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盗賊

「それでビィーさんや。これから行く街の名前を教えてくれるかい?」


「はいなのですよーこれから行くのは、ララバハイム王国の首都、セントタウンになるのですよーと~ても大きい門があるので楽しみなのですよー」



 歩き出して5分といった所だろうか。

 まだモンスター?魔獣?にも出くわしていない。

 以外に徘徊しているモンスターは、少ないのだろうか。


 それと街までは徒歩で1時間ぐらいの所にあるようだ。

 なんでこんな所がスタート地点なのだろうか。



「それでスラキチのようなモンスターはフィールドではあまりいないのか?」


「フィールドとは、今いる草原の事です?草原には、ごくたま~にダンジョンから出てきた野良魔獣がいるのですよー注意は注意なんですよー!」


「そうなのか。レベルを上げるには、やっぱりダンジョンが一番いいのだろうか?」


「レベルは存在値を上げる事で上がるのですよー!ダンジョンにいけば良い経験を積めると思うのですよー!」


 ビィーに色々聞いてみるが、微妙な言い回しで返ってくる。

 こちらがゲーム感覚質問になるのだろうか。

 それで、ビィーが現実の言い回しだろうか。

 もしかしてこちらの世界にはレベルの確認や経験値といったゲームの基礎みたいなものはないのだろうか?

 しっくりこないが、おいおい検証していけばいいか。



「所でビィーは妖精と言っていたが、妖精について教えてもらえるか?」


「妖精は自然界の精霊なのですよーちなみにビィーは風の精霊でもあるのです。エッヘンなのです!」


「精霊でもあり、妖精でもあるって事か?」


「そうなのですよー精霊の中でお話しできるのが妖精なのですよービィーはすごいのです!」



 つまり、妖精は人型って事だろうか。

 確かにイメージにある精霊ってのは、人型だけでなく獣のパターンもあれば、植物なんてパターンもあるか。

 物語りによく登場する世界樹なんて正にそのパターンなのかもしれない。



「ほぉーそうなのか。て事はこの世界では精霊や妖精はあまりいないのか?」


「基本的には精霊界にみんないるのですよー!マスター!マスター!あちらの方で争いを感じるのですよークエストですよー!」


「争い…?それは人と人が争っているのか??クエストってなんだ?」


「そうなのですよー!クエストは複数同時に発生したり、その時にしかできない物とか状況に合わせて色々なのですよー!…マスターマスター!ビィーはここまでのようなのですよー!町まではこのまま真っ直ぐ進むと街道にでるのですよー!そこを進行方向右手にいけばすぐなのです!それではまたお会いしましょーーー!」



