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Re/light  作者: 東雲 仁
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第三話 懐想~心と樹は似ている~

「お前たち!久しぶりじゃないか♪全く顔も見せないで何年経ったと思ってんだい!」



右側の一際でかい屋台からノシノシとデカいオバサンが近づいてきた。180cmはあろう巨体に三角巾とエプロン姿という一見ユニークな格好をしている。



「久しぶり!シズルさん!!」


「ユウト!あんた見ない間にちょっと凛々しくなったんじゃないかい?身長は相変わらずみたいだけどねぇ♪」



篠原シズル 38才。惣菜屋台「菜菜亭」の料理長。「世魅姫」(よみひめ)の初代リーダー。歯に帛期せぬ物言いだが面倒見の良さと持ち前の明るさで住民達の信頼も厚い。というより頭が上がらない。ユウト達の良き理解者。


「あらタクマ!まぁたアンタデカくなったねぇ!ウチより良いもん食ってる証拠だね♪」


皮肉ったように言っているが嫌みを込めてるつもりは全くない。こういう性格なのだ。


「久しぶりシズルさん。でも俺はシズルさんの飯の方が好きだ。」


「そうかい♪それとケンジぃ!!相変わらずダサい髪型してるねぇ♪それじゃいつまでたってもモテないよ♪」



相変わらず豪速球をぶつけてくる。悪気は全くない。



「うっせぇババア!!!アンタの感性がズレてるだけだっつの!」



「あーそうかい♪そんな事よりこっちにおいで!丁度角煮が完成したとこなんだ♪ちょっとつまんでいきな!半日置いたからしっかり味もしみててトロットロだよ♪」



強引にユウト達を自分の店に連れて行こうとするシズル。そこでユウトが話を切り出す。



「待ったシズルさん!その前に俺らシンヤを探しに来たんだよ!居場所知らない?」



なんとか本来の目的を伝えられた。

シズルはキョトンとした顔でこういった。



「シンヤならほれ?ウチの屋台で飯食ってるよ!」



「「「は?!!」」」

ユウト達はシズルの指差す方向に目をやった。


屋台の横に並んでるテーブルの1つでバクバクと料理を食べているシンヤの姿がそこにあった。



「おい!シンヤぁ!!!」



吠えると同時に走り出してシンヤの前に立つユウト!


「よう!待ってたぞ!」



シンヤは飄々とこう言った。



それを見てイラッときたユウトはシンヤの胸倉を掴んで持ち上げた!



「おめえ俺がどんだけ必死に探したと思ってんだよ!!下手したら処罰だったんだぞ!オレぁ!」


「お前なら絶対見つけてくれると思ってたぞ♪」


相変わらずヘラヘラと笑いながら喋るシンヤ。ユウトはいよいよ堪忍袋の尾が切れた!

次の瞬間ユウトを殴り飛ばしていた!


ガゴォン!!


後ろの壁に叩きつけられるシンヤ!

しかし上手く受け流したのかそれほど効いてないようだ。



「いてて…、やったなコイツ!」


今度はシンヤがやり返した!

シンヤの左前蹴りがユウトの鳩尾に突き刺さる!


ズシャァ!


後ろに吹き飛ぶユウト!


「いってぇなこの野郎!!」


ゴォウッ!


ユウトの右拳が炎に包まれた!

つい二時間前タクマとケンジが食らった爆炎の拳である!


「お、マジか!そんじゃオレも!」


バチバチバチッ!!


今度はシンヤの両腕が放電し始めた!青い稲妻が走っている!



「くたばれぇぇぇ!!」


「上等!!」



バコッ!ドゴンッ!ピシャッ!!ズガンッ!!


雷鳴と爆発音が辺りに鳴り響く!



それを懐かしむように見守るシズル。

隣のテーブルでシズルが出した料理を食べるケンジとタクマ。

煽る人々と逃げ惑う人々。

とてもシュールな画だ。







ー30分後。


シズルの自宅




一同はシズルの家に来ていた。

ユウトとシンヤは所々受けた火傷や擦り傷を治療してもらっていた。二人とも頭部に一番大きなダメージを負っていた。



「全くアンタらも相変わらずだねぇ!あたしが止めなきゃどうなってたかわかりゃしないよ♪」



タクマとケンジは黙り込んでいた。

久しぶりにとんでもないものを見てしまったから…。



10分経っても収まるどころか、<獣眼>まで使う素振りを見せた2人に痺れを切らし、爆炎と雷の渦の中に飛び込み2人の頭にキツい拳骨をお見舞いしたのである。その衝撃で二人は地面を砕きながら気絶してしまった。


