襲撃後
「助かったよ!改めて礼を言わせてくれ!俺は冒険者のルーカスという。名前を聞かせてくれないか?」
あれからルーカス、オリオン、エリックは強賊のカミーユを取り押さえ、縛り上げた。
一段落ついたのだろう所で、ルーカスが話しかけてきたのだ。
俺はその光景を遠くから座って見ていた。
いやなんていうか、周囲がかなり血生臭い事になってるし、異世界に来て、いきなりの戦闘で今になって怖くなったんだ。
異世界に来た影響か、アドレナリンみたいなのが出てるし、テンションも高かったってのもあるんだろう。
それが、冷めてみれば冷静にもなる。
よくあんな状況で飛び出せたと、自分でも思う。
よく頑張ったと自分を誉めてやりたい。
それはいいとして、いい加減この状況をなんとかしたい。
盗賊の遺体が10以上に、ルーカスの仲間と思われる。数人の遺体が散らばっているのだ。
兎に角、話し合いたい。
「おお。どういたしましてだ。俺の名前は……」
あっ。やべっ。
まだ名前を決めてなかったわ。
折角、ルーカスが陽気に話しかけてくれたのに、テンポのよくない事だ。
しかし流石に一生はないと思うし、どうするべきか。
全員の名前を見たが、全員海外の名前だったように思う。
空気が読めるのが日本人だ。
ここは、はぐらかした方がいいかもしれない。
「……そうか。訳ありって事でいいのかな?それならそれで問題ないよ。あの女盗賊だが、押さえてくれと言っていたから縛り上げておいたよ?」
顔がイケメンなのにも関わらず、性格までイケメンらしい。
てかルーカス!なんて空気の読める子なんでしょ。
それより、あのねぇーちゃんを生け捕りにしていたのは、俺が頼んだ事になっているのか。
なんで殺さずに縛り上げてたのか、わからなかったが、「押さえてくれ」=「生け捕りにしてくれ」となったわけか。
俺としては、戦いたくないから、そっちは宜しく的な感じに言ったつもりだったが……
二次職の強族と対等に渡り合えるわけないし、そもそも今回は奇襲とスキル押しでいけば勝てるからなんて理由は、ちょっと今更いえない。
まー成り行きに任せるしかないか……
「そうか。ありがとう。それで、そちらも何人かやられたみたいだし、色々手伝おうか?」
手の震えや足の震えはようやく治まって、不自然ではないぐらいは回復したと思う。
この殺伐とした風景にも一応慣れてきているのだろう。
俺はゲームの中にいるし、相手は盗賊だったから、深く考えず行動したわけだが、初めての殺人をしたという事実は変わらない。
何かしていないと変な事を考えそうだから、何かしていたいと思う。
それに、適応能力が低いと言われればそれまでだが、本当にどう動くべきかよくわからない。
ビィーも帰ってしまったわけだし、街までは同行してほしい。
すぐまた盗賊に襲われるなんて事はないだろうが、ないなんてのはいいきれんし。
「本当かい?それは本当に助かるよ。うちはパーティーの遺体をどうにかするから、君は盗賊の戦利品で良い物があれば、集めてくれると助かるよ」
仲間の死を思い出したのか、辛そうな顔をしている。
日本なら親しい相手が死んだら号泣ものだ。
職業上、気持ちを押し殺しているのかもしれないな。
しかし、なぜ俺は彼等を助けたのだろう。
クエストが発生したとはいえ、かなり危険な事をした。
完全に成り行きにではあるから、見て見ぬふりも出来たはずだ。
自分の事ながら答えは出ない。
その辺りもおいおい気持ちの整理が必要のようだ。
「戦利品というと、使えそうな武器と防具、それと貴金属や金ぐらいでいいか?」
「それで大丈夫だ。あっ。そうだ。その前にうちの雇い主と冒険者仲間を紹介させてもらってもいいかい?」
