれ……うわっ!」


無理に力を込めたせいで重心がズレ脚立が揺れる。ボルトはバランスを崩し、脚立から地面に落ちてしまった。慣れていた行為に、油断が生まれたのだろう


「あっ……!うぐ……あ、いたたた」


肩から落ちたため、それほど危ないわけではないと思うが、ボルトはなぜか貫くような胸の痛みでその場で動けなくなっている。


「あ、危ないっ!」


女性と思われる叫び声が聞こえた。すると、落ちたボルトに追い討ちをかけるようにグラグラと揺れていた脚立が倒れてくる。突然のことで理解できず、かわすことができずせまり来る脚立をただ見つめていた。脚立は後頭部に直撃し…そこからは覚えていない。


享年 27歳 宍戸 ボルト


眩しい光が俺を起こしてくる。ゆっくりと、目を開け、体を起こすとそこは真っ白な雲の上だった。地面?いや、雲なのだが、柔らかいことはなく大理石のように硬く冷たい。こんこんと雲を叩いていると、突然背後から声をかけられた。足音どころか気配すら感じなかった。


「やあ、君はボルトくんだね?」


「は、はい…ここは?」


「ここは天界じゃ。まあ、天国の上の神の住む領域だと思ってくれれば良い。」


声の下方に振り向くと、そこには真っ白なヒゲを生やした老人が立っていた。見た目からは相当歳をとっているように見えるが、その肉体は健在のようで服の上からでも、鍛えられた肉体がわかる。


「そう、褒めるでない。お主には頼みがあってな、ここに呼びつけた。」


え?褒めた?……どういうことだ?


「心が読めるだけじゃ。そう深く突っ込んでも君には理解できぬじゃろ。神の力だとでも思っておれ」


「は、はぁ……それであなたは?神の住む領域と言っていましたが」


「名乗るのを忘れていたが、薄々理解しておるじゃろ?わしは神じゃ。名は特にない。」


「そうですか。それで、その神様が俺に何のようですか?」


「少し不機嫌のように思うが……まあいい。お主には世直しのために生き返ってもらう。」


「世直し?ですか?」


「世の中は悪が蔓延っておる。お主も理解しておったろう?たまたま、お主の人生にはそこまで大きな悪はなかったようだが。」


確かにニュースなどでは強盗・殺人などの犯罪が多かった。それに俺の人生で犯罪に巻き込まれたことは一度もないな……どこか他人事のように思っていたな……


「俺に何をしろというんですか?強くないですし、格闘技とかやってませんよ?」


「まあ、そこは仕方あるまい。ワシもそこまで鬼ではない。頼んでおるのはワシじゃしな。少し贈り物をしよう。やってくれるな?」


「やりません。とは、言えないんでしょう?」


「ははは。わかっているでないか。では、送るぞ」


待て待て!世直しって言っていたよな!?いきなり外国に飛ばされても言葉が通じるか不安だしな!


「その前に!なるべく日本に転生してください。世直しっても、日本の方が安心できるんで!」


「何を言っておる?お主が転生する世界に日本はないぞ?」


「は?」


神はニヤリと笑い俺を見てくる。分かっていてわざと黙っていたのが丸わかりだ。こいつ……性格悪いな。ってそれより!


「それって……まさか!い、異世界転生!?」


「時間じゃ。では、頼むぞ」


老人は満面の笑みで俺を見てきた。『したり顔』ってやつだ。その顔から楽しんでいるのがわかった。



(ああ!今までずーと我慢してきてこれか!だったら、次こそ自由に我慢せず生きてやる!)


