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Re/light  作者: 東雲 仁
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第十二話 眼覚め

「おい新田さん、ここってアンタの実験部屋じゃねえか。今更こんな所に連れてきてどうすんだよ。」


新田に来なさいと言われ薊野が付いてきた場所は研究施設だった。様々な薬品や書物、実験設備、備品が立ち並んでいる部屋だ。そのどれもが凡人では理解しがたい物ばかりである。普段は研究に支障を来すと言って本人が立ち入り禁止にしていて、リーダーの薊野も一度も入った事のない部屋だった。


「まぁまぁ、緊急事態だし君にも少し見てもらおうと思ってね。そこに腰かけてくれよ。」


そう言って新田は椅子を出し座るよう促す。薊野もそれに応じ座る。


「今から話す事はとても重要だ、よく聞いてくれ。まずなぜ私が君たちに協力しようと思ったかだが…」


そう言いながら新田はある薬品に手をかけおもむろに注射器に注入し始める。因みに薊野からは背中越しでその行為は見えていない。


「私の夢にとてもプラスになると思ったからだ。…君たちを実験台とする事でね…!」


瞬間薊野の後ろに素早く回り込み首元に先程の薬を注入する!


「…!!なにを…!……。」


抵抗するまもなく一瞬で意識を失う薊野。そのまま車いすの様に薊野を椅子ごと動かし新田は部屋を出ていく。運びながら気を失っている薊野に耳打ちをする。


「さぁ、これから存分に〝力”を見せてくれ。私のかわいい息子よ。ついでに〝オモチャ”もプレゼントしておくからね。ホッホッホッホ…。」


不敵に笑いながら新田と薊野は闇へと消えて行った。




(…なんだこれ…黒いナイフ…?それよかあのジジイ…ハメやがってぇ…!)


アジトの入口近くの倉庫で薊野は目を覚ました。首には鈍痛が走り熱があるのか視界がぼやけ体が思うように動かない。


「…くっそ…体が熱い…ん、なんだ?やけに騒がしいな…。アレは…リライトか!」


倉庫の小窓を除くと外でユウト達が戦っている。といっても既にほとんどの敵を倒し戦闘はほぼ終わりに近かった。


「あの化け物共の服…オレの仲間達じゃねぇか…!!あのジジイあいつ等も利用してやがったのか…!!くそったれ!!…ぐあっ…!!」


怒りと共に体中に痛みが走り薊野はたまらず外に飛び出して行った…





「グォオオオオオオオオオオオ!!!!」




醜く変貌した薊野がユウト達に剣状の右手を大きく振り下ろす!


――ドゴォオオオン!!――


間一髪ユウト達はそれを避ける!地面が割れ、衝撃波で破片が飛び散り土煙が舞う!


「…喰らったら終わりだな…!しかも速い!」

「こりゃ参ったねぇ…。」


ユウトとシンヤがその破壊力に唖然としている中すかさずケンジが飛び出し薊野に一撃をお見舞いする。


「喰らえゴリラ野郎!!!」


残り少ない気を使い最大値の重力パンチを胸部に向かって打ち込む!


「うぉるあああ!!」


先程の薊野の攻撃以上の凄まじい轟音と衝撃が走り喰らった薊野の足元に巨大なクレーターが出来上がる!

胸の辺りが窪んでいる。…が、直ぐにボコボコと音を出しながら再生すると一気に距離を詰めてケンジの腕を左手で掴む。


「…なに!?」


そのまま片手で軽々と振り上げ、地面に叩きつけた。


「ぐあああ!!」

「ケンジ!!」


轟音と共に叫び声を上げる!すかさずシンヤとユウトが突っ込み電撃と爆炎を喰らわせケンジから引き離す…が、少し怯ます程度で大したダメージは与えられていない様だ。火力が足りない…!


「…効いてないのか…!」

「直撃した筈なんだけどな…♪」



2人が唖然としていると、その間気を溜めていたタクマが巨大な暴風の塊を担ぎ上げ薊野に叩きつける!


(…大風轟おおかざぐるま)


いつも使う掌サイズの風の塊よりも数倍の大きさの風の威力で周りを吹き飛ばす。


「…やったか!?」

「…いや…ダメだ!」


ユウトが確信を持とうとするが、シンヤは〝眼”を凝らしてタクマの攻撃が通ったか粉塵の中を確認する…が、やはり薊野は立ち上がる。そしてタクマを巨大な刃で斬り伏せた。辺りに鮮血が飛び散る。


「…ぐっ…!」


切断こそ免れたが、右わき腹から左の肩口まで斜めに深く斬り上げられたその傷ではこれ以上の戦闘が不可能な事は明らかだった。普段なら躱したり防げる攻撃も、先程100体の軍勢と戦ったばかりで体が思うようにならないのと薊野自身の強さも相まって一撃で倒されてしまう。


「くっそおお!!」


「あ、おい待てユウト!!」


それを見て咄嗟に駆け出すユウトだがどれだけ手数を多くしても決定的なダメージには至らなかった。

大振りなものは躱され逆にカウンターで膝で蹴られ左の拳で殴られる。


「ぐは…!!」


「ウガアアアアアアア!!」


少し距離が開いてしまいそこを見逃さず薊野が長剣を突き刺そうとする!!


――ドシュッ…!!――


鈍い貫通音と共に鮮血が滴り落ちる!…が、それはユウトのものではなかった…。


「…シンヤ!!!」


薊野の刃がユウトを貫こうとしたその時、シンヤはユウトに体当たりをし身代わりとなったのだ。

すかさず爆炎を纏った渾身の蹴りを浴びせ薊野を突き放し、反動でズルリと抜け落ちるシンヤを抱える。


「オイ!オイ!シンヤ!!目ぇ開けろよ!…シンヤ…!!」


何度か呼びかけるがピクリとも動かない。腹部が裂けてそこから血が止めどなく溢れている。わずかに唇が動いた。


「…バカ…やろ…♪…少し…は…落ち着…けよ…?」


シンヤはそういうと目を閉じそのまま黙り込んでしまった。

向こうから薊野が迫ってくる。


「…シンヤ…」


――ドクンッ――


ユウトの中で黒く重い何かが込み上げてきた。

そして意識が遠のいていく…。

周りの大気が震え火花がチリチリと弾け始める。と、今までとは比べものにならない速さで間を詰め巨大な炎を込めた一撃を薊野に与える。


――ドゴオオオオオン!!――


薊野は咄嗟にガードするが、瞬発力と爆発が強烈で防いだ左腕と半身を大きく抉られ余波で10m程飛ばされタンクに叩きつけられる。ユウトの周りには巨大な炎が立ち登り続け、その眼光は紅く発光していた。


「…ほぉ…、〝覚醒”しおったか…!」


その様子を別室で眺めていた新田が呟いた。


「…ガアアアアア!!!」


ユウトは獣の様な雄叫びを上げ薊野に飛び掛かっていく。
















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