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転生した視聴者の変わらない日常

視聴者は店長してます

作者: 恭弥

こんにちは。続きものですので前作から読まれた方がいいと思います。

変な文章があったら慈愛に満ちた目で流してください。

「あ、勇者様。後ろが危ない」


どうもこんにちは、いい天気ですね。今日も私は変わらないですよ。


ところでテレビを観てると出演者とかにツッコんじゃうことってない?今のはまさにそれと同じ。

先ほどの言葉をつぶやいたのは私だけど、決して勇者様が目の前にいるわけではない。会う前に気づいて逃げてやるし。


今日も変わらず神様からのプレゼント「千里眼」を使ってドラマ「勇者の冒険(24時間連続放送)」を観ていた。

さっきは勇者様とその仲間たちに魔王の手下が、後ろから不意打ちを仕掛けるというシーンだった。

勇者様も仲間たちも誰1人として気づかれてなかったのでつい独り言として出てしまった。


周りに誰もいなかったからよかったけど、誰かに聞かれていたら不審に思われてしまうし、知り合いだったら電波と思われてしまう。これ以上黒歴史はつくりたくないな。ただでさえ不思議ちゃん認定されているのに!


私が千里眼を持っていることに気づいたのが3歳のとき。

母さんが買ってきた鳥肉をみてそういえばこの世界ではどうやって育てているのかなあと思った時だった。


不意に目の前に草原が広がり正面には3人の男の人が。3人の内2人が棒を持ち振り回しながら歩き回ると、2匹の鳥が追い立てられて飛び上がった。

そこを残りの1人がすかさず弓で射落とし、男の人たち、つまり狩人たちは鳥をゲットしていた。


まあそうだよね。ここじゃあ馬や牛ならともかく、鶏を売るほど買っている人は少ない。ほとんどの人が卵を取る為に飼っているだけだと思う。つまり鳥肉は狩で仕留められたものということだ。


目の前で血を流す鳥の姿に18+3歳の日本人のメンタルでは耐えきれなかったようで、私は泣き出してしまったらしい。

鳥が死んじゃう。殺したの。って言いながらいきなり泣き出したもんだから困ったよ、と母さんがはなしてくれた。残念なのか幸いなのか、私は全く覚えていない。

母さんは鳥を羽根つきで買ってきたから怖かったのかねえとか言っていたけど、実際はもっとヤバイ物を観ていた。あれはトラウマになるよ。誰だって泣き出すよ、きっと。


この他にも千里眼の練習をしている時に名前を呼ばれて歩き出したら、壁に思いっきり頭をぶつけたこともある。

外から呼ばれていたんだけど私も千里眼で外を観ていたもんだから、そのまま呼ばれた方向に歩き出して壁に気づかずにぶつかっちゃった。

結構大きな音が鳴ったようで、母さんだけでなく隣の家の人も様子を見にきてくれた。

本当にボーッとしていただけだったから、すごく申し訳なくて恥ずかしかった。


後は千里眼で観た先のセリフを知る為に読唇術を習得しようとして人を観察していたら、そんなに見つめて何かおかしいかなって逆に言われたりとか。


おかげさまで私はおとなしいけど、すこしボーッとしている変わった子と思われている。

中身はもういい年なんだけどね。そんな印象はノーサンキューだよ、まったく。


そんな不名誉な称号と引き換えにコントロールをマスターしたこの力で、私は今日もリアルタイムドラマを観るのです。

最近勇者様ばかりだから、今日はひさしぶりに南の漁師さんたちの漁でも観ていようか。

今私が住んでいる街は内陸に在るから川魚か干物しかないが、この世界の魚は色とりどりで前世でも今世でも見たことがないような魚がたくさんいておもしろい。

今回はどんな魚を釣るんだろうか。


「ちょっと、モノ!聞いてるの!?」


とか思考の海に沈んでいた私を呼び戻す声がした。思考の海、うんいいこと言った。


「モノってば、仕事よ!話を聞きなさい!」

「はいはい。聞いてますよ」

「聞いてなかったから言ってるんでしょう。マイペース過ぎるわよ本当に」


私を現実に引きずり戻した彼女は、私の親友のレビィだ。

とてもしっかり者で幼い頃に私が家の中でしか生活していなかった時、わざわざ家まで来て外に引っ張り出してくれたり、友達がなかなかできなかった私を誘ってくれたり、とてもいい子だった。


今は顔も可愛いしオシャレにも気を使っていて、恋愛ごとにも興味はあるようだけど実際自分になると一気に奥手になってしまうギャップ萌え要素有りな私の自慢の親友なんだ。


そんな彼女が何の用か聞いてみると修理の依頼だった。


そういえば私の店が何の店かまだ教えてなかったね。

私は“音楽屋”という、簡単に言うと楽器などを売っている店を経営している。

なぜ楽器屋かと言われるとと私が音楽が好きだから、としか言いようがないんだけど。


楽器の販売から修理まで手厚くサポート! 楽譜や魔法具も売ってます。っていうのが売りの小さなお店なんだ。


楽器の修理は簡単なものなら私で、大きく壊れているなら職人の方にたのむ。この場合は時間がかかってしまう。

でも今回くらいの修理なら私でもなんとか直せそうかな。

その旨を伝えるとそれでいいと言うので、どのくらいで終わるのかを伝え受け取り票を渡した。


「ありがとう。祭りまでに間に合いそうでよかったわ。今年は派手な祭りになりそうよ」

「そう、よかったね」


嬉しそうな顔に私も満足しながらこたえる。レビィが楽器を大事にしてくれて楽器も喜んでいるよ、きっと。


…ん? “祭り”?