 早口にそう言い残し、ビィーはくるくる廻りながら、光となり携帯に帰っていった。

 新しくクエストが発生したみたいだ。

 人同士の争いなんて今は遠慮したく思うが、知ってしまったからには見に行ってみたくもある。

野次馬根性になるか。


携帯を見てみると、ミッション☆盗賊から商人を助けよう 1が表示されていた。

自動でクエストが発生したのだろうか。

それか、時間だったり場所だったりといったタイミングで発生するといった所だろうか。

まー確かにいつどこでもクエストが発生してたら盗賊の多さにもびっくりだわな。


 というか、よくよく考えてみると、俺自身がいつ人にも襲われてもおかしくない状態にいたのか……

 危機感が足りない。

 ここは地球とは違う異世界。

 いつでも襲われる可能性があると心のメモに書き留める。


 これもいい経験だと思い、とりあえず、助ける助けない関わらず、見に行ってみる事にする。



 更に進む事、2、3分だろうか。

 平原という事もあり、見えてきた。


 いきなり争っている現場に出ていっても、どちらに味方していいのかわからない。

 出来る限りの障害物に隠れるようにして、近づいていく。


 音をなるべく無くすように心掛けた時だろうか。

 自然と周囲に溶け込むている事に気がついた。

 これはまさかアイテムガチャででた、隠密師の巻物や気配切断の効果だろうか。


 争う音も聞こえてきた。

 隠密の効果が気になったが、状況が状況だ。

 先にどう動くか決めたりしたい。



「はっはっはっ!!そろそろ飽きらめろぉ!おめー達に勝ち目はねぇ積み荷と女さえ残していけば、あとは見逃してやるぞ?」



 盗賊なんだろうか。

 しかし、後ろ姿でよく見えないが、声が高い。

 女だ。

 金髪ねーちゃんが女盗賊をしているようだ。

 髪が腰まであり、動くたびに揺れる髪が印象的だ。

 さすがは異世界。金髪ねぇーちゃんが盗賊とは…


 しかし、こんなパターンは今までの異世界転生物になかった。

 どうしようか。


 見えてきたのは街道のような感じの場所で、周りには人影もない。

 ビィーが言っていた街道ってのは、これの事か。

 ならばどちらにしてもここを通る事になる。

 参戦するしかないか。

 争って倒れただろう人が、何人もいる。

 血の海に沈んでる。

グ、グロい。



「カイン!アベル!まだやれるか!!?」


「そろそろやべーな。体力も落ちてきやがった」


「おい!どうする!?じり貧だぞ!」



冒険者らしき護衛だろうか。

 奥に見えるのは、ドラゴ○クエストのトルネ○が出て来てきそうな馬車を背に話している。

 いや、よくみると馬車って程でもないか。

 どちらかというと、でかい荷車だ。

 そして、荷車を押しているのは牛みたいだ。

 みたいってのはデカさや風貌は似ているが、なんといっても決定的に違うところがあるからだ。

 牛に額の角がある。

 オス鹿か!ってぐらい、立派な角がある。


 荷車を意識すると気配を感じた。

 荷車の反対側にも2人(か?)いるようだ。


 たぶんだが、これは異能の気配察知の効果だろう。

 今までこんな気配にも敏感ではなかった。

 音でもしないとわからなかったし、それが普通だ。


 おおよそだが、こちらに背を向けているのが盗賊団で馬車を背に向けているのが荷車の護衛だろう。

 といっても結構な混戦だ。

 どっちが盗賊でどっちが護衛かわからない。


 数にして15人以上はいるだろうか。

 それにしても、この護衛や盗賊達の中には見慣れない人種がいる。

 犬耳や兎耳が這えてる男性や耳とんがってるエルフ?の男がいる。

 色々な人種がいるとはわかっていたが、現実になると違和感が半端ない。


 それと服装も皆バラバラだ。

 甲冑みたいな物を着ていたり、何かを鞣したような皮っぽいのもある。

