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Re/light  作者: 東雲 仁
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第十三話 炎

薊野が瓦礫のの中から出てくる。左半身がまだ再生しきっていないうちにユウトが攻撃をする。

右の大振りが顔面を捉えまた吹き飛ばされていく。今度は炎を纏っていないので爆炎の効果はなかったがそれでも有り余るほどの重さとスピードだった。

薊野は地面を削りながらなんとか踏ん張り体制を整えようとするがそれよりもユウトの追撃が早かった。


――バキィ!!――


今度は右の中段回し蹴りを喰らい横に大きく飛ばされる。ケンジが万全の状態で重力を込めた一撃に近い破壊力があった。


「グゴオオオオ!!」


今度は何とか体制を整え襲い掛かり連撃する!ユウトが獣眼を発動した時と同等の速さだがこれもそれ以上の速さで避けられてしまい全て空振りに終わる。それどころか連撃の合間を見計らってユウトのカウンターが何発も入ってしまう。

と、ユウトの右拳が橙色に輝きだし物凄い速さで膨大な炎を収束させていく。そして地面が割れる程踏み込むと勢いを乗せてその拳を叩きつけた。


――ズガアアアアアアアン!!!――


強大な爆発と炎が発生し辺り一面焼き尽くしていく。それをダイレクトに喰らった薊野はまた半身が吹き飛ぶ。


「グ…ガガ…!」


傷口に炎が纏わり再生が思うように行かない。

ユウトは炎の渦の中でそれを黙って睨んでいる。


「…すばらしい!まるで〝炎の獣”だな…。私の傑作がまるで相手にならないとは…!」


その様子を嬉々として観察する新田。


「これはいい〝サンプル”になりそうだ…!ホホッ♪笑いが止まらんわい!!」



「…ぐ…、くそ!…気絶しちまった…!」


ケンジが目を覚ました。辺りを見回すと近くでタクマとシンヤが血を流して倒れている。

それを見て愕然とする。


「…オイ!!タクマ…!シンヤ!!…くそ!!思うように体が動かねぇ…!」


それにタクマはなんとか親指を立てて反応する。取りあえず生きている事を確認すると体力をほとんど消耗して思うように動かない体を引きずり、一番近くにいたシンヤの方に何とか近づいた。


「…シンヤ!!おい…!!返事しろ!!シンヤ!!」


「…げほっ…、ケンジ…、無事…だったんだね…。」


血を吐きながらもシンヤが返事をする。


「…人の心配してる場合かよ…!!大丈夫か…!?」


「…あぁ…、取り…あえず…応急処置はした…。ただ…体力は…ギリギリだね…♪」


シンヤは残った気を全て傷口に集めて治癒力を最大に高めてなんとか一命を取り留めていた。だがそれも初歩的ななものであり油断は出来ない状態であった。


「…たく、…やせ我慢しやがって…。…!!てかユウトはどうした!!?」


「アレ…。」


シンヤが震える手で指を指す。その方向を見るとユウトが薊野を追い詰めていた。ただしいつもとは様子が少し違う。感覚が鈍っていたのですぐ気付けなかったが気の量と質が明らかに今までのユウトのものではなかった。


「…おい…、アレ…ユウトか…?スゲェ気の圧力だぞ…!!」


「…どうやら…〝覚醒”しちゃったみたいだね…。」


「…!?…マジかよ…!!俺等はまだそのレベルまで行ってないんだろ…!??」


ケンジは驚きを隠せずにいた。獣眼の覚醒というのは通常ある程度の気の総量と熟練度が必要で4人はまだその域には達していないと検査で言われていたからだ。因みにリライトではそういう検診やテストを定期的に行いランク付けの参考や実力に伴った訓練や任務をさせ隊員を育成している。


薊野が再生しきらないうちにユウトが攻めていく!今度は両手に炎を溜めて連打を喰らわす!

連鎖的に爆発が起こり巨大な火柱が上がる。業火の中で薊野が悶え苦しんでいた。

ユウトの攻める様は人間らしさは微塵も無く、まるで凶暴な猛獣の様に躊躇なく相手の急所を狙っていた。


「…まるで獣だな…、理性が飛んで本能で戦ってる感じだ…」


だいぶ傷が回復したのかシンヤは冷静にその様子を眺めていた。


「…たぶん怒りでリミッターが外れたんだろうね…。見てよ…、ユウトの腕…。」


ケンジがそこに目をやる。ユウトの両腕は拳から肘にかけての皮膚が所々火傷で爛れ、それを超回復で修復しているのが見て取れた。


「あいつ…、自分の炎を制御しきれてねえのか…!」


「…みたいだね。完全に能力に喰われてる…。」


2人の見解はもっともであった。ユウトの意識は完全に獣眼に支配されていて自分に返ってくるダメージもお構いなしに力を奮っていた。


「このままじゃ動けなくなるのも時間の問題だ…。」



「ガアアアアアア!!!」


ユウトは振り返りすぐさま薊野に飛び掛かろうとした…その時!!ガクン、と糸が切れた人形のようにその場に倒れ込んでしまった。


「…ユウト!!!」


ケンジが叫ぶ。シンヤの懸念した通り体に限界が来てそのままユウトは気絶してしまった。


炎が落ち着きボロボロになりながらもなんとか致命傷を免れた薊野がユウトの方に近づいていく。そしてチャンスと言わんばかりに雄叫びを上げ右腕を天に大きく振り上げユウトにとどめを刺そうとする!


「グォオオオオオオオオ!!!」


ケンジは咄嗟に反応しようとするが体が思うように動かない!!