眠るように意識が遠のく中ボルトは心に誓うと同時に、目の前が真っ白になった。



「っん…ここは…」


自称神が言っていたが、俺はどこかに転生したようだ。あたりを見渡すと、雲の上ではなくどこかの森の中のようだ。富士の樹海のように見渡すかぎり木々が生い茂っている。とりあえず体に何か痛みや変化がないか確認していき深く息を吸い込む。


(ん?目線が高く感じるな…てか、空気が美味しく感じるな…って、なんじゃこりゃ!!!」


視線が高くなっているが、前世でも180センチであったボルトが視線が高く感じるのでおそらく2mくらいになっているだろう。そして前世とは大違いの筋肉質な身体になっている。体を動かしてみると自由にスムーズに動かすことができ自分でありながら自分でない感覚になる。


(こ、これが転生か……なんかあっよ言うまでろくに頭が回らなかったな……生きていけるのか不安なんだが…)


一通り驚き終わり落ち着き始めたところで、現在の状況を考え始める。太めの木々…いや巨木が生い茂るせいか枝にっ生える葉が陽の光を遮りボルトのいる地面は光がさざす暗くなりジメジメとする。そして本能がここに留まるのが一番危険だと警鐘を鳴らすので早々に移動することにした。

しばらく歩いていると、金色に輝く体に赤く気色の悪い面をしたデカイ鹿や全身から怪しく動く触手を生やした猪などと出会ったが見つかる前に、先に俺が見つけられたので迂回していく。そして同時に、見たこともない巨大生物を目にしたことで、ここが異世界だと理解できた。


「はぁはぁ…はぁ…」


隠れたり逃げたりしていたせいか、さすがに疲れてきた。飲まず食わずな上にこの理解できない森の中を彷徨いながら歩いたせいでかなり消耗していたようだ。


「お?…これなら…」


あたりを見渡すと、手頃なコップのような形の草が生えていた。中を見ると、綺麗な水が入っていたのでそっと手につかみ、口にしようとすると、突然持っていた草が吹き飛んだ。吹き飛んだことで草の中に入っていた水がこぼれ、近くにあった大木に水がかかると、ジュワーと音を立てて溶けていった。何が起こったか分からず戸惑っていると、どこからか声が響く。


「死にたいのか?人間」


「だ、誰ですか!誰かいるのですか!」


必死に声が聞こえた方に、向かって叫ぶ。久しぶりの人の声に、嬉しくなりながら助けてくれるかもしれないと思い声に縋る様に叫ぶ。すると、巨大な木がザサっと揺れ、何かが落ちてきた。よく見ると、人間のようだ。すると一瞬で数人がボルトを取り囲む。全身を黒い布で作られた服を纏っている。見えるのは切れ長で深緑色をした綺麗な目元のみだ。


「何しに来た。」


「お、俺にもわからない。気がついたらここにいた!」


「そうか……連れてくぞ。」


口元が隠されているので誰が喋っているかわからないが、目の前にいた人物が首を縦にふると後ろから強い衝撃を受け一瞬で意識が飛んだ。



目をさますと、目の前に真っ赤な炎があった。すでに夜になっており炎が辺りを暖かく照らしていた。キャンプファイヤーのように櫓が組まれており、その櫓の炎の中には真っ赤な扇子を片手に、これまた真っ赤な羽織を靡かせ楽しそうに舞い踊る少女がいた。

その炎を囲むように白い肌に尖った耳、金髪の人間が楽しそうに喋ったり踊ったり食事をしていた。どういう状況か理解できず混乱していると自分の手足が縛られ、檻に入っていることに気づいた。


「おや、目が覚めたようかの?」


声のする方を見ると、そこにはを踊っている連中と同じように色白で耳が尖っている老婆だった。老婆は俺の目を透き通った緑色の目で見る。あまりの綺麗な目に、俺は目をそらすことが来なかった。

数分見つめ合うと、老婆はふっと吹き出し目を櫓に向ける。


「その黒髪といい、あんたはこの世界の人間じゃないであろう?。魔力に似た力を感じる…勇者ではないねぇ。おそらく転生かのぉ?」


「ああ……」


「混乱しておるじゃろ。この世界は『ブック』。私等はエルフの一族じゃ。いますぐお主を人間の住む領域に送りたいが、そうも行かぬ。勘弁じゃ」


悲しそうにな表情を浮かべた老婆っは俺から炎に視線を逸らす。その表情から本当に申し訳なさそうに感じる。


「何故?…ですか」


「それは私等は今人間に追われているからじゃ。ここも明日までに発つ」


「え?どういうことですか!?」


「人間にとって私等は邪魔な存在ということじゃろう。人間が人間を制御出来ておらんのに。この世界のことを考えれば手を取り合わねばならんというのに…。私等にとっちゃ人間は魔族と同じようなもんじゃがな」