 まるで特撮映画のような感じだ。


 どっちがどっちでわからないから、装備は統一してほしいな。



「おいおい。そろそろ諦めろ。どう見ても勝ち目はねーぞ?大盗賊、カミーユ様が言ってんだ。いい加減にしねーと殺しちゃうよ?」



 よく話す盗賊側のねーちゃんは盗賊のリーダーなのだろうか。

 言葉からねーちゃんが盗賊団なのは間違いないし。

 大盗賊というわりには、煽るばかりで、なにもしないな。


 それとちゃんと、金髪ねーちゃんや護衛らしき冒険家は日本語を話している。

 携帯が日本版だからだろうか。


 後ろ姿しか見えないが、ねーちゃんは黒一色で光沢感のある、なにかの皮っぽいの装備だ。

 ボディーラインがしっかり出るタイプの物を着けている。

 出るとこが出ているのに、なかなかスリムな印象を受ける。

 外人ってスタイルいいよね。


対峙している盗賊のねぇーちゃんと冒険者を見ていると、なんとなく立ち位置的に敵対している人数がわかってきた。

 たぶんだが、薄汚れたというか、粗悪品ぽいというか、臭そうな風貌をしているのが、盗賊ではないだろうか。

 粗悪品っぽい服を着ている盗賊らしき人を見ていると、頭の上に詳細が浮かんでいた。



 キプロス 盗賊



 おぅ。

 これは異能の鑑定が働いたのかもしれない。

 なかなかいい仕事をする。

 鑑定のレベルが低いからか、名前と職業しかでないみたいだ。


 先ほど声を掛け合っていた護衛も見てみよう。



 ルーカス 冒険者

 カイン 武闘家

 アベル 戦士



 ちゃんと、わかるみたいだ。

 これで加勢したとしても誤爆は避けれるな。

 後ろの警戒感が全くない盗賊なら2、3人ならさっくり行けるかもしれない。


 一応全員鑑定しておこう。



 キモン 盗賊 アポロ 盗賊 エッヘン 盗賊

 オリオン 魔道師 エリック 冒険者

 ジョニー 盗賊 ソロン 盗賊 ポロ 盗賊

 マルコフ 盗賊 ロスト 盗賊 レバァン 盗賊

 スピロス 盗賊 カミーユ 強賊



 多分だが、オリオンっていう魔道師も冒険者の仲間だろう。

 一番馬車に近くにいて、最後尾にいるって感じだ。


 それと盗賊のねーちゃんとオリオンはだけ2次職のようだ。

 魔法使いの2次職が魔道師で、盗賊の二次職は強族といった所か。

 流石は盗賊団のリーダーだけはある。


 って事は、冒険者が5人に対して盗賊が11人って事か。

 戦力差は倍以上だ。

 だからジリ貧って事なのかな。


 全員の鑑定、位置、状況を確認している瞬間にも、状況はどんどん進んでいる。

 既に、武道家のカインと盗賊のレバァン、ロストは地に伏せている。

 冒険者のカインを殺ったのは、強族のカミーユ。

 盗賊を殺ったのは、冒険者のリーダーと思われるルーカスと魔道師のオリオンっていうオッサンだ。


 いきなり、重低音のあるオッサンの声がして見ていると、オッサンの足元に魔法陣みたいな物が浮かび上がった。

 これはビィーの時に体験したから、魔法だと分かった。

 しかし魔法使いはあんな事を言わなければいけないのか??

「杖に宿し聖霊よ。我に力を与えたまえ。ロックボム!」

 って正に中二病…いや正にファンタジーか。


 火の玉というよりかは、岩が燃えているような火の岩が出来上がり、飛んでいく。

 着弾と同時に爆発し燃え上がっている。

 これが魔法でロックボムか。

 避ければいいように思うが、なかなかの早さで飛ぶ。

目算では100km以上は出ていそうか。

 避けるのも大変だろう。



 さて、状況はだいたい把握出来たが、どうするべきか。

 冒険者4対盗賊9だ。

 冒険者を助けに行くなんて、自殺行為に等しく思う。


 確かにこのような物語の定番を望んで異世界に来たわけだが、流石に早過ぎる。

 右も左も分からない状況で人助けなんて普通しなくないか?