「くっそおおおおお!!!」


――ガキンッ!!――





万事休す…!!…そう思った瞬間だった。


「…全く、どいつもこいつもボロボロじゃねえか!!情けねェなぁ!!」


薊野の剣撃を漆黒の剣で受け止めた者がいた。

ぼっさぼさの寝ぐせの付いた赤髪の長髪。黒いトレンチコート。右胸にはよく知るロゴマークと「Ⅰ」のアラビア数字。そしてこのぶっきら棒な物言い。間違いなくリライト第一部隊隊長 城嶋暁人(じょうしまあきと)その人だった。


「…隊長!!…なんで!?」


ケンジの問いかけを無視しアキトは剣を振り上げ薊野を弾いて前蹴りで蹴り飛ばした。軽く蹴った様に見えたがその勢いで10mほど

ブッ飛んでいった。


「おい!!シンヤ!ケンジ!!無事か!!?」


「おにいちゃん!!皆!!」


遅れてヨシキとアヤが駆け寄ってくる。


「…おまえら!おっせぇよバカ野郎!!」


「…その傷…!…すまん遅くなった…。」


「…!!…シンヤ…!!大丈夫!??」


「…あぁ…、ちょっとやらかしちゃったわ…♪取りあえず平気だよ…。それよりよく〝あの人”呼んでこれれたね…?」


ヨシキとアヤが怪我の心配をする中シンヤは疑問を投げかける。隊長は普段なら支部で報告書や連絡に明け暮れており、余ほどの任務じゃないと自ら戦線に来ない人だった。ましてや離陣街の奴が呼びかけたところで門前払いされるに決まっている。そこがどうも腑に落ちなかった。


「いや…、俺達がメンバー編成してお前等の後に付いていこうとしたらあの人が乗り込んできたんだ…、それで俺達に「そんな団体でいっても邪魔だから俺とあと代表2人だけ付いてこい。」って…。誰も反論できなかった…、なんせお前らを力ずくでリライトに呼び戻した張本人だしな…。」


ヨシキは額に一筋汗を垂らしながら事の顛末を語った。


「すぐ行こうとしたがそれじゃお前らの為にならないからって結局このタイミングになってしまった…。」


「てかあの人足速すぎ!!だいぶ置いてかれちゃった!!」


元から〝超人”離れしているのをシンヤとケンジは知ってるのでそこは敢えて反応しなかった。

それより相変らずの鬼畜っぷりなスパルタ教育(?)に全員肝を冷やす。


「…ったく、俺が気まぐれ起こさなかったら全滅する所じゃねえか!!なっさけねぇなあ!帰ったら俺直々にしごいてやっから覚悟しとけよ!!」


アキトのその言葉を聞いて更にゾッとする一同。


「取りあえずそこの出来損ないチームの代表2人!!そこで寝てるカス共連れて俺より後ろに居ろ!巻き込むぞ!!」


ヨシキとアヤはムッとしながらも逆らえず渋々言うとおりに行動する。


(…ん?巻き込む…?)

シンヤはその言葉の意味に疑問を持ち、そして瞬時に理解した。ケンジの方に顔を向けると察したのか同じく引きつった顔をしていた。


「…グギャアア!!」


薊野は喋っている間に起き上がり今まさにアキトに向かって渾身の一撃をお見舞いしようとしていた!


「…かわいそうになぁ、化け物にされちまって…、どうせ新田の仕業だろ?今楽にしてやるよ。」


そう言いながらアキトは余裕を持ちながら愛剣を構え気を込めると黒い刀身がオレンジ色に光を発しながら高熱を帯びていく。アキトの自然術は炎、ユウトと同じだか錬度の桁が違う。威力範囲共に倍以上の差があった。それにこの〝技”は高威力で、普通敵地破壊や多勢を相手する時用のヤツだ。


「…皆伏せろ!!」


「…ヤベッ!!」


シンヤの言葉に全員身構える!


「焼け死ね!!」


剣を振り下ろすと同時に巨大な爆炎が周囲を飲み込んでいく。強烈な爆音と熱が安全圏の後方でも容赦なく吹き荒れた。


爆旺砲(ばくおうほう)――。アキトが良く好んで使う技だ。


名前の厨二センスは皆触れないようにしていた。それを笑った奴はアキトに例外なくボッコボコにされてしまうから…。


「…よし、お前等帰るぞ!」


アキトの前方は地面が大きく抉れその範囲はアジトを易々と巻き込み遥か後方まで爪痕を残して巨大な爆炎が轟いている。

この一撃で工場の2/3が焼ける大惨事となった。


「…はー、かったる…。」


アキトは気だるそうに剣を背中の鞘にしまった。


この光景を見た4人は完全に目が死んでいた。







「…ふう、…全く危ない所だった…!」


新田は生きていた――。アジトの地下に逃げ込んでいた為かろうじて難を逃れていた。そこには今は使われていない地下通路がある。


「…まさか隊長が直々に御出でになるとはな…、…おかげで生体サンプルの回収できなかったではないか…。…まあいい、まだ〝奥の手”は残っている…。」


ぶつくさと独り言を言いながら、新田は通路の先のエレベータに乗った。


「必ず復讐してやるぞい…。リライトの犬め…!!…ホッホッホッホ…。」


不敵に笑いながら下へと降りていく。遥か下には研究施設があり、その一室にある巨大な培養カプセルの中で小さな胎児の様なモノが静かに目を覚ます…。




それは人の形とは少し違っていた――。










久々の隊長登場!

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