相変わらずバケモノババ…、強いシズルさんだった。

タクマとケンジは大人しくしていよう。そう心に決めたのであった。


先程目を覚ましたばかりのユウトとシンヤも同じ考えであった。



「今日はそのまんまにしてな♪アタシ特製の薬とアンタらの治癒力があれば一晩で治っちまうよそんなん!!」



「「オス!」」



ユウトとシンヤは同時に返事をする。



「さぁて♪一息ついたとこで久しぶりにアンタ達の話を聞かせておくれよ。どうだい…?アンタ達の大嫌いだった“国の犬″になった気分は…。」


シズルはワザと感にさわるような言い方をした。ただそれは4人の気持ちを良く理解していたからこその表現であった。4人もそれを理解していた。







…四年前。


離陣街西区空き地。



「しつけーなおまえ…!」


「うるせー、俺ら「死龍団」(デスドラグーン)に目ぇつけられてタダで帰れると思ってんのかてめぇ?」


…当時オレとシンヤは、リライトでの生活が嫌になって脱走しこの離陣街に逃げこんできた。

実験、訓練、実験、訓練の繰り返しの毎日に飽き飽きしていた。

そこでオレ達は追っ手から逃れる為にこの場所を選んだ。



門番は殺すつもりだったが倒せもしなかった。

しかしなんとか実力を認めてもらい、入街する事が出来た。


治安は最悪だった。

まず始めに解体屋(バラシ屋)が襲い掛かってきた。内臓や使える部分を売って生業としている畜生だった。多分オレ達をガキだと舐めていたのだろう、バラバラにしてやった。

それから半月はまず寝床と食料の確保に必死だった。金は意外と手に入った。襲い掛かってくる奴らのを奪えばよかったからだ。

奴らは1日に何回も襲ってきた。外から来たオレ達が憎たらしかったのだろう。


ここに来てから三週間経った頃だろうか、あるギャングチームにオレ達は目をつけられていた。どうやらこの街はそういったギャングの縄張りがあり、牽制し合うことで均衡を保っているようだ。オレ達は知らずにそのあるチームの縄張りに住みついてしまったらしい。



死龍団(デスドラグーン)


総勢30人程の少数精鋭の集団である。

リーダーは寺崎ケンジ。“龍眼”と自然術“重”の使い手である。

龍眼の特性である“怪力”と重力操作による攻撃で戦う奴だった。

遠距離の重力操作は苦手で主に自分の身体を重力で重くし、眼の力で無理矢理動く脳筋バカであった。


…ある日、コイツのチームの一人をオレが殺したって事でリーダー直々に“ご挨拶”に来やがった。そもそも殺るか殺られるかの世界、この街は完全な無法地帯だった。甘いこと言ってたらこっちが殺されちまう。


「オレの部下やった奴はおまえか?!」


「あ?だったらどうした!!」


そこからは死闘だった。

ココに来てから初めての強敵にオレも本気を出す事にした。


オレの獣眼は“虎眼”、ハンドガン程度の弾丸なら見切れる程の動体視力と反射神経、100m5秒をきる圧倒的な瞬発力、空気の調節とチリの振動で爆炎を発生させ、打撃で戦うスタイルだ。



ケンジは180近い長身で華奢な体付きだ。対してオレは170程度だが筋肉量はオレの方が若干多く思えた。


ケンジの危険な所はそこにあった。

外見で判断するムキムキマッチョみたいな奴はほぼノーガードで突っ込んで行く。そして自分の体重の何十倍も重い打撃を受けて倒れて行くのである。


一撃当たったら死ぬ。

とにかく速さで撹乱させて手数を入れるようにした。

というよりオレにはそれしかなかった。

ケンジはその速さに一瞬驚いた様な反応を見せた。だがそれはすぐに笑みに変わっていく。


最初の何発かは避ける素振りを見せる。意外と反応は良いようだ!重力負荷を何倍も掛けている状態のクセに全く動きにラグがない!

重力の使い手はリライトにも何人かいたので知っている。

基本この能力者は達人クラスでない限りゴリゴリの接近戦タイプでケンジと同じ様に自分に負荷を掛けて攻撃力と防御力の底上げをする。しかしその為どうしても動きが遅くなるのだ。

その場合オレは持ち前のスピードとカウンター、焼夷弾の特性を持ったダイナマイトのような一撃で削り倒して来た。

しかし、ケンジにはその様子が全く見られない。それどころかキレすら感じとれる!