あーそういえば荷車の裏に気配があったな。
雇い主とは荷車にいた人達で間違いないだろう。
冒険者の仲間は魔法使いのオリオンと冒険者のエリックだろうか。
____________________
紹介された雇い主とは商人のようだった。
名前はトルネさんというらしい。
トルネさんは見たまんま、商人っぽい感じだ。
恰幅がよいのか、ゆとりのある服を着ていて、人好きな笑顔を向けてくる。
目は細く、というか笑いながらの笑顔で目がなく朗らかで、ほっぺたも、たぽたぽだ。
それと気配察知で二人いるのは分かっていたが、もう一人はトルネさんの世話係の奴隷だった。
やっぱり荷車の裏にいたのは、二人いたのだ。
特に二人共気配を消していなかった事もあるだろうが、不思議と分かるこの感覚はなかなか新鮮だ。
スキル気配察知のレベルが、上がれば違った感覚を味わう事になるだろう。
少し楽しみではあるな。
商人のトルネさんの奴隷は、若い女だ。
西洋の風のお顔立ちというか、まんま外人顔で年齢がよくわからなくはあるが、年をとっているようにはみえない。
雰囲気としては、おっとりとした印象を受ける。
控えめと言ってもいいような感じでもある。
奴隷とはそういったものかもしれないので、なんともいえないが、びくついていたりとかもしていない。
異世界の奴隷の立場もよくわからない感じがした。
それにしても、奴隷を紹介された時は、驚いた。
まだ異世界に来て一時間経ったか経ってないかぐらいなのだ。
それがもう奴隷の登場である。
「こっちは、私の秘書兼奴隷のサラでございます」
と紹介されたわけだが、内心はございますじぁねーよ。って感じだ。
思わず軽く動揺してしまったが、異世界人とのファーストコンタクトってこともあり、なるべく口数を減らして対応しようと決めていたので大丈夫だったと思いたい。
色々ばれていたかもしれないが、危ない話である。
それにしても、ここは本当に価値観が違う世界だ。
剣に魔法に奴隷にスキルである。
この辺は俺が慣れるしかないのだろう。
郷に入ったら郷に従えというし、俺が慣れるしかないのだろう。
お礼を言われ、自己紹介も終わった所だろう。
トルネさんから話題転換された。
「先程、ルーカスとの話をちらりと耳に入れさせて頂きましたが、ここで知り合ったのも何かの縁でしょう。街までご一緒しませんか?」
それは勿論、こちらからお願いしたいぐらいだ。
盗賊の戦利品や金の分配の話しもある。
ここでいつまでも留まっているわけにもいかない。
そういう流れは自然だろう。
それはそうと強賊のカミーユの問題がある。
その話だけは、なるべくはやく解決したい。
「ああ。それで問題ない。ルーカスはああ言っていたが、あの盗賊はどうするつもりだろうか?」
「不幸中の幸いになるでしょうが、彼女は手配書が出回っている盗賊です。賞金ギルドに持ち込むのがいいでしょう」
ふむ。
WANTEDってやつだろうか。
用はお尋ね者と。
悪いやつに金をかけて捕まえさせるのだろうか。
そう思うと、この世界はまだまだ発展しておらず、警察なんて組織はないのかもしれない。
いても警備兵か?
いや、街の治安維持などは、王国なのだから、王様や貴族、ひいては王国騎士の役目なのかもしれない。
国が街中にだけは王国騎士や巡回兵をたて、守っているのかもしれないな。
それで外までは手が足りず、賞金を賭けているのかもしれないと。
一応は筋の通る話なのかな?
「勿論、ルーカスからもお伝えした通りではありますが、私め達は助けられた立場にありますので、あの者はお好きにして頂いて構いません」
要するに、くれると。
……よっしゃぁぁーー!!!
強賊のカミーユGETだせ!
て、なるか!!