「す、すいません」


「ははは!人間が謝るか!この世界の人間でもないお主が、同じ種族というだけで頭を下げるか!実に面白い!しかし、謝っても、お主を許しても意味はない。この世界が平和になる頃には人間以外の種族は皆奴隷か殺されるだろう。とにかく、人間の住む領域にいったら国に仕えるのではなくギルドに仕えるのじゃ。さすれば、他の種族を理解できるじゃろう」


「そ、それは……ん?」


老婆に理由を聞こうとすると、視界に入った櫓の中にいた少女が気になった。見ると、さっきまで楽しそうに笑顔で踊っていたにもかかわらず今は必死な形相で何かを伝えようと身振り手振りでエルフに話しかけている。しかし少女の動きに合わせて炎が揺らぎ、それをエルフたちは喜んでおり聞こえていない様に見える。チグハグとした状況にボルトは戸惑い老婆に尋ねる。


「あ、あの櫓にいる少女は誰ですか?……何か必死に話しかけているようですけど」


「……っ!お主今何といった!」


「え?ど、どうしました?」


「火の精霊が見えるのか!」


「あ、ええ?精霊なんですか?」


「必死じゃと?……おい、マーベラ!松明に櫓の火を移してもってくるのじゃ!」


突然、老婆が大きな声を出すと踊っていた女性のエルフの一人が驚いたような表情になりながら、少し遠くに刺さっていた松明を持って火をつけようとするが躊躇する。


「ば、婆様…ほ、本当によろしいので?そ、その精霊様が……」


「おい、人間!精霊様はどうなさっている!」


ボルトはそっと炎を見ると、両手を振り松明にジャンプしようとしている光景だった。


「松明に飛び移ろうとしてますよ?」


「キャッ!」


突然風が吹き出し炎が強くなる。すると、エルフの持っていた松明に風によって飛び散った火の粉が引火し松明が激しく燃え出す。激しく燃える松明と反対に精霊がいなくなった櫓の炎は消え、灰色の煙が立ちのぼっている


「急ぎ、こちらに持ってくるのじゃ!」


エルフは急いで松明を持って老婆に近づく。その頃には何があったと、周囲にいたエルフが松明に視線がいく。

老婆はエルフから松明を受け取ると、ボルトのいる檻の中に松明を突き刺した。松明には小さくなったが、先ほどと同じ少女がいる。少女と目があう。


「こいつが精霊なんですか?」


「声は聞こえぬか?」


「聞こえないですね…」


松明の炎にいいた少女はボルトが姿を見えているのが理解できたのか必死に何かを喋っている。ん?


『に・げ・て』


「にげて?」


口パクから言葉を予想してみると、うんうんと首を縦にふる。あっていたみたいだ。少女は必死な表情で続ける。


『ぬ・し・を・お・こ・ら・せ・た』


「ぬしをおこらせた?」


うんうん!


『に・ん・げ・ん・が』


「にんげんが?」


うんうん!


『こ・こ・に・に・げ・て・く・る』


「ここににげてくる?」


ん?…「にげて、ぬしをおこらせたにんげんがここに逃げてくる…」『逃げて、主を怒らせた人間がここに逃げてくる?』

精霊は炎にへたり込むと、震えながら必死に後ろを指差し、ボルトを見つめる。


「えーと、ここに『主を怒らせた人間が逃げてくる』らしいです」


ボルトが老婆の方を向くとすでに老婆は目を合わせない。目を見開き驚いた表情で固まっている。あたりを見渡すと、他のエルフも老婆と同じような表情で固まっている。しかし、すぐに老婆がかわしい表情になり大きな声で指示を出す。


「い、急ぐのじゃ!荷物を持て!早くするのじゃ!」


固まっていたエルフたちは老婆のその一言で覚醒し一気に、蜘蛛の子を散らしたかのように去っていく。

何にビビってるんだ?