龍眼の特性で負荷を相殺させていたのだ。自然術と獣眼の相性が見事に噛み合っている奴だ。


「ちょこまかめんどくせぇ奴だな♪」


ケンジが楽しそうに吠える!


それでもオレの方がまだ速い!少しギアを上げて攻撃する!

しかしコイツは避けきれないと思ったら逆に喰らいながら攻撃してカウンターを狙ってくる!

ケンジの拳、脚が皮一枚スレスレをスローモーションで通過していく…!

オレは手数の中に爆炎を込めた一撃を放ちダメージを重ねていった。

その都度ケンジはダメージを負っていた。

どうやら防御力はそれ程高くないようだ。


「いいねぇ!久しぶりに楽しめそうだな♪」


楽しそうにケンジは言った。

まるで新しいオモチャを与えられて喜ぶ子供のように見えた。

心にはヒビ一つ入っていないようだ。


「へ…、そのうち後悔することになんぜ?」



ムカつく奴。

戦いを楽しむ事としか感じとれない戦闘狂だな。

多分部下の件なんてただの戦いの理由でしかなかったのだろう。

(実際あとで確認したらそうだった)オレ達みたいに戦いや殺す事に悩み苦しむ事がない奴は本当に腹が立つ!


オレは怒りに身を任せて正面から突っ込んでしまった。コレがいけなかった!


ケンジの右フックがカウンターで飛んできた!

(ヤバいッ!)


とっさに左肩に気を集中させガードしながら身体をひねる!


ガスッ…!……スザザーーッ!!


オレは数m弾き飛ばされた。



…なんとか芯を外す事は出来たが左腕が上がらない。


(掠っただけでコレかよ…、)


お決まりのセリフだが素直にそう思った。これだから力馬鹿は好きになれない。


ダメージを負った箇所に気を集中させ治癒力を高める。と言っても応急処置程度で体力も大分消耗する。

(ホント燃費悪いな…)


オレの弱点は防御力と体力の無さにあった。

あまり時間は掛けられない。オレは走り出すとスピードで撹乱しながら一層手数を増やした。

ケンジはホントに防御が下手だ、というより攻める事しか考えていない。そこにチャンスがあった!


ズガァン!!!


今度はこっちがカウンターで腹にデカい一撃を入れてやった!


「ぐはあッ…!!」


炎に包まれながら数m吹き飛んでいく!


ガガガガガ…!!


地面を削り仰向けに倒れるケンジ。


(これで終わったハズだ!)そう思った。

というよりこっちも体力(気)が残り少ない。手足も攻撃する時の衝撃の反動で大分痛めている。


ケンジはやはり立ち上がってきた。あちこちから煙が上がり足腰もフラついていた。だが未だに顔は笑っている。

ケンジ「…フハ…ハハハハ…、おまえ最高だな…!ここまで楽しい奴はホント久しぶりだわ!!」


(マジかよこいつ…、)


ドン引きだった。今までやり合って来た中でここまでイカれてる奴は初めてだったからだ。


ケンジは笑い声を上げながら向かってきた。


コイツを黙らすには殺すしかない。オレも残りの力を振り絞って迎え撃つ!

その時だった!




「はいそこまで!!」


反射的にオレ達の動きは止まった。

瞬間この聞き慣れた声に安堵したがすぐ付け加えた。


「邪魔するなよシンヤ!!コイツはオレが最期まで…!!?」


そう言いながら振り返ると様子がおかしかった…!

シンヤと一緒に知らない奴が二人いた。


1人は銀髪でショートカット、一見チャラそうな男だった。

もう1人は黒髪にショートボブ、ドクロのデザインTシャツにズボンを履いてるまだあどけなさが残ってる女の子だった。

銀髪の方はケンジと同じ右肩に(DeathDraGooN)の刺繍が入ったジャケットを来ていた。



「…げ、おまえら何でココにいんだ…?!」


ケンジが二人にバツが悪そうに反応する!

どうやら仲間のようだ。

だけどおかしい!

(なんでシンヤがそいつらと一緒にいるんだ?)

そう思ってたら女の子がこう言った。



「お兄ちゃん!!もういい加減にして!!」





(……お兄ちゃん?…え?)







 第三話

 回想


                完










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