あの女、確かに綺麗だが、目が鋭く、こえーんだよ。
俺としては、トルネさんの奴隷のサラさんの方が、おっとりしてて好みだ。
だいたい好きにしていいって、自由度ありすぎでしょ。
賞金ギルドに持ち込むと、どうなるんだろうか。
お金は貰えそうって事だろうか。
それなら別に問題もないか。
先立つものがない今、貰える物は貰っておきたい。
どれぐらいの賞金になるかはわからないが、貰える物は貰っておいて、絶対損はない。
場所がわからないので前まで連れて行ってもらえばいいか。
それでいこう。
「そうか。悪いな。助かる。道中宜しく頼む」
口数を減らして対応しようとすると、初めての日本に来た外人みたいに片言になるな。
どうも商売人を相手にするのが苦手なようだ。
どうしても、笑顔の裏になにかあるんじぁないかと邪推してしまう。
ルーカス、ヘルプミー。
「お受けさせて頂きます。我々が責任を持って賞金ギルドまでお運びさせて頂きます。我々も荷物と命を奪われずに済みました。これでお返しできたとは思っておりませんが、一先ずはこの辺りにしておきましょう」
トルネさんはそういい、握手を求めてきた。
俺もそれに合わせ、宜しく頼むと握手を返した。
ちゃんと約束も交わせた事だし、こちらとしても問題ないだろう。
それにしても、なかなか義理堅い商人だ。
商人は信用が第一ともいうし、現代の汚い大人達と同じにするのは失礼なのだろうか。
ここまでの流れはとしては、ある程度なら信頼して大丈夫だろうか。
そのあとはお馴染みの冒険者仲間を紹介された。
冒険者の2人は甲冑を来て腰には剣をつけている。
冒険者ルーカスとエリックだ。
冒険者ルーカスはちょくちょく観察していたので、軽めに言うと、堀が深いイケメン君で、茶髪。
陽気な印象で性格もイケメンだ。
2人目の冒険者エリックは長髪なのか1つ結びに髪を結っている。彼は無口のようだ。
特長といえば、耳が尖っている所だろう。
彼はエルフなのかもしれない。
魔道師オリオンは刈り上げ頭のダンディーな男性。
白いローブを来ている。
杖というよりはスタッフみたいな金属製の長めの棒を装備している。
おっさんって思っていたが、よくよく見てみると、ダンディーなおじ様って感じを受ける。
年の功か会話もスムーズに入ってくる。
できるオヤジである。
ダンディーな魔道師オリオンが話しかけてきた。
「助けてくれてありがとう。俺からもお礼を言いたい。盗賊を倒した最後の剣技は凄まじいな。その反り返った剣の切れ味も凄いし、ダンジョンででも手に入れたのか?」
「ええ。これは刀といい。自分の故郷にある武器ですね。剣とは違い当てて引いて切ることにより、切れ味が鋭くなります。と言ってもまだまだ使いこなせてないですけどね」
さっきそこら辺でガチャから出ましたなんて、言えない。
スキルに関しても手の内を晒すなんて出来ないし、あまり深く聞かれても困る所だ。
そもそも刀自体、異世界では珍しい品物なのだろうか。
日本製のアプリなら刀が溢れても可笑しくないと思えるが、それはプレイヤーだけなのかもしれないな。
それとさらりとダンジョンの話が出たな。
ちょっと聞いてみたい。
「皆さんは、よくダンジョンへ行かれるので?」
「私達パーティーはダンジョンにトライする事もありますが、ほどほどですね。オリオンはダンジョンに行きたいようですけど」
「ルーカスそういうな。ダンジョンに入れば、一攫千金も夢ではないではないか。俺ぐらいの歳になると余生の蓄えも必要だろう?」
苦笑しながら話すルーカスと何食わぬ顔で言い返すオリオン。
親しげに話す姿が長年共に過ごしてきたように思う。
しかし冒険家らしくダンジョンにもちゃんと行くのか。
ゲーム的感覚からするとダンジョンでレベル上げをしてるから、あんなだけ多数対少人数で乗りきったのかと思う。
レベルアップから転職しないと、2次職にもいけないはずだ。
かれこれ1時間近くフィールドにいるわけだが、モンスターには出会ってない。
そういう事でいいのだろうか。
荷車を押す牛もどきは、モンスター換算なのだろうか。
そういえば、携帯のメニューにモンスター図鑑があったはずだ。
スライムと牛の詳細がわかるかもしれないな。
「そんな事より紹介も終わった事ですし、あとかたずけをしますよ。戦利品を回収後、街道が悲惨なことになってるので遺体を脇まで運んでおきましょう」
という事で1度お開きになり、戦利品の回収が始まった。