「って、俺を出せ!」


ボルトの叫びは老婆の耳には届かない。細かく老婆が指示を出しており、荷物をまとめたエルフから次々と移動していく。ボルトは、必死に後ろで結ばれた紐を解こうともがくが緩むことはない

手首が擦り切れ痛くなてきたので、諦める。すると、一瞬精霊と目があった。先ほどの一件で言葉は理解できているとわかった。


「なあ、精霊さん!俺の手を縛る紐を焼き切ってくれるか?」


『ん?』


何か考えるように手を顎に乗せている。ボルトはもがきながら起き上がり縛られている紐を炎に近づける。すると、ようやく理解できたのか精霊は手を縛る紐に触れる。すると一瞬で紐が燃え始めた。意外なことに熱くはなかった。解放された手で、すぐに足の紐も解く。そして、精霊に笑顔を向ける


「ありがとな」


精霊は頭をかきながら、照れている。さすがに火の精なので全身真っ赤で顔色がわからないが、おそらく顔を赤くし照れているだろう。手足を縛る紐が切れても絶賛、檻の中だ。ピンチというのは変わらない。

手足を自由にしているころ、すでに檻の外にいたエルフの姿は無くなっている。残っているものはいない。あの老婆にはいろいろ聞きたかったが、仕方がない。『勇者』や『魔力とは違う力』など意味深な言葉を残されて放置されては困る。それに『森の主』というのも気になる。

が、今はそれどころでっはない。檻は木製で木を組んでいできている簡単な作りのようだが、一応檻ということで、かなり頑丈にできており鍵もないので壊す以外に出れるようにはできていないようだ。縛っている紐もかなり強く結ばれている。


「そうだ、精霊……なら、もやせ…


バキバキィ……バンっ_ドッシーン……


精霊が指差してい方向から爆音と共に、木々が吹き飛んでくる。そして同時に数人だが武装した人間も吹き飛んできた。

そしてすぐ後ろから巨大な二つのツノを生えた象が飛び出してくる。どうも怒っているようで目は真っ赤に染まり荒く息をする鼻をブンブンと振り回している。前世で見た象とだいぶ違う。いや、全く違う!まず大きさがおかしい!


「パァオォォオオオオン!」


怒りのせいか手当たり次第暴れているように見える。鼻を振り回しながら、進む象はそのまま櫓を木っ端微塵に吹き飛ばしながらこちらにやってくる。


「精霊!この檻を燃やしてくれ!頼む!」


精霊は大きく頷くと、一瞬で檻に炎が燃え移りパチパチと音を立てて檻が燃えていく。ボルトは燃えている方から一気に転がり檻から出る。象は暴れながら、ボルトが出てきた檻に向かってくる。あそこにはまだ精霊がいるんだぞ!

象はまだ燃えている檻を叩き壊す。檻は燃えていたのもあって粉々に壊れる。細かく散らばる破片に燃えていた部分が風で消えてしまいそうだ。

精霊は松明に乗り移ったことを考えると、燃えているものでないとダメなのだろう。つまり、燃え尽きたら死んでしまうのでは?