「そうよ。今年こそ誰かつかまえなきゃ。行き遅れはごめんだもの。モノはいいわよね。彼氏がいて」

「待ってレビィ。いろいろいきなりすぎてついてけてない」


落ち着け私。まずひとつずつ倒していかないと。ええと、1番大事なのは、


「まず私は彼氏いないから。ぼっちだから。良い?」

「えー、じゃあリーはどうなるのよ。いつも一緒にいるじゃないの」

「違うから。あいつとはそんなんじゃない」


だいたいリーモットが好きなのは私じゃない。いい加減気づかないとかわいそうだよ。あいつが一緒に居たかったのは私じゃなくてあんたの方だよ。


「それと祭りってもうそろそろだっけ?」


疑問を伝えると思いっきりかわいそうな目で見られた。やめてへこむ。


「あんたねえ、ボーッとするのもいい加減にしなさい!来週でしょう。今年は勇者様が現れたし、皆あんたの歌楽しみにしてるんだから」

「わかった。ごめんて。今から作れば間に合うでしょ」

「まだ作ってないなんて、モノは本当にのんびりさんよね。私だったら考えられないわ」

「私だから大丈夫さ。またねレビィ」

「ええ、私のフルートお願いね」


手を振って去って行く親友を見送りつつ、これからの予定を組み立てて行く。


この街では、楽器はあまり売れない。楽器を扱える人が少ないからだ。

よって私の店の主流商品は、子供用のオモチャの楽器や狩で使う呼び子や笛だったりする。


しかしそれだと余裕のある暮らしがおくれないので、臨時収入として当てにしているのが祭りでの演奏だ。

盛り上げるために伴奏をしたり、リクエストに応えたり、どこかの物語を歌にして歌ったりしている。


皆が期待しているのがこの歌語りだ。私の歌はそこら辺の詩人よりリアルでおもしろいと評判である。


それも当然。私は実際に観たことをすこしかっこ良くして歌にしているだけだ。

3ヶ月前の勇者様の登場なんかとてもいいネタになった。脚色なんてしなくても十分おもしろい話だった。

漁師の物語、狩人の話、魔物と人間の友情、全て私が千里眼ドラマで観たものだ。

前世の歌もすこし混ぜてはいるけれど。もしもしかめよーかめさんよーとか、もーもたろさん桃太郎さん、とかね。


今回はやっぱり勇者様の話がいいよね。皆も楽しみにしてるだろうし。


どの話にしようか悩んでいると、リーモットが駆けてきた。やれやれ、今日は客がたくさんくるな。まあ、祭りに向けてお客さんは増えていくから当たり前かな。


「よ!モノ。今いいか?」

「やっほー、リー。客商売が断ったりすると思ってんの」


彼がさっき話題になったレビィのことが好きな、でもそれを言い出せないヘタレだ。

ちゃっちゃと告白すりゃいいのに。見てる方はじれったくてイライラしてんのに。


「あのさ、次の祭りでレビィがまたフルート吹くだろ?俺も一緒にやりたいと思って」


…だからそういう所がいらっとくるんだよ。男ならまどろっこしいことしないで直球で行け!

ただしこの場合商売になるからそんな事はいわない。


「何の楽器が欲しいの?いっとくけどレビィは相当フルートうまいからこれから一週間じゃ到底デュエットなんざ出来ないよ」


それを聞きあわてるリーモット。しっかりしろ。

レビィ以外のことならしっかり頼もしいのに残念なやつ。


結局、いろいろな楽器を試してリーモットはヴァイオリンに決めた。後1週間だって言ってんのに。

ま、フルートと合わせるなら悪くない、かな?


そして彼のために毎日弾き方を教えることになった。あんたそういうことしてるから勘違いされちゃうんでしょうが。

なんでそこまでするのか聞いたらフルート吹く姿で他の男が惚れちゃうかもしれないからだそうだ。絶対頑張る方向性間違ってる。私を巻き込まないで欲しいよ。


そういえば、1度勇者様たちは歌で人を眠らせたり魅了して操ったりする魔物と戦ってたことがあったな。よし、今回はそれを歌ににしよう。


これから祭りが終わるまでは作詞やら練習やらでゆっくりドラマを観てる暇はないかもね。

どうかかっこいいシーンを観逃したりしませんように。勇者様の活躍はこの目でしっかり観ておきたい。

録画ができればよかったなあと思うこともあるけど、千里眼だけで十分すぎる。


勇者様、私が観てますから1週間ほどゆっくりしてください。あまり張り切りすぎると今みたいに石につまづいちゃいますよ。



お読みくださりありがとうございました。


私の名前がモノミ(愛称、モノ)

物をみる→モノミ

親友をレビィ

テレビ→レビィ

リーモット(愛称、リー)は

リモートコントローラ→リーモット


となっております。

はじめは私がレビィだったのですが日本でもありそうな名前にしたかったのでこうなりました。


鳥については妄想です。

フルートとヴァイオリンについてもすこし調べましたがほとんど妄想です。


これからも頑張ります。よろしくお願いします。

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