 異世界転生の主人公、謎すぎるな。



「ハーハーくそっ!オリオンあと何回いける??」


「あと3回だ」


「アベル!!こっちにこい!出過ぎだ!」




「しぶといね~ホントにしぶとい。もーお前たちは終わってんだよ!さっさとくたばれや!」



 冒険者側から見ると真ん中にリーダー(仮)ルーカス、魔道師オリオン。

 リーダーのルーカスから見て左がアベル、右がエリックになる。


 盗賊団の配置は、真ん中に5人、左に2人、右に2人だ。

 いや、盗賊団のリーダーカミーユは最後尾にいるから、実質真ん中4人か。


 この盗賊団のリーダーのカミーユは、なかなかの曲者だ。

 後ろから指図だけしてるかと思うと瞬時に状況判断をして仲間の盗賊を助けたり、攻撃に出たりする。



 思えば当たり前なのかもしれない。

 冒険者や戦士、武闘家なんてやからは、もともと戦いを習わしにしている人物達だ。

 逆に盗賊なんて、真っ当な人ならやらないだろう。

 荒くれ者の職業だ。

 そもそも戦えるなら冒険者をしているだろう。


 盗賊側からしても人数が倍いて、ようやく拮抗できる。

 いや倍の数がいて二次職の強族カミーユがいて、初めて拮抗出来ているって所なのかもしれない。

襲うほうも命懸けだ。

やれなきゃあとは野垂れ死ぬ。

そんなもんなのだろうか。



 それなら意外にやりようがあるかもしれない。

 それに、俺が現場に到着する前に5分、到着してから10分にはなるだろう。

 人は疲れた状況で不測の事態に弱いはずだ。



 やってみるか。

 タイミングを見計らい、2,3人はバレずに殺ってやる。



「はっはっはっ死ねっ!!!」



 強族カミーユがリーダーに呼ばれたアベルを狙ったかのように強襲する。

 いや、実際本隊の近くに戻る隙をついたのだろう。

 本隊に戻るついでとばかりに、アベルは盗賊を一人

 切った。

 そこを狙っていたんだろう。


 彼女は速く、そして頭もキレるのだろう。

 先ほどまで最後尾にいたにも関わらず前線に出て強襲している。

 度胸もあり、タイミングもうまい。

 そして、それにしても異様に速い。

 自力もあるだろうが、なんらかのスキルか異能を持ってもいそうだ。



 なんとか防戦していたが、一瞬の隙を見せたアベルに強族カミーユの剣が刺さり、貫いた。



「アベルー!!」



 ルーカスが叫び、仲間の最後をみている。


 クッ。

 今、ここだ!

 出ろ!俺の足っ!

 自然に溶け込む用に用心深く、音をたてずやればいけるはずだ!


 中央にいる固まっている盗賊に向かって走る。

 一歩一歩慎重に、近づく。

 今この場はカミーユに視線が集まっている。

 気付かれる前に殺るなら今しかない。


 ゆっくり音をたてず刀を抜く。

 狙うは首だ。

 まだ誰もこちらを見ていない。

 この距離ならいける!


 盗賊に向かって、刀を構える。

 大きく円を描くように横一文字に刃を当て、引いて切る。

刀は寝かして切ると途端に切れないと聞いている。

刃を真っ直ぐに切る。


 すると抵抗感もなく振り抜けた。

 いや、まだだ。まだもう一人いける!


 更に横に擦れ、隣の盗賊に向かって、逆袈裟切りをする。

 先ほどは刀を意識して振れたが、もうそんな事も頭にはない。

 抵抗感があり、盗賊の胸の手前で刀が留まる。

深くは食い込んでる。この盗賊もこれで終わりだが、ここまでか。



「イギァャーー!!」



 最後に切った盗賊が奇声を上げて倒れる。

 慌てて刀を抜き、周囲を観察するために後方に下がる。



「こ、こ、こいつ!何処からきやがった!」


「っ!!一瞬のうちに二人もだと……」



 近くにいた盗賊二人が振り返り、後ずさっている。


 はは!

 アホだな。盗賊。

 不足の事態といえ敵に背を向けてどうする。



「おらぁー!!!アベルの仇だぁー!」


「杖に宿し聖霊よ。我に力を与えたまえ。ロックボム!」



 冒険者ルーカスと魔道師オリオンの反撃だ。

 ルーカスは上段から一気に降り下ろし、オリオンは最後の魔法になるのだろうか。

 中央にいた残りの盗賊も倒れた。

 敵の間抜けさに助けられた形になる。

 どうにか始めに、思い描いた展開になった。



 一瞬で状況が変わり、調子よく襲撃していたカミーユが、ここに来て始めてキレた。

 強族カミーユは堪忍袋が短いらしい。



「は?てめーなにしてんの??いや、マジでテメー。何しとんじゃ!?折角いいとこだっただかろうが!クソが、どっから、わいてきやがった!」


「はっ!形勢逆転だな。エリック1度、合流しろ!」



 冒険者エリックが合流し、こちらが俺を合わせ4人か。

 向こうは中央の部隊が壊滅し、左右に2人づつ分かれる形だ。

盗賊も奇しくも同じく4人になる。



「おいおいおい!テメー無視してんじぁねーぞ!こらぁ!」



 多分だが、強族カミーユは俺に向かって吠えているっぽい。

 どうしよう?