そう考える前に、すでに体が動いていた。自ら象の近くに向燃え尽きそうな檻の破片に駆けつける。

ボルトの存在に象も気づいたようですぐに大きな鼻を振り下ろしてくる。救う方法なんて思いつきしかない…今から燃えやすいものに火を移すには、時間がない。そんなことをすれば消えてしまう。ならどうするか…

ボルトは象の鼻をなんとかかわし、燃えている木々の破片にダイブする。


「こい!!精霊ぃ!燃え移れぇえええ!!」


「バアァアアオオオォォォオオン!」


象はダイブした背中に鼻の振り下ろしをしてくるが、なんとかすぐに転がりかわす。間に合わなかったか?…それともダイブで消しちまったか?…くそ…

そう思っていると、胸のあたりが温かくなったと感じると、服が一気に燃え上がった。肩のあたりで、嬉しそうに揺れている精霊の姿があった。どうやら間に合ったようだ…


「はぁはぁ…よかった、間に合ったか…」


ボルトはすぐに立ち上がり肩で息をしながら精霊に笑いかける。ボルトの服装は転生したときと全く同じ。着ているのはポリエステル製の事務服だ。ポリエステルは燃えやすいなら精霊も乗り移りやすいだろうし、声が通じるなら声で指示を出せば理解しやすいだろうと思ったがうまくいったようだ。

象はかわされたことに驚いたのか、ターゲットをボルトに決めたのか突進してくる。象の巨体と鼻の攻撃範囲を考えると何度もかわすのは厳しいだろうが、立ち止まってただやられるわけにはいかない。走りながら転げ回りながら攻撃を交わしていくと、肩にいた精霊と視線が合う。精霊の視線がすぐに外れ象に向けれる。


「パォォン!パォォォオオン!」


突然象が鳴きながら暴れ始めたので距離をとりながら様子をみると、数個の炎でできた球体が象の顔に何個も当たり爆音が響く。その光景に驚きながら、肩にいる精霊を見ると満面の笑みで足をばたつかせる精霊の姿があった。


「お前なのか?…そうか!ありがとな!助かるぜ!だが、あんまり聞いてないみたいだな…ちっ…どうすっか…」


ボルトの声に精霊は一瞬何かを考える表情になると、すぐにボルトの頬にそっと触れる。すると、体から何か抜けていく感覚に襲われる。不快なわけではなく逆に暖かくなるような感じがする。時間で言うと数秒経過したくらいだろう。精霊は頬から手を離すと肩から飛び降りる。その瞬間、服を燃やしていた炎が消え目の前にボルトの腰ぐらいの大きさになった精霊の少女が立っていた。象はすぐにこちらに向かってくる。


「パォォオオン!!!」


「お、おい!危ねぇって!」


精霊はボルトにニコリと笑うと、そっと小さな手を空に伸ばす。すると掌から炎が噴き出てくる。精霊は掌を像に向けた瞬間、火炎放射より大きな炎が轟音と共に象の顔面を包み込む。その炎は徐々に象を包み込むように広がっていく。象は必死に暴れるが炎のどんどんと広がり火だるまになったころには、象は力なく倒れ込んだ。


『憎い憎い憎い憎い憎い…あの娘め…あああああ』


倒れ込んだ象から声が聞こえる。言葉と理解できるがその声は聞いたことがないほど低く、猛烈な憎悪を感じる。おそらく声の主はこの象なのだろう。その目からも怒りが伝わってくる。


『っ…?』


精霊は倒れ込んだ象の顔にひょこひょこ近づき、そっと撫でる。象はそっと驚いたように目を見開くがすぐに大きなっ瞳を閉じた。香ばしい匂いが広がり完全に象は倒れた。それと同時に目を開けられないほどの突風が吹くと、すぐにボルトの服が燃え上がり肩に小さくなった精霊が座っていた。


「ははは、お前って強いんだなぁ!マジで助かったぁ!」


助かった事に強張っていた体から力がぬけ、その場で倒れるようにしゃがみ込み肩にいる精霊に感謝する。精霊はクネクネしながら照れているのがわかる。しばらく様子を見ていると突然頭の中に機械的な声が流れる。それと同時に頭にファンファーレが鳴り響く


『クイーンズ魔樹海の森の西主人 「秩序と魔力の守護者 エレファウスト」の討伐を確認。


功績者…「火属性精霊 フレア」…精霊のためボーナスが無効。


功績者…「転生者 ボルト」…ボーナス取得可能。』


『レベルが上がりました。ステータスが変化しました。表示しますか?』


 

2023.01.30 手直し

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