俺には鑑定があるので、盗賊の戦利品を漁りながら鑑定をして値が付きそうな名前の武器や防具等を探す。
何処かしらから出てはいけないものが出ていたりして、変な意味で目のやり場に困ったが、出来る限り見ないように心掛けながら、なんとか作業を開始した。
大体は、鉄の剣とかスモールシールドなんて装備ばかりであまり値打ち物は無さそうである。
着ていた皮装備は、破れていたり痛んでいたりで、使い物にならなそうな感じがしたので、そのままにしてあるのが多い。
血生臭い作業で吐き気があったが、ここで吐いたら明らかに不自然だろう。
気合いと根性で、無心になって作業を取り組んだ。
異世界に来てから一番辛かった作業は間違いなくこれだろう。
辛い割りに本当に対した値が付かなかったら泣ける。
数にして13セットにもなるのだ。
そこそこの値がつく事を祈ろう。
それと鑑定している時と、盗賊の首にこんなものを見つけた。
眷属の首輪
今は携帯を見る事ができないので、詳細はわからないが奴隷の首輪でないかと推察する。
トルネさんの奴隷も似たような首輪をしていたように思う。
先ほどはファションの一部かと思っていたが、違うようだ。
外し方が分からないので、ルーカスにお願いしよう。
「ルーカスこっちに来てくれ。…眷属の首輪を見つけたのだが、外し方を知っているか??」
「ああ。それは、ここをこうしてっと」
眷属の首輪は金属製なようで、銅のようにくすんだ印象を受ける。
金属の板を横に何枚も重ねて、首の丸みに対応しているのだろう。
男性用の腕時計のようだ。
見ていると眷属の首輪には留め具があり、外したら長さを調節できるようだ。
そこから、もう一度留め具を外すと外れるようだ。
二段仕掛けの取り外し方になるようである。
興味深く見ているとルーカスが話しかけてきた。
「奴隷に興味があるのかい??」
「……いつも一人で旅をしているので、いてもいいかなと…」
はい。大変興味があります。
なんて言えるわけもなく、ぼかしながら話す。
ルーカスは煮え切らない俺の対応に何を思ったのか分からないが、奴隷について教えてくれた。
「ははっ。わからなくもないかな。奴隷は高いし、自分の装備類を思うとなかなか買えないからな。そうだ。それならあの盗賊を自分の奴隷にしたらいいじぁないか!幸いここに眷属の首輪もあることだしな!」
「そんなことして大丈夫なのか?というか、あの盗賊は少し凶暴過ぎではないか?」
「はっはっは。確かにな。でも大丈夫か大丈夫じぁないかって言われたら大丈夫だろー。こっちも身ぐるみ剥がされ殺されそうになったんだ。どっちにしてもあいつの行く先は死刑か奴隷だ。しかしあんたの言わんとすることも相違ないか。素行がな…。でも眷属の首輪があれば言う事も聞かせられるし、大丈夫じぁないか?俺も奴隷を所有した事がないからわからんが、トルネさんが昔そんなことを言っていたぞ?」
ほうほう。
様は賞金ギルドに連れていってと死刑か奴隷は確定してんのか。
言う事を聞かせれるならありかもしれないな。
普通に知識がたりない。
異世界の文化もわからないし、口止めできる現地人を手に入れれるのはでかい。
それに俺の強みは間違いなくガチャだ。
ガチャの武器や余ったアイテムの行く先。
使える頭数を増やすってのは大切だろう。
それなら奴隷は最適だと思う。
口は止める事ができるし、回収もしやすい。
俺が思う奴隷のイメージとあえばいいが…
「といっても懸賞付きの盗賊だから、懸賞ギルドに行ってみないとなんとも言えないが、受け渡しの話になったら引き取るって言えば大丈夫だと思うぞ?その場で必ずその場で奴隷落ちをさせられるだろうけどな」
なんとなしに大丈夫ってのは伝わった。
展開が、はやくてついていけなかったが、少し考えてみてもいいだろう。
奴隷とついてわかっている事は、眷属の首輪をしている事と言う事を聞く事だ。
言う事を聞くってのは何処から何処まで大丈夫なのだろうか。
生命を脅かすものはダメとか色々な制約がありそう。
主人が死んだら奴隷はどうなるんだろうか。
まーなんとも検証が必要だろうか。
それに性奴隷がどうのこうのこういった物語りの定番もある。
もしかしたら人権、倫理なんかで出来ないなんて事もあるかもしれないが…。
奴隷を持つ上でまだまだわからない事だらけではあるが、あまりにもこちらの常識を知らないのも現状でもある。
ハイリスクハイリターンを求めるなら奴隷を持つべきだろう。
ふむ。