 女なのに、怖いわ。



 始めて真っ正面からみたカミーユは目がつり上がり憤怒の表情をしている。

 顔が真っ赤に染まり、目が吊り上がっている。

般若のようだ。


 髪は前髪も長く、センターパートに分けている。

 なかなか目鼻立ちがくっきりしていて、綺麗なお顔ダチである。

 そんな表情でなければ、かなり綺麗系だろう。

 だが今は限りなく怒っている。


 うん。怒っているやつは無視だ。

 それがいい。

 ルーカスに話しかけよう。



「俺はあっちの二人をやる。あれを押さえられるか?」



 俺はアベルが戦っていた反対側、エリックが逃げてきた盗賊に向かい刀を構え、カミーユに向かって指を指す。



「おお!助かった!ここを乗り越えたら改めて礼をさせてくれ!あれは任せてくれ!俺も腸煮えくり返ってんだよ」


「だほぉーーー!!テメーはこっちだろーがー!!男が逃げてんじぁねーぞぉー!」



 ルーカスは同い年ぐらいな中年手前ぐらいの顔つきで茶髪だ。

 よくある設定か!と言いたくなるほどの爽やかイケメンだ。

 鼻が高く目も大きい。

 ハリウッドスターか!と言いたい。

 服はモンスターハ○ターに出て来るような色鮮やかな甲冑を着ている。

 ○○ドラゴンの皮を使ったとか○○ザウルスの鱗から○○してとか説明が付き添うな品物を着ている。

 取り敢えず触れずにいこう。


 さて、俺の相手は盗賊二人だ。

 ギャンギャン後ろから吠えているが、そんなん無視だ。

 あいつレベル高い。速い。強い。俺無理。だ。

 って感じだから仕方ないだろう。




 それで反対側にいる目の前の盗賊二人を倒す。

 先程のように奇襲で倒す事も出来ない。

 なら紅桜任せにするしかないだろう。


 ここまできたら、ほぼ勝ちイベント確定だ。


 スキル妖刀桜吹雪。


 刀に向かいスキルを使いたいと訴える。

 すると不思議とやり方が身体に染み渡るように分かった。


 刀を帯に戻し、腰を深く落とし構える。



「くそーお前が現れなければ成功してたのにー」


「おい。なんかあいつやばくないか?変な格好してるぞ!」



 目の前の盗賊が吠えているが、もう遅い。

 抜刀術。最速の刀。

 今現在の自分が一番速く、刀を虚空振るう。

 それがスキル妖刀桜吹雪の使い方になる。



 最速で振るわれた紅桜は空気と一体化し、その刀芯は空気に溶け込むように散る。

 前方一面にバラバラになった紅桜の刃が、花吹雪の様にパラパラと舞う。



 盗賊二人は自分達の周りには起きた変化に、目を見開いて驚いている。

 キラキラと輝くそれが何か分からず、ただただ呆然と。


 俺は刀の柄を前に向け、紅桜に命じる。



「戻れ。紅桜」



 俺が声に出した途端、周囲に風が吹く。

 いや気のせいか。

 前方一面に広がっていた紅桜の刃が戻る力で、風を感じたのだろう。



 振るった先、前方1面からあるべき場所に帰るために、紅桜の刃は落ちる葉をやめ、刀に戻る。

 それがスキル妖刀桜吹雪だ。



 例え進行上に何があろうとも、切り裂き戻る。

 どんな固い物があろうと戻る。

人がいようが関係なく戻る。

 一直線に。

減速もなく。



 身体全身に穴が開き、悲鳴をあげる間もなく倒れる盗賊。



 思えば使われた人からすると、キラキラ光る日に当てられた桜のような光景を最後に見ることになるだろう。

 嵐の前の静けさ。

 それがこの刀の由縁なのかもしれないな。



 振り返り、状況を確認すると、あちらはあちらで決着がつきそうだった。


 魔道師オリオンが、最後の盗賊に向かって魔法を使い、燃え上がっている。

 強族カミーユはルーカスとエリックとオリオンに挟まれ防戦一方的のようだ。


 あとは見ていればいいだろう。


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