まだ懸賞ギルドまで、時間もあるし考えるしかないか…。
武器類や貴金属などは、トルネが荷車の場所を空けてくれたのでそこに集める事になった。
街の武器屋で買取りをしているらしく、そこまで運ぶようだ。
「そろそろ出立しよう。臭いに釣られて新しく魔物が寄ってきても面倒だ」
という事で、襲撃跡地から荷車が動き出した。
_________________
牛もどきに合わせて歩いているわけだが、その歩みは非常に遅かった。
ビィーが言っていた通りなら街まであと1時間以内の所にいるわけだが、このペースで進むと2倍はかかりそうである。
折角なので、情報収集なども兼ねていこうと思う。
現在は荷車が先頭に歩き、冒険者達は後ろから警戒しながら付いている。
商人のトルネさんは荷車の前方に座り、牛もどきを歩かせている。
冒険者のリーダー(仮)のルーカスに近付き話しかける。
「…街まで行くのが初めてのなのだが、まだかかりそうか?」
「そうだな。だいたい昼は越えたぐらいには着くと思うぞ。それにしても初めてなのか。王国の首都だけあってかなりの大きさで驚くと思うぞ!」
今現在の時間がわからないから、どれくらいかかるか、わからなかった。
まー日の高さするとそれほど、掛からず到着するだろう。
俺がゲームを始めに出したのが朝飯終わって、すぐのタイミングだったから、8時過ぎぐらいだったと思う。
ビィーとのチュートリアルにガチャ、盗賊を退治した。
確かに昼にはなりそうな時間だろう。
初めっから首都スタートか。
「ほう。それは楽しみだ。それにしても首都こんなに近いのに盗賊が出るとはな…」
「ああ。俺達もそれで油断してた。そこをつかれて先制を取られたから、あの劣勢さ…。くそ…。」
ルーカスは仲間がやられている。
落ち込んでいるとまではいえないが、掛ける言葉も見つからない。
冒険者は仲間の死について、どういう感じかわからん。
下手に口出しはよくないだろうが話さんのもな。
というか、盗賊はそこまで頻繁に現れる事はないという事でいいのかな。
街道が危険な場所だと気軽に出歩けないし、そこまで治安が悪くないのだろうか。
まー盗賊が出る時点で良くはないか。
まだまだ先の話だ。
どちらにしても盗賊ぐらいボコれないと話にならないしな。
「それにしとも仲間は残念だったな。古い付き合いだったのか?」
「そうだな。ここ2、3年はよくパーティーを組む事も多かったな。職業柄、少なくはないが慣れるものでもないしな」
「…………」
なんて言っていいものか。
ゲームの世界のはずだが、話が生々しすぎる。
仲の良かった仲間が死んだやつの心境とか分からなさすぎるわ!
気を利かせてしまったのか、ルーカスは話題を変えてくれた。
「そーだ。言ってなかったが、うちのパーティーは分配で揉めるのを避けるために、戦利品を換金してその後、配分することにしているが、今回はどうしようか?」
「…ああ。確かに揉めたくないのは同じだ」
「それで眷属の首輪も結構お高くてな。盗賊本人の事もあるし、大部分の換金費用がそれになると思うんだ。なんで良かったらでいいんだが、残りはうちのパーティーで貰えないだろうか?」
まーここまでしてくれたのだ。
問題ないだろう。
懸賞ギルドにいけばらそれなりに貰えるって話だったし。
でもちょっとだけごねてみるか。
貰える物は貰っておきたいし。
「ああ。それで大丈夫だ。あっ。盗賊本人が持っていた物は俺が貰っていいのか??」
「…一応戦利品扱いになるが…。ん~まーいいか。命あっても物種だ。あの盗賊の物はそのまま渡そう。その代わりこれで助けて貰った貸し借りなしだぞ??……それと没収した武器を渡しておくよ。確か…これだ。はい。これはあんたのもんだ」
そういい、細剣を渡してきた。
礼もいい、鑑定を使ってみるとクイックピアとでた。
確かに一度持ち物に入れてみるとレア度や攻撃力も見れたはずだ。
あとで確認もしておこう。
「結構良さそうな剣だが、本当にこんなにいいのか?」
「いいんだよ。命が無けりゃ意味なんてないんだから。あんたが助けに来てくれてなければ、俺達は今ここにいないんだ。これでも結構感謝してるんだぜ?」
イケメンのどや顔に惚れる女の気持ちが分かるほど格好よく眩しいやつである。
しかし異世界の住人は優しく律儀で仁義のあるやつばかりなのだろうか。
商人のトルネさんや冒険者のルーカス、オリオンらは人間性がとてもいい。
これなら、異世界でも、うまくやっていけそうだと思った。